61. アヌビス像の脅威
剣先を突き付けられているというのに牧師の少年は、まるで気にする風でもない。
そして指をパチンと鳴らした。
それに呼応するかのように棺桶が『ゴトッ』と音を立てた。
一拍置いたところで『ガタッ』と蓋が開く。
「来るわよ! 戻って!」と、師匠がレイピアを構える。
俺は剣を下ろして師匠達のところまで下がる。
俺達が固唾をのんで見守る中、棺桶の中から、ゆっくりと人間が出てきた。
ミカポンが素っ頓狂な声をあげる。
「ミ!? 嘘ピョン! 死体が動いた!」
バカかこいつは。今までの流れで、何でそうなる?
「だから死んでないって。さっき仕留めそこなった司祭だ」
「ミ? ああ、そういうことね。ミカポンは理解したのだ! ミッ♪」
緊張感の無いミカポンとは対照的に、棺桶から出てきた司祭は死にそうな顔をしていた。
緑の光を浴びているせいか顔色は最悪だ。
おまけに額にはポッカリ穴が開いている。それは麻耶の狙撃を受けた跡だ。
司祭はゾンビのように、ゆっくり首を動かして俺達を見た。
そして手にしていた杖で『コン!』と、床を突く。
続いて『カッ』と光を発して変身した。
「何だ何だ!? こいつ、変身するのか!」
師匠が注意を促す。
「みんな気を付けて! 来るわよ!」
確かに今の変身で見た目も雰囲気も変わった。
デッシュが呑気そうに言う。
「まるでアヌビスでしゅね。そこの像と同じでしゅよ」
「そう言われてみれば……確かに」
細長い犬顔。ウサギのような立った耳。たてがみにも見える金髪。
そんなマスクを被った人間。
司祭が変身したのは、まさにこのフロアに何体も配置された像と同じだ。
変身した司祭が杖の先で『ガン!』と、床を打つ。
するとフロア内に配置された像が一斉に動き出した!
「あばばば! 像が、像が、動いたでしゅ!」
動いたどころではない。アヌビス像はノシノシと歩き出し、俺達を囲む。
そしてジリジリと包囲網を狭めてくる。
気味が悪いし、圧迫感が半端ではない。
ビッチが困惑する。
「ネ、これって敵なの?」
「見りゃ分かるだろ! 仲良くする気があるように見えるか?」
「だよネ。じゃあ……ヘル・ウィンド!」
ビッチは両手を広げて、黒い風を周囲に放った。
黒い風に包まれた像は動きがピタリと止まる。
そして一瞬にして石化したかと思うと、ボロボロ崩れて自壊した。
アヌビス像は次々と崩れ落ちていく。
円柱の四方を囲むように配置されていたアヌビス像。
柱の数はフロアに12本。ということは48体居た計算になる。
それらがビッチの魔法攻撃で一掃された。
師匠が叫ぶ。
「司祭はまだ生きてるわ!」
祭壇の傍で一体だけ即死を免れた変身後の司祭が膝をついている。
俺はダッシュで司祭に向かった。
が、司祭が杖で床を突くと、地震が発生した。
「ちょ、なんだ?」
12本の柱が振動し始める。そして、その表面がボコボコと波打った。
さらにその波が、まるでカーテンが人型に膨れるように隆起して、新たなアヌビス像を吐き出した。
「ゲッ!? また出たぞ!」
12本すべての柱から同時に新手のアヌビス像が出現した。
そのうちの数体が俺の行方を遮った。
「くそ! 紛らわしい! どれが司祭だ?」
見分けがつかない。
新しいアヌビス像はさっきの白い像と違って、変身後の司祭をコピーしたように色が着いている。
そこに司祭が紛れ込んでしまったので、どれが本物の司祭か分からなくなってしまった。
そうか! これが狙いだったんだ。
『ガツン!』
脳天に衝撃。目から火が出た。
「痛って!」
後ろから殴られた。どうやら杖で打たれたらしい。
周囲を見ると、アヌビス像達が杖を振り上げて攻撃を繰り出していた。
俺を囲む周囲の像も次々と杖を振り下ろしてくる。まるで雨の代わりに杖が降ってくるみたいだ。
『ガツッ!』『ゴッ!』
囲まれているので四方八方から攻撃されてしまう。
「うぜぇ!」
近くにいた像を斬り捨てる。
が、手応えが無い。その固さは剣を通した触感で分かる。
「げ! 当たり判定が無いぞ!?」
与ダメージの表示もない。障害物と同じ扱いか?
