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31:魔王
世界の東の、さらに東。
そこに小さな大陸がありました。
人が侵せぬ領域。魔物の住まう大陸。
人はその地を"魔大陸"と呼んでいました。
魔大陸には、人間の国のように王様がいました。
名を、リョーコ・サトウといい、珍しい漆黒の瞳とぬばたまの髪を持つ、少女のような魔王でした。
彼女は1192番目の魔王で、魔王の中でも一番強い魔力を持つ王でした。
けれども彼女は、とても不思議な魔王でもありました。
争いを嫌い、そして愛を信じていました。
彼女の笑顔は、春の日差しのように暖かく柔らかな微笑みでした。
魔王を倒しに行ったはずの勇者も、その微笑を前に、戦意を喪失したそうです。
そんな勇者に、魔王は笑顔でこう言いました。
―――また遊びにきてね。
こうして、歴代の中でも最強と謳われた1192代目の魔王は、初めて人間と"友達"になりました。
次から第二部的なお話がスタートします。