因果応報
10話完結予定でしたが、1話増えました。
ぜひ最後までお付き合いください!
婚礼まであと二か月というころに、ロバートとアリスのことが舞い込んできた。
知らせをもたらしたのはリサで、王都の知人から聞いてきたという。
「ロバート様が、事業で大きな失敗をされたようです」
ソフィアはお茶のカップを持ったまま聞いた。
「鉱石研磨ギルドで何か?」
「それが……ロバート様が新しい取引先として選んだ商会が、詐欺師の集団だったようで。多額の前払い金を持ち逃げされた上、偽の証書を流通させた件で訴訟になっていると」
「訴訟に、ロバートが巻き込まれているの?」
「被害者として、ではあるのですが……ロバート様がその商会を身元確認なしに紹介されたのは、アリスお嬢様のご友人の伝手だったとのことで、そちらとも揉めているようです」
ソフィアは少し間を置いた。
「アリスは今どうしているの」
「ロバート様が財産の一部を失ったことで、生活水準が落ちたことへの不満を、あちこちで漏らしているようです。ご友人の間でも、そのことで関係がこじれているとか……」
リサは少し申し訳なさそうに、しかし目の端が笑いながら続けた。
「王都でも、少し噂になっているようです。ロバート様が石ころ令嬢と蔑んだ姉を袖にして、妹を選んだ結果がこれだ、と」
「……大変ね、ロバートも」
「お嬢様はそれだけですか」
「他に何を言えばいいの」
ソフィアは本心でそう思っていた。怒りはなかった。憐れみもあまりない。ただ、自分の関与しない場所で、自然に帳尻が合っていく様子を、少し遠くから眺めているような気持ちだった。
「それから……」リサがもう一つ、思い出したように言った。「ミッドフォード家が、鉱夫の受け入れについて改めて話し合いたいと連絡を寄越してきたそうです。ロバート様がギルドを縮小されたことで、人手が余りつつあると」
「つまり逆に、うちの鉱夫を引き受けられる余裕がなくなった、ということ?」
「左様です」
ソフィアは静かに息を吐いた。以前のロバートとの縁談で、鉱夫の働き口としてミッドフォードのギルドを当てにしていた。その計画が崩れたとしても、今は別の道ができている。むしろ、あの縁談のままだったら、今ごろどうなっていたかと思う。
「バートリー家への連絡は、お父様経由でしてもらえばいい。私はもうクロイツ家の者になるので、直接は対応できないと伝えてください」
「……お嬢様」
「どうしたの?」
「本当に、よかったです」
リサの声が、少し震えていた。ソフィアは視線を窓の外に向けた。空が晴れていた。