「マジかよ!」
会心を叩き込めば破壊は出来る。だが、倒した端から、柱の表面が膨らんで新手が出現する。
「無限湧きかよ!」
破壊しても破壊しても像の数は減らない。倒した分だけ補充される。
見ると、隣で師匠が戦っている。
師匠は華麗に像の攻撃を避けながら的確に像を破壊していく。
が、倒した瞬間に、新たな像が生みだされてしまう。
師匠もそのことに気付いているようだ。
「なんなの! キリが無いわ!」
ビッチは魔法を使う余裕がないのか防戦一方だ。ミルクも接近戦では歩が悪い。
遠距離攻撃専門の2人は背中合わせで、なんとか杖の洗礼を凌いでいるが、キャーキャー騒いでいるだけで成す術がない。
ミカポンは器用に攻撃の隙間を縫ってウサギのように飛び跳ねている。
だが、反撃する気はまるでないらしい。むしろ楽しんでいるように見える。
「ミッ♪ 危ない危ない」
だが、ミカポンの死角からアヌビス像の杖が降ってくる。
「あ!」
杖の先端がミカポンの頭上に接触する!
が、空振り。当たる寸前に急に杖が短くなったようだ。
訳が分からない。
すると、今度はミカポンを襲ったアヌビス像の額に『ビシッ!』と、穴が開いた。
ミカポンが親指を立てながらウィンクする。
「ミッ♪ 摩耶ちゃん、ナイス・ショット♪」
「摩耶? そっか。あの女も来てるのか」
摩耶の姿を探す。矢が飛んできた方向からすると……居た。
階段を上がってすぐのところに、長身の女狩人が綺麗な姿勢で弓を構えている。
ミカポンは摩耶が守るだろうから大丈夫だ。
だが、俺や師匠、ビッチとミルクは分断され、数の暴力で攻め立てられる。
反撃はしているが補充され続けるアヌビス像の動きも活発だ。
完全に乱戦だ。
敵味方入り乱れて、しっちゃかめっちゃかになっている。まるで運動会の騎馬戦だ。
敵の攻撃をいなしながら、周りの様子を観察する。そこで異物が視界に入った。
「なんだアレ?」
像の群れの中に黄色い物体が見える。
三角のテントのような物体……あれはデッシュのキャンプの術だ!
「あの野郎! 1人だけ避難しやがった」
通りでデッシュの騒ぐ声がしないと思った。
「ミカポン! あのテントを盗れ!」
「ミ?」
「黄色いやつ! あのテントだけ盗め!」
「ミミッ? いいけど……えいっ♪」
『ポフン』と、テントが消えた。
そして、テントのあった場所に、体育座りのデッシュがぽつんと出現した。
安全地帯で安心していたはずが、たちまち囲まれて像の襲撃を受けるデッシュ。
ゴツンゴツンと汚い音。杖でタコ殴りされてパニックに陥るデッシュ。
「ぴえぇぇ! た、たしゅけてぇ!」
ミカポンが、ひとさし指を立ててウィンクする。
「ミ♪ 自分の身は自分で守るピョン」
レイピアを忙しく振るいながら見ていた師匠がデッシュの醜態を見て吐き捨てる。
「自業自得よ」
「あばばば! 死んでしまうでしゅ! このままだと死んでしまうでしゅ!」
パニック状態のデッシュに向かって女性陣が全会一致で宣告する。
「「「「死ね!」」」」
ミルクでさえ「チネ!」と言った。そりゃそうだろう。余りにも無様だ。
デッシュはガチ泣きしながら叫ぶ。
「死ねとか酷いでしゅ! 血も涙もオッパイも無いブス共でしゅ!」
そんなデッシュの暴言に誰も突っ込みを入れる余裕がない。
ビッチもミルクも像の攻撃に四苦八苦だ。師匠も周りからの攻撃を捌くので精一杯の様子。
にしても、これではいつまでも経っても終わらない。
アヌビス像の攻撃を弾きながら師匠に近付いて声を掛ける。
「師匠、どうするよ?」
「困ったわね。本体を見極めないとキリが無いわ」
本体か。どれが司祭なのか分かれば良いんだが……待てよ!
