第8話 ドラゴンも涙するプリン
「ドラゴンは熱いものが好きだから、冷たいプリンで驚かせたいの」
エミリアは、竜の巣から「許可を得て」借りてきたという、真紅の鱗の一片を取り出した。
「この鱗を粉にして砂糖と混ぜれば、ほのかな燻製の風味とスモーキーな甘さが出るはず」
プリンの製作過程は、厨房を火山の噴火口に変えた。
鱗の粉が牛乳と触れると、突然金色に輝き、泡立って膨らみ始めた。
エミリアが慌てて冷蔵庫にしまおうとすると、プリンが自分でドアを開けて逃げ出そうとした。
「待ちなさい!まだ固まってないわよ!」
聖なる光でプリンを鎮圧し、何とか型に流し込むと、今度は冷やす過程で厨房全体が凍り始めた。
冷蔵庫からは青白い光が漏れ、ドアには霜の模様が浮かび上がった。
3日後、試作品を持って近くの山に住む老ドラゴン・ヴルカンを訪ねた。
ヴルカンは鼻息でエミリアの髪を逆立てながら、小さなスプーンでプリンを口に運んだ。
一瞬、彼の黄金の瞳が潤んだ。
「これは……なんという……」
ヴルカンの声は、地面を震わせるほどの深い響きを持っていた。
「わしがまだ雛だった頃……母が火山の溶岩で温めてくれた石の記憶……失われた故郷の暖かさ……」
巨大な涙が、ドラゴンの頬を伝い落ち、地面に「ズシャッ」と音を立てて落ちた。
エミリアは、涙でずぶぬれになりながらも、嬉しそうにメモを取っていた。
「成功ね。でも次は傘を持ってこよう」




