表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

深まりゆく秋 五句

秋が深まっていく気配を、いくつかの短詩にまとめました。

季節の移ろいの中でふと立ち止まった瞬間を、静かに拾い集めた章です。


<1>夏の名残


女郎花おみなえし

蜘蛛くももいずれも

ごとうつく


【解説】

裏手の細い用水路の土手に、女郎花が黄色い花をつけていた。

その近くの枝のあいだには、女郎蜘蛛が巣を張っている。

田舎では珍しい光景ではないが、どちらも姿が美しく、

そして何より、名の響きがよくできていると思いながらしばらく眺めた。

夏の名残の散歩道での一景。



<2>秋への境目


新涼しんりょう

つきまくら

あお


【解説】

寝室の窓をしばらく開けて、

こもった夏の熱気を逃がしていた。


横になり、昨日よりも涼しい空気を感じながら、

枕元の明かりを消す。


その涼しさは、

窓から差し込む月の青さだったのだと気づく。


明るさの中では見えないものがある。

秋の背が近づき、

それを追う夏の歩みの早さを知った夜。



<3>秋の訪れ


ふくえら

くびかしげる

秋茜あきあかね


【解説】

おでかけ用の服を選んでいる最中、

ふと窓の外を見ると、

ベランダに秋茜がとまっていた。


これでどうよ、と見せると、あの野郎、

首を傾げやがった。


季節の気配と、

小さな来訪者とのひととき。



<4>深秋の記憶


警報けいほう

波浪はろうHelloハロー

勘違かんちが


【解説】

テレビから流れていた天気予報。

台風による波浪警報を、幼い私は

英語の「ハロー」だと思い込んでいた。


人並みの常識を得た今でも、

波浪と聞けば、ほんの一瞬だけ

ハローに傾いてしまう。


一瞬だけ。

それでも確かに残っている記憶の癖。



<5>晩秋の終わり


初霙はつみぞれ

こいわりと

げる竿先さおさき


【解説】

晩秋、鯉を釣りに川へ向かった。

竿を出してひとり思考に沈む。

竿先にアタリは来ない。


今日はやけに寒いと思っていたら、

初めての霙が降り始めた。


こうなれば、雪国での釣りはもう終わりだ。

この恋と同じように。


夏の名残から晩秋の気配まで、

そのときどきの光や風の変化を思い返しながら並べました。

読んでくださり、ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