「ビッチ! もう一回、全体攻撃だ!」
最初にビッチが放った魔法で司祭だけ即死しなかった。
他はニセモノというか障害物だ。
ということは、ビッチの魔法で生き残った一体をマーキングできれば……。
「デッシュ! 生き残った像にマーキングしろ!」
「あばばば! 何が何だか分からんでしゅ!」
ビッチが像にゴチンと殴られながら魔法を繰り出す。
「もうヤケクソだヨ! ドッテン・クラッシュ!」
『ズムッ!』
腹に響く衝撃音。無慈悲なショック・ウエーブがフロアを激しく蹂躙した。
像の動きが止まり、ひび割れが全身に広がり、そして崩壊する。それらの現象は同時に起こった。
「どれだ? 司祭は……」
左の奥に崩壊を免れた像がある!
「デッシュ! あいつだ! 早く印をつけろ」
「あばばば! そ、そんな急に言われても……」
「モタモタすんな!」
すぐさま柱が新しいアヌビス像を生成する。
「あばば、ぎ、偽装のじゅちゅ」
「遅い!」
ポフンポフンと像の群れにウンコマークが表示される。
タイミングが遅れたせいで、複数の像にマークがついてしまった。
しかもウンコマークが……。
師匠が頭を抱える。
「もう、なんでそれなの……」
「ミ! やっぱ変態だピョン」
「うるしゃい! あんたシャンの頭にもウンコ着けちゃる!」
「やめろって! そんなことしてる場合か!」
何なんだこれは? まるで埒があかない。
「ビッチ! もう1回だ。デッシュもぬかるな!」
「ウン。それじゃ、ドッテン・クラッシュ!」
『ズムッ!』
再び強烈な衝撃音とショック・ウエーブ。アヌビス像達に致命的なダメージを与える。
「偽装のじゅちゅ!」
デッシュが目ざとく一体だけ残った像にマーキングを施した。
「いいぞ! デッシュ! 本体はアレだな!」
少し距離がある。ダッシュで距離を詰めにかかるが、周囲の柱からボコボコとコピーが出現する。
「くそ! 邪魔だ!」
雑魚には構っていられない。見失わないように本体を視界に捉えたまま走った。
既に前方には何体かの像が進路を阻もうとしている。
「ここだ!」
目印の着いた像に会心連撃を叩き込む!
『ズババババ、ズバッ!』
渾身の連撃! 決まった!
「いや……違う」
これはニセモノだ。デッシュのマーキングがズレた?
