場外『残念梓君』
場外すとおりい。
伊達梓編
俺の名前は伊達梓。
桜花学園に通う中学三年生の男の子。弓道部兼新聞部に所属していたりする、わりとイケてる男の子。
うん。わりとイケてると思うんだ、俺。
そんな俺は実は今日これからデートだったりする。
デートのお相手は『如月千春』さん。一橋高校に通っている高校一年生の女性で、俺より一つ歳上。
ひょんな事から俺達は知り合いとなり、今日、デートにまで持ち込む事が出来た。
少しキツめの端正な顔に、透き通るような耳に響く声と綺麗で艶やかな黒髪。しなやかな体躯。如月さんからは女の人独特のいい匂いがする。
美人。
勉強会で遅れる、と連絡があったがそんなの気にしない。寧ろその時間をうきうきと待っていられる。
今日のデートで、ガッチリハートを掴んでやるぜっ!と意気込んでたのに……。
「やあ」
現れたのは如月さんだけではなかった。
「ごめんね梓君。凄く遅くなっちゃって」
申し訳なさそうに如月さんが言う。俺は笑顔で首を横に振る。
それは大丈夫です。
それは大丈夫なんですけど。
「……鳴海先輩、何やってんですか」
何故貴方がここにいる。
「ち…、如月さんに一緒に来て欲しいって言われてな」
「梓君。多分本人から直接話聞いた方が早いし解りやすいと思うから」
そう言って、じゃ、と椅子に座りもしないで早々に立ち去ろうとする如月さんを俺は立ち上がり慌てて引き止める。
「ま、ちょっ、待って下さい如月さんっ!」
如月さんは少しの間の後振り向き、「何?」と言った。
「あ、あの俺、如月さんから話聞きたいんですけど」
俺の言葉に困ったような顔になり黙り込む如月さんに、俺の正面にいつの間にか座っていた鳴海先輩が軽い調子で話しかける。
「ちぃ、お話ししてあげれば?」
「………」
如月さんはそれでも突っ立ったまま席に座ろうとはしなかった。鳴海に視線をやっている。
つか、ちぃ呼びって。
二人はいつの間にこんな親密な仲に。鳴海先輩よ、彼女はどうした。
「鳴海さんが話した方が早いですよ」
「俺が話すの?何を?」
「鳴海さんに起こったことを、です」
「話していいんだ」
「…常識の範囲内で、鳴海さんが世間に知られてもいいって所までですよ」
「……じゃあ、ちぃが」
「如月です」
「如月、さんが俺とキ」
「だぁぁぁーーーーっっっ!!!!!!」
如月さんが大声を上げる。
「それは無しです!」
「じゃあ、如月さんの部屋に」
「ちょっと鳴海さん!!私、常識の範囲内って言いましたよね?!」
「ちぃの常識と俺の常識って違うから」
顔を赤くしながら叫ぶ如月さんを見て、俺は思った。
さらば、
俺の青春。
「…………ふっ」
早かったなぁ。




