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第四十八章 刃を持つ



雪は、やまずに降っていた。


白は、世界を均す。


足跡も、傷も、

いったん覆う。


彼は、灯の下に座る。


机の上に、布。


布の下に、鉄。


まだ触れていない。


触れれば、

戻れぬ。


彼は、何度も問い直した。


秩序は必要だ。

強さも必要だ。


だが、

強さが問いを封じるなら、

それは守りではない。


違和は、消えなかった。


怒りではない。


怨嗟でもない。


ただ、

止まらない流れへの恐れ。


中央の炎は、

遠くから見ると、

白を焦がしている。


彼は、布を開く。


刃は、冷たい。


鉄は、何も語らない。


これは討つためか。


いや。


止めるため。


彼は、自分に言い聞かせる。


討てば、

名は残る。


止めれば、

意味が残る。


だが、

本当に止まるのか。


その問いは、消えない。


それでも、

持つ。


刃は、

思想を形にする。


思想は、

行為を求める。


雪は、音を吸う。


彼は、刃を包み直す。


手は震えていない。


震えないことが、

むしろ重い。


これは怒りではない。


決断だ。


止める。


その言葉は、

いま、鉄を帯びた。


遠く、江戸。


直弼は、まだ知らない。


白の中で、

一つの赤が、

向かっていることを。

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