「見て!」と、師匠が背後で叫ぶ。それで気付いた。
「な!? どういうことだ?」
他のアヌビス像達の頭上にマーキングがついている。どいつもこいつも。
師匠が分析する。
「本体を完全にコピーしたのね!」
新たに作られた像にはすべてマーキングがついている。
つまり、本物の司祭に目印をつけることに成功したものの、それも忠実にコピーされてしまうのだ。
「マジかよ! それじゃ意味がねえ……」
立往生しているところに師匠が合流する。
「私達の意図が気付かれたんだわ」
確かに、ここのAIにとって『完コピ』はお手の物だ。にしても対応が早すぎる。
師匠が苦々しく言う。
「学習してるのよ。ディープ・ランニングね」
「え? 師匠? 素で間違えた?」
「へ? 私が? 何を?」
「いや、だってランニングって師匠。走ってどうする?」
師匠は顔を赤くする。
「仕方ないでしょ! 英語なんかまだ……」
「イヤーン!」
「どうしたビッチ!?」
「変だヨ! ぶたれるとさっきより痛いンだヨ!」
「妙だな。さっきまでは余裕そうだったのに」
『ゴツン!』
油断した。俺も後頭部を殴られた。
痛い。で、ふと気付いた。
「ダメージ12……さっきより増えてるぞ?」
さっきまでは殴られても一桁前半のダメージだった。
師匠がレイピアで杖の強襲を払いのけながら言う。
「やっぱり!? さっきから変だなとは思ってたけど」
「まさか再生する度にレベルが上がってるとか?」
「ありうるわね。だとしたら長期戦はまずいわ」
完コピの無限湧き。おまけに再生する度に強くなっていく。
派手さは無いが、思ったよりも手強い。
師匠と会話している間も、ずっと攻撃を受け続けている。
「マズいな……」
このままじゃジリ貧だ。だが、ひとつ腑に落ちないことがある。
「なあ師匠。本体の司祭は何でビッチの魔法で即死しないんだ?」
俺の質問に師匠が考え込む。
「そうね……」
ビッチのぶっ壊れ魔法ならコピーもろとも司祭を葬り去っても良いはずだ。
「もしかしたらスキルかも?」
「スキルだと?」
「ええ。おそらく根性スキル。即死攻撃を受けても、ちょっとだけ体力を残して踏ん張る能力よ」
「なるほど。ありがちな能力だな」
「感心してる場合じゃないわよ。発動には回数制限があるはずなんだけど、それが無いとしたら永遠に倒せないわ」
「体力はちょびっとしか残らないんだろ? だったらビッチの魔法を時間差の連荘で倒せるかもよ」
「どうかしら。連続で魔法を出すとしてもタイムラグがあるわ。その間に回復されてしまうかもしれない」
「ハハ、それ以前に不死身だったりしてな」
「笑い事じゃないでしょ」
師匠に怒られてしまった。
「ぴえええ! 来ないで!」
情けない悲鳴はデッシュのものだ。
「こいつでしゅ! 本体はこいつでしゅよ!」
デッシュは殴られながらアヌビス像を指差す。
「あっち行けでしゅ! 来ないでくだちい!」
パニック状態のデッシュはアイテムボックスを取り出して、中身を次々に投げつける。
だが、ガラクタをぶつけても効果は無い。
『ぺちょり』
何か汚ならしい音がした。
デッシュが投げた物体がアヌビス像に当たったらしい。
よく見ると茶色いものが像の顏に付着している。
ビッチが鼻を鳴らす。
「ン? 何か臭くない?」
ミカポンも鼻を摘まむ。
「ミ!? ウンチの匂いがする! ミ、ヴォエッ」
そう言われてみれば……何か匂う。
「あばばば、ンコが手に着いてしまったでしゅよ!」
やっぱりそうか。匂いの原因はアレだ。
「デッシュがウンコを擦り付けやがった!」
そうだ。動画野郎のYO君! 奴はクラフトで作ったウンコで俺達を嵌めやがった。
あの時は本当に参った。ゲームの中なのにウンコまみれとか酷い目にあった。
「デッシュの奴、あれを持ってたのかよ」
物好きにも程がある。
ミカポンは「ミミ、きったなぁい♪」と、半笑い。
ビッチは怒りをぶちまける。
「臭すぎだヨ! 死ネ! ウンコ野郎!」
「あばばば! クラフトでしゅよ! クラフトのうんち! 本物じゃないでしゅ!」
ビッチが「汚物は消毒だヨ!」と、バカデカい炎の渦を繰り出した。
例によってアヌビス像が次々と焼き尽くされていく。
で、一体だけ生き残る。そいつの頬にはデッシュのウンチが付着している。
「あ! アレが本体か。デッシュ良く分かったな」
「ボクチンの能力でしゅ。早くあいつを倒すでしゅ」
だが、AIは、すかさずコピーを量産する。
柱から出てきたコピーの像は、皆、本体と同じように頬に茶色いシミを着けている。
「やっぱりか……完全コピーだな」
やはり見分けがつかない。本体の姿かたちを完全に真似られては見分けがつかない。
「待てよ?」
そういえば匂いがしない。これだけウンコ付き像が出現したら辺りはもっと酷いことになるはずだ。
もしかしたら……デッシュのウンコは即座にコピー出来ないんじゃないか!
