第七話 三人目の死神
優人とレナが後を追って家の外に出ると、ティナが大鎌を持った長身の女性と対峙していた。
その女性は赤毛のセミロングヘアに切れ長の目、スレンダーな小麦色の肢体を大胆なボンテージに包み、艶やかな色気を漂わせていた。
「あれが、ライラ?」
優人は小さな声でレナに聞いた。
「はい、姉さんと凄く仲が悪いんです」
「しかし、凄い格好だ」
優人はライラの大胆な露出姿を見て、思わず心の声を口にした。
ライラは唇の端を吊り上げ、ティナに不敵な笑みを向けた。
「久しぶりね、ティナ。相変わらず背も胸も成長していないわね」
「なによ、わざわざそんなこと言いに来たの」
「ちがうわ。人間の男を使役者にしたって言うから見に来たんだけど、あの男かしら」
ライラは優人に目を向けた。
「ふーん、見るからに頼りなさそうな男ね」
「確かに優人は見た目は頼りなさそうだ。初めて会った時は私のことを、通り魔と間違えて泣きながら命乞いしてきた腰抜けのヘタレだ」
ティナが力強く言った言葉は、優人の胸に深く突き刺さった。
(僕のこと、そういうふうに思ってたんだ……)
落ち込む優人をよそに、ティナは言葉を続けた。
「だけどな優人は料理が上手いんだ。今日作ってくれたカツカレーは特に美味しかったんだぞ」
「相変わらず食欲だけはあるみたいね、いっぱい食べても背と胸は全然大きくならないみたいだけど。食欲は三人前、けど死神としては半人前以下、私なんか三年も前にAクラスになったのに、あなたはいまだにDクラス、同期の中でまだにDクラスでいるのはあなたぐらいよ。あなたは一生Dクラスよ、オーホッホッホ」
ライラは悪の女ボスのような、高笑いを響かせた。
なにも言い返すことができないティナは、両手をぐっと握りしめ悔しそうに下唇を噛んだ。
「そんなことないよっ!」
優人のあげた大声がライラの笑い声を打ち消し、辺りは静まりかえった。
静寂の中、優人はゆっくりと語り始めた。
「僕は知っているんだ、ティナが毎日、雨の日も休まず朝から晩までトレーニングしていることを。あんなに頑張ってるんだ、すぐに上のクラスに上がれるよ」
そう言うと優人はティナの元に駆け寄り、その顔を真剣な表情でじっと見つめた。
「明日から僕も一緒にトレーニングするよ。ティナの足を引っ張りたくないから、だから二人で頑張ろう」
「うん、ありがとう……」
小さな声で言うと、ティナはうつむき、頬をほんのりと赤く染めた。
「なによ、落ちこぼれ死神と腰抜けヘタレ人間で仲良くやればいいのよ」
ライラは捨てゼリフを残し、夜空の彼方に飛び去った。
「ありがとうございます優人さん、ライラを追い返してくれて」
レナは優人の勇気をたたえるように言った。
「別に礼を言われるようなことじゃないよ。頑張ってるティナをバカにするから、つい声に力が入っただけだよ。さあ家に戻ろう」
「私はもう、おいとまします。姉さんの顔も見られたし、夜も遅いので」
「待ってレナ、この町での滞在場所は決まってるの?」
「いえ、まだ決まってません。とりあえず今日はホテルか旅館にでも泊まります」
「そうか。なあ優人、レナもここに置いてもらえないかな?」
「うん、別にかまわないよ。ティナの隣の部屋使っていいよ」
「いいんですか優人さん、ありがとうございます」
レナは嬉しそうに微笑み、優人に丁寧にお礼を言った。
こうして優人とティナの共同生活にレナが加わり、三人での生活が始まった。




