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第4話 豊作のパイ
春の種まき季節が近づくと、農民たちが神殿に集まった。
痩せた土地に悩む老農夫ガストンは、3年連続で不作だった小麦畑について相談した。
エミリアは厨房で彼らを迎え、大きな木のテーブルに材料を並べた。
「今日は『豊作のパイ』を作ります。ただし、材料は皆さんの土地から採れるものだけを使います」
彼女は地元の雑穀、森の端に生える野生の ベリー、そして誰もが持参した自家の蜂蜜を使った。
パイを作る過程で、エミリアは農民たちにそれぞれの土地の特徴を語るように促した。
「料理は土地の記憶を封じ込める器です。あなたたちが土地への愛を語る時、その言葉は材料に染み込みます」
パイが焼き上がると、表面には微かな緑の光の紋様が浮かび上がった。
農民たちがそれを家に持ち帰り、家族と分け合って食べると、その春の作物は驚異的に成長した。
ガストンの小麦はかつてない豊かな穂を実らせ、彼はパイの一片を神殿に返礼として贈った。




