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カーテシー・クラブ3 女帝陛下の思いつきで男たち八十人がウェディングドレス姿に!? 宮廷疑似結婚式イベント「花嫁作戦」始まります  作者: 真城 悠


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9/12

幕間 十八世紀の宮廷結婚式って何をするの?


はい、どうもこんにちは。エカテリーナです。

……と言っても、日本の読者の皆さんには、

「誰?」

という感じかもしれませんね。

もう少し正確に言いますと、エカテリーナ・アレクセーエヴナ。

後世では「エカテリーナ二世」、あるいは「エカテリーナ大帝」と呼ばれることになる人物です。

ただし。

この物語の現在は、1746年です。

そして私は1729年生まれなので、この時点ではまだ17歳です。

大帝でもなければ、ロシアの女帝でもありません。

まだ普通に若い女の子です。

……まあ、「普通」というには、ちょっと特殊な立場ではありますけれど。

私はもともとロシア人ですらありません。

ドイツ生まれの公女で、ロシアへやって来て正教へ改宗し、名前をエカテリーナ・アレクセーエヴナと改めました。

そして1745年――つまり去年ですね。

エリザヴェータ陛下の甥であり、ロシア帝位の後継者でもあるピョートル・フョードロヴィチと結婚しました。

ですからエリザヴェータ陛下との関係を、ものすごく雑に説明すると、

私は「女帝陛下の甥のお嫁さん」です。


メタ発言しちゃいますが、「ベルサイユのばら」を描かれた池田理代子先生の「女帝エカテリーナ」の主人公が私です。ちなみにエリザヴェータ陛下もかなりの存在感で登場されますが…まあまあの鬼畜キャラになっておりますのでご注意を。


話を戻します。


この後にはいろいろあります。

本当に、いろいろあります。

でも、それは今のお話とは関係ありません。

今回重要なのは、私がつい去年、ロシア宮廷で実際に盛大な結婚式を経験したばかりだということです。

というわけで今回は私が、

「十八世紀ロシアの宮廷結婚式って、実際には何をしていたの?」

というお話をしましょう。

なかなか適任でしょう?

さて。

ここまでのお話を読んで、

「男たちを花嫁にして外を歩かせて、そのあと皆で食事をして、さらに踊って、最後は花火まで上げる?」

「さすがにイベントを盛りすぎじゃない?」

と思った方もいるかもしれません。

ところが。

少なくとも、当時の大規模な宮廷婚礼として見るなら、それほど変な流れでもありません。

私自身の結婚式を例にしましょう。

まず朝から大変です。

着替える。

髪を整える。

宝石をつける。

宮廷中が動き回る。

そして、いよいよ式場へ向かいます。

私の結婚式でも、大規模な行列が組まれました。

宮廷の馬車。

近衛兵。

役人。

貴族。

要するに、

結婚する二人がこっそり教会へ行って、式を済ませて帰ってくる

ようなものではありません。

結婚そのものが巨大な宮廷イベントなんです。

それを人に見せることにも意味がある。

そして宗教儀式。

正教会の結婚式ですから、冠を用いる儀式などもあります。

では、それが終われば、

「皆さんお疲れさまでした。今日は解散です」

となるか。

なりません。

ここからご馳走です。

宮殿では盛大な祝宴。

そして食べ終わったら――

踊ります。

そう。

結婚式のあとに舞踏会です。

朝から着飾って。

行列して。

長い宗教儀式をやって。

ご馳走を食べて。

さらに踊る。

皆さんの時代から見ると、

「もう新郎新婦を休ませてあげてください」

と言いたくなるかもしれません。

私もそう思います。

でも、まだ終わりません。

最高位の宮廷婚礼ともなると、祝賀は一日では終わらないこともあります。

舞踏会。

仮面舞踏会。

オペラ。

芝居。

晩餐。

イルミネーション。

そして――

花火。

そうです。

花火まで本当にやっています。

私とピョートルの1745年の結婚を祝った花火は、当時の版画まで残っています。

ですから、この物語の最後に花火が上がったとしても、

「作者が現代の結婚式みたいなノリで適当に入れたな」

とは思わないでください。

むしろこの時代の大規模な宮廷祝賀では、かなり相性のいい演出です。

ただし。

十八世紀ロシアの人たちが結婚するたびに、

行列!

大晩餐!

大舞踏会!

花火!

を全部やっていたわけではありません。

そんなことをしていたら国が破産します。

これはあくまで、皇族や最高位の貴族などによる、非常に大規模な宮廷婚礼の話です。

今回の「花嫁作戦」が真似をしているのも、そうした宮廷婚礼の豪華な部分です。

だから。

華やかな姿で人前へ出る。

長い祝賀の一日を過ごす。

皆で食事をする。

夜になったら踊る。

そして最後に花火を見る。

この流れそのものは、意外なほど十八世紀の宮廷世界から外れてはいません。

むしろ。

今回の催しで歴史的に一番おかしいところは、そこではありません。

問題は――

花嫁が八十人近くいて、その全員が男だということです。

そこについては、私にも弁護できません。

エリザヴェータ様に聞いてください。

それでは皆さん。

長かった一日も、いよいよ夜です。

ご馳走を食べて。

踊って。

そして最後には、本当に花火を上げてもらいましょう。

私は去年やりましたからね。

今度は、あの人たちの番です。


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