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樹海の魔物


「死の樹海からって……この国は結界を張る秘宝具(アーティファクト)に守られてるから魔物は入ってこれないはずだろ?」

「結界といっても、物理的に入ってこれない訳じゃないの。魔物の意識に干渉して、この国を認識できないように誘導しているっていうのが、この国を守る秘宝具(アーティファクト)の効果。守る為じゃなく、気付かれない為の結界。ただ……」


 リアは再び視線を死の樹海に向ける。

 

「今回みたいに結界をすり抜けてしまう魔物もいるの。別の何かに気を取られていると結界が効きづらいみたい」

「ん、例えば?」

「そうね……魔物同士の縄張(なわば)り争いとか、獲物を追いかけてる時とか……」


 リアがいくつか例を挙げる。

 聞く限り、魔物が別の事に集中してると結界が効きづらい感じか。


「こういう事は結構あるのか?」

「滅多にないわ。1年に数回ある程度よ」

「ん、ある意味ラッキー」


 ……かなり低確率な事態に居合わせたみたいだけどさ。

 家を借りてやっと落ち着けるかと言うタイミングでこの騒ぎ……どちらかというと運が悪い方だと思う。

 

「それで? こんなところに上がってどうするつもりなんだ?」

「勿論、どんな魔物か確認して、倒せそうなら倒しに行くつもりよ?」

「……おいおい、俺達ついこの前ゴブリンジェネラルにやっと勝ったばっかりだぞ。死の樹海の魔物相手に戦えるのか?」

「無理でしょうね。だから、今回2人は見学よ」

「「見学?」」

「お願いしてる立場の私が言うのもなんだけど、2人は死の樹海を越えるつもりなのでしょう? なら、敵がどのくらいの強さなのか見ていて損はないはずよ」


 確かに、ここらではっきりさせておくのもいいかもしれない。

 倒さなければいけない魔物の強さがどれ程のものなのか……


「ん、地響き……?」

「来た……!」


 リアにつられて俺と祈も森の一角に目を向ける。

 周囲の木々を薙ぎ倒しながら、何かがこちらに向かってくる。

 そうして、姿を現した魔物を認識した瞬間、俺と祈は絶句した。

 

 蛇のような長い体に、ヤツメウナギのようなグロテスクな口。

 だが、何よりも目につくのはその巨体だ。

 ここから森まではかなりの距離があるはずなのにはっきりと姿が見てとれる。

 そして、レベルにいたっては……


 レアメタルワームLv:78


 高過ぎだろ!?

 つい先日のゴブリンジェネラルが可愛くみえてくるような圧倒的な強さ。

 これが死の樹海に生息する魔物の強さなのか……


「レアメタルワーム……Aランクの魔物ね。体内に希少な鉱石を溜め込む大ミミズ。体はそんなに固くないから、私でもなんとかなるわね」

「ん、あんなのがゴロゴロいるの?」

「あれでも弱いほうなのよ? 私が倒せる()()だもの」


 ……強さの基準バグり過ぎだろ。

 RPGでここまでゲームバランスが狂ってたら間違いなくクレームものだ。


「今から私の空間魔法で少し離れた位置に跳ぶから、2人は私が戦うのをよく見てて」

「「分かった」」

「行くわよ。『彼の地へとこの身を跳ばせ、テレポート』」


 リアが俺と祈の袖を掴み、空間魔法を発動。

 次の瞬間には辺りの風景がガラリと変わり、俺達は街の外の平原に立ったいた。

 ……これがリアの空間魔法か。


「ん、普段から使えばいいのに」

「魔力の消費が激しいからそうそう何度も使えないのよ。遠くに跳ぼうと思ったらその分消費魔力も上がるから尚更にね」

「ちなみに今はどれくらい使ったんだ?」

「1割ってところね」


 ってことは同じ距離を後9回跳んだら魔力切れ(ガス欠)なのか。

 燃費が悪いと感じるが、使い勝手の良さを考えれば相応のデメリットかもしれないな。


「じゃあ、行ってくるわ」

「ああ、気を付けてな」

「ん、ガンバ」


 俺と祈を残し、リアが走り出す。


「ガギュアアアアア!」


 こちらに気付いたレアメタルワームは最初に動いたリアに向かって、動き出す。

 巨体に反して動きが速い!