「なるほど! クラフトされた物は簡単にコピーできないのか!
ゲームの世界で、わざわざウンチを作る奴なんていない。
それも凝りに凝った飛び切り臭いYO君のオリジナルだ。
「だったら臭いの元を探って……」
もっとも臭い場所。それが本物!
「そこだ! 会心連撃!」
『ズババババ、ズバッ!』
手応えあり。
さらに時間差で『ズバババズバッ!』と切り刻む。手を緩めると根性スキルを発動されてしまう!
「くたばれ! くっせえんだよ!」
『ズバババズバッ! ズバババババ!』
「フグヲォアッ!」
本体の司祭が断末魔。そして身体が透け始める。
「やったか?」
さっきからマックスダメージの表示がずっと続いている。
俺の会心連撃ロングバージョンで、流石に根性スキルも役に立たなかったようだ。
本体が倒れたところでコピー像達の動きも止まった。そして一斉に消失していく。
師匠が俺の背中をポンと叩く。
「やったわね。よく気付いたじゃない」
「ああ。デッシュのウンコが臭すぎた」
「あばばば、誤解でしゅ! ボクチンのンコじゃないでしゅよ!」
「YO君のとこで拾ったんだろ。よく持ってたな。デッシュの変態趣味が珍しく役に立ったぜ」
俺に変態と言われてデッシュが「失礼でしゅね!」と、憤る。
それを聞いてミカポンが笑う。
「ミ♪ アンタと違ってミカポンはウンチを食べる習慣はないのだ!」
師匠が驚愕する。
「た、食べる!? 習慣で? え!?」
皆の視線がデッシュに集まる。
「ち、違うでしゅよ! ボクチンにそんな趣味はありましぇん!」
ビッチが疑り深そうに言う。
「ハ? だったら何でウンチなんて持ち歩いてるのヨ」
「しょ、しょれはでしゅね。その、魔が差したっていうか、珍しいからコレクションに……」
呆れたもんだ。いつまでウンコの話題なんだよ。
「まったく、ウンコ、ウンコって、ウンコで喜ぶとか、お前等小学生か!」
ビッチがケラケラ笑う。
「小学生はウンチで笑うもんネ」
師匠が「小学生でも笑わないわよ」と顔を顰める。
ミカポンが鼻を摘まむ。
「ミ! まだ臭いピョン! 異常な匂い。てか、こんな臭い現実でもありえなぁい♪」
ビッチが同意する。
「最悪だよネ。悪臭のチャンピオンだヨ」
「ああ。確かにな……AIですらコピーするのを躊躇う臭さとか」
師匠が首を振る。
「この世に存在してはいけない物体だわ」
「ぎぎぎ。あんたシャン達、容赦ないでしゅね。地味に刺さるでしゅよ」
臭い臭いと言われてデッシュは凹んでいる。
とはいえ、それのおかげで司祭は倒せた。
もうここに用はない。
「さて、一応、目的は達成……」
『グサッ!』
「え?」
俺の胸から何か突き出して、顎を掠めて止まった。真っ赤に染まった鋭利な刃物?
「痛ぇ……」
ワンテンポ遅れて痛みが湧き上がってきた。
「刺された……のか?」




