第五十二章 静寂の道
すみません。投稿し忘れました。
江戸。
直弼の駕籠は、進む。
雪の道は、柔らかい。
揺れは、少ない。
供の者の足音も、
いつもより軽い。
誰も、声を上げない。
必要がない。
静かであることが、
正しい。
道は整っている。
先を行く者が、雪を踏み固めている。
すべては、
いつも通り。
直弼は、駕籠の中で目を閉じる。
思考は、動かない。
決断は終わっている。
迷いも、ない。
象徴は、
流れの中にいる。
自ら流れを作り、
その上に乗る。
外は静かだ。
静かすぎる。
それでも、
異常ではない。
雪の日は、
こういうものだ。
ただ、
音がない。
音がなさすぎる。
駕籠は、進む。
白の中を。
白は、境界を消す。
人も、物も、
輪郭が曖昧になる。
直弼は、ふと目を開ける。
何も見えない。
布の向こうは、白。
その白の中に、
何があるのかは、見えない。
駕籠は、止まらない。
進む。
ただ、進む。
第五十三章 門前
桜田門。
雪は、厚い。
石垣は白く、
門は静かに立つ。
人は少ない。
いつもより。
だが、
完全に無人ではない。
そこにいる。
白の中に、
いくつかの影。
動かない。
風もない。
時間が、
少しだけ遅い。
遠くから、
駕籠が近づく。
音は、ない。
だが、
近づいている。
影は、動かない。
まだ。
その瞬間まで。
白は、すべてを覆う。
だが、
覆えないものがある。
決意。
それは、
雪の下に隠れない。
駕籠が、門に差しかかる。
距離は、
もうない。
世界は、
音を失っている。
その中で、
一つだけ、
まだ起きていない出来事がある。
赤は、
まだ現れていない。
だが、
次の瞬間、
それは白の上に現れる。