 あのままだと、すぐに追い付かれて……


「ガギュア!」

「残念。はずれよ」


 リアを飲み込もうと口を開けて襲いかかるが、既にリアはレアメタルワームの死角に転移。

 すかさずレイピアによる攻撃を胴体に打ち込んでダメージを与えるが……レアメタルワームは傷など物ともせずに暴れ続ける。


「ガギュアアアアア!」

「はぁ!」


 リアは『テレポート』を織り混ぜた回避行動で翻弄しつつ、小さな攻撃を何度も打ち込んで確実にレアメタルワームを弱らせていく。

 とても冷静な戦い方だ。


「これで……終わりよ!」

「ガギュアアアア……」


 リアは止めに渾身の一撃を頭部に叩き込み、それによってレアメタルワームは絶命する。


 リーゼリア・K・フェルミナスが<レアメタルワーム>を倒した!

 リーゼリア・K・フェルミナスが経験値を78000獲得した!


 経験値ログが流れ、確実に死んだ事を確認してから俺と祈はリアに近付いて声をかける。


「お疲れ様」

「ん、リア。凄かった」

「それほどでもないわ。時間がかかりすぎたもの。やっぱり、あの手の大物が相手だと決め手に欠けるのが辛いわね……」


 刃についた体液を払い、鞘に納めながらそう言うリア。

 ……俺と祈は傷をつけられるかどうかも怪しいけどなぁ。


「さて、魔物も倒せたし帰りましょうか。問題はどうやってレアメタルワーム(これ)を運ぶかだけど……」


 リアはレアメタルワームの死体を見る。

 そっか、ダンジョンの魔物じゃないから死体も残るし、解体しないといけないのか。

 このデカいのを3人では運べないよな……


「インベントリに入らないかしら?」

「ん、流石に無理」

「なら、騎士達が来るのを待って運んでもらうしか……」


 リアが言いかけた瞬間、


「ガギュアアアアア!」

「「「!?」」」


 その言葉をかき消すように魔物の声が響き渡る。

 今の鳴き声は……!


「まさか、2体目!?」

「ん、地響きがこっちに近付いてくる……!」

「リア、もう1体いけそうか?」

「できれば遠慮したいけど……そうも言ってられないわね!」


 リアは再びレイピアを抜き、臨戦態勢をとる。

 俺と祈はリアの足手まといにならないようにその場を離れようとするが……


「ガギュアアアアア!」

「くそ! もうすぐそこまで!」

「2人共こっちに! 『テレポート』で一旦離れるから手を掴んで!」


 言われた通りに俺と祈はリアの手を掴む。


「『彼の地へとこの身を……』」


 詠唱の途中、2体目のレアメタルワームが森から姿を表す。

 だが、次の瞬間……


「ガギュア!?」


 レアメタルワームは真っ二つに両断された。


「ふぅ……やっと開けた場所に出ましたね……やれやれです」


 その場にいたのは1人の少女だった。

 淡い桜色の長髪をサイドテールに結い、髪と同じ色の瞳からは意思の強さのようなものを感じさせる。

 服装は多少アレンジがされているが、恐らくは着物だろう。

 そして、何よりも印象的なのは……腰に差している剣。

 あれは、どう見ても……


「なっ! 一撃で!?」


 驚きのあまりリアが詠唱を中断する。

 この反応……リアの知り合いって訳じゃなさそうだな。

 だとしたら、一体何者だ?


「……もし、そこのお三方(さんかた)? 少しお尋ねしたい事があるのですが、よろしいですか?」

「え、ええ、何かしら?」

「近くに人里はございませんか? 数えて7日7晩は(ろく)に身体を休める事ができず……そろそろ……限界……なのです……」


 バタッ!


 少女が唐突に倒れる。


「ち、ちょっと!?」

「ん、倒れた」

「と、とにかく脈を!」


 俺は慌てて少女の脈をとる。

 ……脈は正常……外傷も特には見当たらない。

 異常はなさそうだな。

 ていうか、


「くぅ……」

「もしかして、寝てるの?」

「……みたいだな」

「ん、人騒がせな」


 全員ほっと息を吐く。


「……どうする? たぶん、知り合いじゃないんだろ?」

「ええ、というか()()()()()()()()()()()()

「なら、彼女は……」

「……いえ、今は置いておきましょう。とりあえず彼女を病院に運ぶわ。丁度騎士達も来たみたいだし」


 街の方から武装した騎士達がやってくるのが見えた。

 到着した騎士達に事後処理を頼んでから、俺達は眠ってしまった少女を病院に運んだ。


新キャラ登場!

一応言っておくと「幕間 来訪者」に出てきた謎の少女です。

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