第315話 破壊者の脅威
「どこから話せばよいか」
アンドロイドとは思えないほどの人間くさい雰囲気と、独特なしぐさが、妙にヤエの存在感、何とも言えないオーラのようなものが感じられた。その様子をマリはうれしそうにながめていた。
「まず、この地球はエクセル銀河連邦に目をつけられ、1年以内には、大きな艦隊が派遣され滅亡するようだ。先遣隊が現れたが、軌道上の宇宙船は、マツと、その仲間が破壊、だが、頼りのマツは危篤状態の重症、孫の葉子は腕がねじれ脳に障害があり重症、地球に調査に来た3人のうち、二人は始末したが、もう一人には逃げられた。そいつは、どうやらマリに会いたいようだ」
相変わらず、簡潔に話すが詳細が全くわからない、ヤエのことだから、行動をしながら、理解してもらおうとしているなとユウキは感じ取っていた。
「なるほど、ずいぶんと大変な状況になっているな。マリどう思う?」
マリは尊敬する松田マツや孫の葉子のケガのことが、すごく気になり、すぐにでも病院まで飛んで行きたい気持ちを抑えながら答えた。
「どうして、こんな遠い星まで来るのか理解できないけど、イブが目覚めてから半年もしないで、その先遣隊が来たことから、1年ではなく、半年ぐらいのスパンで地球に侵略者が来ると考えた方がいいね。それと、ばあちゃんが先遣隊全員を殺さずに1人だけ逃がしてくれたおかげで、交渉次第では、侵略者の情報を引き出せるかもしれないね」
ヤエは、マリがまだ、16歳ぐらいだったと聞いていたが、随分と場慣れしており、こうした、危機を何度も乗り越えてきたようだと思った。また、この時代には存在しているはずもない自分はあくまでも平和への使者であるマリのサポートに徹することを決めていた。
「よし、現代に戻ってきたけど、みんなには、悪いけど、侵略者との問題が解決するまで、このまま、死んだ人間として秘密裏に動こう、もちろん、関係者には教えてもいいけどね。ユウキ、イネ、レナードは、マツさんや葉子さんがいるところまで、すぐに向かって、カミーユ、ドニーズは引き続き情報局のみんなと交代で地上で出雲神殿の警備を、侵略者が来たら、すぐに連絡して!」
カミーユ大尉とドニーズ中尉はマリに敬礼をしてすぐに地上に向かった。納得がいかないのかユウキだけはマリに食い下がった。
「マリ、イネを病院に送ったらすぐに戻ってくるよ。今後の作戦をヤエとアダムと考えるんだろ」
マリは少し警戒するような顔をして、
「大丈夫よ。とにかく、マツさんの力がないと今後の戦力を確保するのが難しくなるから、とにかく、完治するまで、病院で見てあげて」
ユウキは、なんだか自分だけ仲間外れにされているような気がしたが、マリの言うことも一理あるため、言い争いはせず、すぐにイネとレナードに触れ、瞬間移動で病院に向かった。なんとも気ごちない関係に見えたヤエは
「どうしたんだマリ、ユウキがここにいた方が、良い考えが出ると思うのだが」
マリは、過去でイブと話し合って決めたことを思い出していた。
『マリ、どうやら、ユウキは、なんらかの者の影響下にあるようだ。あれだけの能力があるくせに私やマリのことについての知識が希薄だ。しかも、未来で起きるであろう危機が動き出しているはずなのに、あえて、我々に助言すらしなかった。過去に来て、我々が歴史を改変して未来の事象が大きく変化すると思われた時に、秘密を話したり、行動がどうもおかしい。今後、未来に戻ったら、少し、距離を取り、我らの作戦や行動がわからないようにする方が良いだろう』
マリは少し考えたが、ばあちゃんはもちろんのこと、アダムもかつてはイブのパートナーだったことも考慮し、ユウキについて話すこととした。
「ばあちゃん、アダム、ユウキについて、ここだけの話にしてほしいんだけど」
ヤエとアダムは軽く頷いた。
「過去で私達は、様々な作戦を展開して、かなり歴史を変えてしまい、本当の時間軸から大きく変わってしまったと思ったの、それは、本来戻るべき世界ではなく、別の時間軸の平行世界に移動してしまったことを意味していたの。そのことを確認すると急にユウキが未来の話を始めて、特に気になったのが、現代でイブに会ってからの私の活躍やイブの存在などを全く予知できていなかったことなの。だっておかしいでしょ。他の出来事はほとんど知っているくせに、肝心な私たちの情報がないなんて、どう考えても意図的に何かあるとしか思えない」
マリはあれだけ信用していたユウキに異変があることに戸惑っていた。その話を聞いていたヤエは
「そうだな、かつてのユウキなら、ありえないことだな」
アダムも同調するように
「ヤエの言うとおりだ。この地球を滅ぼすにしろ侵略するにしろ、ここまで手の込んだことをしなくてもムー人なら簡単に済ませられる。それに、ユウキは何度も我々のために
禁止されている直接的な手助けをしてくれている」
ヤエも頷きながら
「これからユウキと話して、過去のユウキと今とどう違うか私も調べてはみるが・・・」
ヤエは急に何かひらめいたようで、かわいらしい顔の目を大きく開いて
「こりゃ、間違いない、そのサターン人イブという存在を調査するように潜在的に何か組み込まれているんだろう。イブのことが知らないこと、イブと出会ってからのマリの活躍を知らないことは、おそらく、変な先入観なしにイブを観察し、マリの活躍も含め、どういった行動を取るのか、確認するためだろう」
マリは自分には全く考えも及ばないことをスラスラと話すばあちゃんを見て、かつて幼い頃より大好きな師匠として接してきた存在が今、目の前にいることが、何よりうれいしかった。
「なんだ、マリ、ニヤニヤして」
「ごめんなさい。ばあちゃんがここにいたら、きっと同じことを言うんだろうな~と思ったらうれしくなっちゃって」
ヤエが少し顔をゆがめて
「そのばあちゃんと言うのやめてくれないかい。これでも心は、まだ30過ぎのお姉ちゃんなんだから、せめて、お姉さんとか、ヤエさんとか、言えないのかい?」
マリはまた嬉しそうに
「う~ん。無理です。どんな姿になろうが、ばあちゃんは、ばあちゃんだもの」
あまりにも嬉しそうにしているマリを見て、
「全く、マリはぶれないね~、まあ好きにしな。その代わり、これから、ビシビシとやっていくから、覚悟しときな!」
ヤエの態度、話し方や使命感など、まるで本物のばあちゃんが目の前に現れたようで、マリの中で何かが、変わり始めていた。かつて亡くなってしまったヤエの悲しみが残る、あどけない少女は、このヤエとの出会いにより、心身共に、燃え上るような力が戻ってきたことを感じ取っていた。




