第9話 黒魔法退治カレー
ある日、暗黒魔術師が王国に攻め込んできた。
強大な魔力で城壁を破壊し、人々を恐怖に陥れた。
「聖女エミリア!お前の治癒魔法など、我が暗黒魔法の前には無力だ!」
「あら、そうかしら」
エミリアは冷静にエプロンを結び直した。
「でも、私の特製『暗黒魔法退治カレー』を食べたら、きっと考えが変わるわよ」
魔術師は大笑いした。
「料理で私を倒せると思うか?愚かな!」
「試してみれば?」
エミリアは魔法の杖を混ぜ棒代わりに、巨大な鍋でカレーを作り始めた。
不思議な香りが戦場に広がると、暗黒魔術師の手下たちが鼻をひくひくさせ始めた。
「なんて良い香り……」
「お腹が空いてきた……」
エミリアのカレーは、彼女の聖なる魔力と、愛情込めて育てたスパイスが絶妙にブレンドされていた。
ついに一人の手下が我慢できなくなり、一口味見した。
「うまい!これ、すごくうまい!」
「待て!それは敵の罠だ!」
魔術師が叫んだが、時すでに遅し。
手下たちは次々とカレーに群がり、戦うのをやめてしまった。
怒った魔術師が最後の手段として強大な暗黒魔法を放とうとしたその時、エミリアが一皿のカレーを差し出した。
「まずはこれを食べてみなさい。それから戦うかどうか決めれば?」
魔術師は疑いながらも、あまりの美味しそうな香りに誘われ、一口食べた。
すると、彼の目から涙がこぼれた。
「この味……母が作ってくれたカレーの味だ……」
「料理には人を思いやる気持ちが込められているのよ」
エミリアは優しく言った。
「憎しみや破壊よりも、美味しい料理を分かち合う方がずっと素敵じゃない?」
暗黒魔術師は武器を置き、頭を下げた。
「あなたの言う通りだ……もう戦うのはやめよう」
こうして、エミリアの料理は王国最大の危機を救った。
彼女は聖女としてだけでなく、王国一の料理人としても称えられるようになった。




