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平和への使者  作者: DAISAKU
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第316話 奇跡の復活

パリのアメリカン病院では、緊急手術を終えた、松田マツと松田葉子がICUに移動され、かろうじて生きている状態であった。マツは体全体がねじれ、完全に元の状態に体を戻すことができず、葉子は腕が完全につぶされ機能できない状態で、特に脳への衝撃がおおきかったため、予断を許さない状態であった。ただ、外は気持ちの良いくらい快晴で、町中にあるこの病院の前の道路はいつもと変わらない車や歩行者がせわしなく動いていた。病院前に掲げているフランスの国旗も風になびき、この病院がフランスで最もすぐれていると思わせる風格を感じさせていた。


「兄さん、私、もうおかしくなりそう。こんなことあっていいはずない!」


いつも、人前では絶対に泣き言わない、妹の松田祥子が声を震わせ、涙をながしながら、兄の松田大介の腕に、しがみついた。妹の手は震えが止まらず、どうにもならない状態だった。大介も世界で一番尊敬できる祖母マツと、普段は気が合わないが、たまらなく、かわいくて大事な妹の葉子が、もうなすすべもなく、死ぬまでの時間をただ、ここで待っている自分が情けなく、悔しい思いでいっぱいだった。そして、妹の祥子に返す言葉すら、見つけることもできず、ただ、無言でいるしかなかった。ICUの外にある、椅子に座っている二人の廻りは病院の中なのに、物音ひとつせず、ただ、時間だけが過ぎていた。大介はこんな苦しい中、もし、マリさんが、ここにいれば、自分の想像もできないような方法で救ってくれるのではないかと考えていた。だが、あのサターン人のアダムでも、もう誰が来てもどうすることはできないと断言していたことを思い出し、泣きながら苦笑いするしかなかった。


「おい、大丈夫か?」


精神的に打ちのめされている二人は、急に目の前に現われた男の声に反応して顔をあげた。


「ユウキ!」


絶望の中でも、もしかしてユウキなら、何とかしてくれるのではないかと藁をも掴む思いで、大きい声をだした。


「おばあさまと、姉さんが、もうだめなの、なんでもいいから、少しでもいいから、お願い、あなたの力でなんとかして・・・」


祥子は、もう、頭がおかしくなる寸前まで、追い込まれていた。


「そうだな・・・二人の状態では、僕では治すことができないよ」


ユウキは、二人の感情など、気にもせず、軽い感じで返事をした。大介と祥子は、また、がっくりとして、暗くなった。すると、ユウキの後ろから、弥生時代ぐらいの緑色の着物と黒髪を古めかしい縄で結んだ少女がひょこりでてきた。


「イネがやります」


二人は見たこともないない中学生ぐらいの少女を見て、驚いた様子で


「君が治せるのかい?」


少女は、少し慌てた様子で、


「体は、マツが、かなりあぶない、葉子は頭の命が今にもとまる。だから葉子から治す」


そう言うと、ユウキに連れられ、イネはICUの病室に入って行った。大介と祥子も追いかけるように病室に入った。イネは関係者以外立ち入り禁止の病室に入ることも、気にせず、まっすぐに葉子のベットの横に来て、じ~っと具合を見ていた、すると間髪入れずに、頭に手を当てて、なにやら、聞いたこともない言葉を発した。すると、病室内がもや~っとした空気が漂い始めた。

「アヒル、ヒフミ、オシテ・・・・」


イネは念仏のように、黙々と葉子の頭にむかって念じた。大介と葉子は、その様子を片津を飲んで見守った。ユウキは、見慣れているのか、近くの椅子に座って、のんびりと、その様子を観察していた。5分程度すると、イネは目をぱっちりあけて、葉子の頭をかるくさすった。すると今度はすぐに隣にいるマツの部屋に行き、今度は心臓からお腹の方へ手を当てて、また、呪文のような言語を唱えはじめた。緊急性を要しているのか、イネは集中していた。すると、今度はすぐに目を開けて


「ユウキさん、手伝って」


ユウキはやっと自分の出番がきたなと思い、すぐにイネの隣に来た。


「イネが体のねじれを直していくから、ユウキさんはその廻りを同時に治してください」


ユウキは軽く頷いた。マツは体がこんなにねじれていて、よくまだ生きているなと思ったのと、自分が知っている年老いた老女でなく、30歳ぐらいの若い体になっているため、なんとか、死なずにすんだと思った。マツの体の状態もすごく悪いため、気をぬかず真剣にイネの治療のサポートに徹した。5分ぐらいすると、徐々にではあるが、マツの体のねじれが元の状態に戻り始めた。30分ぐらいすると体は正常な形になった。


「はあ、はあ」


イネは体の力を使い果たしたのか。その場で、座りこんだ。そして、大介と祥子の方を向き、軽く笑いながら


「とりあえず、命は大丈夫。すこし休んだら、また治す。はあ、はあ」


大介と祥子はマツの体がみるみる治っていくのをまじかで、見ていて、信じられない気持ちと本当に治ったのかと思う不安が入り混ざった気持ちになっていた。そんな二人を見てユウキが


「おいおい、僕たちが、こんなに頑張って治療してるんだぞ。なんだ、その不安そうな顔は、全く、松田の人間ならもっと、堂々としていろよ」


祥子はユウキの手を握って


「ユウキ、姉さんとおばあさまは、本当に良くなるの?」


ユウキは、笑いながら


「ああ、よくなる、イネはどんな病気やケガも時間さえあれば治癒できるからな、まあ、これはイブの受け売りだが、人間には数千年ほどの期間で稀にイネのような特殊な力を持った者が生まれてくると言っていた」


大介と祥子は、急に元気が出てきて、


「そういえばユウキ無事に過去から戻ってこれたんだな、マリさんはどこだ?」


大介は、マツと葉子の具合が良くなることがわかると急にマリのことが気になりはじめた、なにしろ、この世ではじめて好きになった女性だからだ。


「お前達、イネにはもちろん感謝してほしいが、イブやマリがイネを過去から連れてきたから、こうして二人を治すことができたんだからな」


やはり、マリさんはすごいと大介は頷き、祥子は笑いながら、泣いて、マリに感謝をした。


「とにかく今は、治療だ。祥子、イネに水を持って来てくれ、治療は、ものすごく体力を使うんだ。それと、大介はICUの前にいて、あと30分くらい、誰も入らないように見ていてくれ。なにしろ、治療中に邪魔が入ると治る者も治らなくなるからな、絶対に誰も入れるなよ」


ICU、特にマツと祥子は危険な状態であるため、1時間に一度は、医師と看護婦が巡回に来るからだ。大介はいつも通り、自信にあふれた姿となり、


「任せてくれ、この命に変えても中には誰も入れない」


イネは祥子が買ってきたペットボトルを不思議そうに見ながら、ごくごくと水を飲み干し、すぐに治療を進めていった。

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