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第四十二章 孤独の深まり



象徴的な一人の処断の後、

議はさらに速くなった。


迷いはない。

異論は出ない。

文は整い、決裁は流れる。


外は満足している。


だが、議の場は軽い。


軽いことが、重い。


かつては、

一行を巡って声が交わされた。


いまは違う。


「ご裁断を」


その言葉だけが残る。


直弼は、理解している。


止める声が消えた。


反対が消えた。


相談も減った。


助言も減った。


誰も離反を宣言しない。

だが、誰も近づかない。


川路は、以前と変わらぬ態度で座る。


忠実で、静かで、冷静。


だが、

言葉は必要最低限。


それが、いちばん堪える。


象徴は、

強いほど孤独になる。


夜、埋木舎。


庭に出ても、

風の音しかしない。


恐れは、もう騒がない。


だが別の感覚がある。


距離。


人と人との距離。


以前なら、

誰かの視線を感じた。


議の後、

小声で言葉が交わされた。


いまはない。


沈黙は、秩序だ。


だが沈黙は、

共に歩く者を減らす。


直弼は、ふと気づく。


自分が守ろうとしたのは、

幕政の秩序だった。


だが、

人の温度は守れているのか。


守るとは、

切ることだったのか。


問いは、形にならない。


炎は、

外を照らす。


だが内側は、

少し暗い。


孤独は、

罰ではない。


必然だ。


象徴は、

支えられて立つ。


だが、

支えは見えなくなる。


直弼は立ち続ける。


だが、

ふと、重さを感じる。


刃の重さではない。


誰にも共有できぬ責任の重さだ。


朱は、鮮やかだ。


だが、その色は、

夜の中でひときわ孤立する。


直弼は、

誰にも見せぬまま、

目を閉じる。


炎は、まだ消えない。


だが、

燃えるほどに、

影は濃くなる。

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