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第七話


 絶望的な未来を迎えないよう、私は頑張り続ける。 


 私が有田を勝手にライバル視しているだけ。


 でも、私はあの子と戦うことはしない。


 戦っても仕方ない。選ぶのはタロちゃんだ。


 タロちゃんは値踏みなんかしない。より優れている方がタロちゃんに選ばれるわけじゃない。


 タロちゃんはそういう人だ。




 それにライバルは有田だけじゃない。


 遊び半分のギャルの前田もそうだし、実は里美だってそうだった。


 私は里美がタロちゃんに惹かれていくのをうすうす感づいていた。


 そして中学卒業の時、里美に打ち明けられた。


 「タロちゃんのことが好きだった」と。


 でも、自分磨きを始めた私を見て、かなわないと思ったようだ。


 応援すると言ってくれた。




 よく見るとタロちゃんは、実はかっこいいことにみんな気づくだろう。


 テストの点数を知らなくても、授業中一緒にいればタロちゃんの頭がいいことも分かってしまう。


 でもその前に、幼馴染の私がいることは女子たちに刷り込み済みだけどね。


 横やりは入らないと思う。


 お願いだから、横やり入れないでね。


 そんなことお構い無しなのは、あのギャルの前田だけだ。


 でも、前田は本気でタロちゃんを狙っているわけじゃない。


 だから私は安心し切っていた。


 私が一歩リードしてるんだと。


 まさか、五分後にとんでもないライバルが現れるとは‥‥‥




 担任と一緒に教室に入ってきたのは、ハーフの転校生だった。


 透き通るような白い肌。


 日本人には持ち得ないものだ。


 オマケに金髪。


 染めたものではなく、天然だ。


 うちの高校は茶髪までは黙認されているけど、金髪は完全に校則違反だ。


 ギャルの前田が薄い紫のヘアカラーにしただけで、注意された。本当に黒に薄く紫が混ざっているだけだったのに。


 だから、誰も金髪には染められない。


 許されるのは天然ものだけだ。




 逆に『校則違反だから、黒く染めてこい』とも言われない。


 ナチュラルを尊重する。


 いい時代になってきたよね。


 もう少しだよ。タロちゃん。


 相貌失認も、きっとナチュラルになるよ。


 大丈夫だよ。




 ちなみに、この転校生。ハーフ特有のとんでもない美人だ。


 しかも胸が日本人レベルじゃない。これは世界レベルだ。


 男子たちの中には小さくガッツポーズしているものもいる。良かったね美人が転校してきて。


 ギャルの前田はムスッとしている。


 自分を脅かす存在と認識したのだろうがまあ、これはどうでもいい。


 有田は興味津々だ。多分友達になりたくてうずうずしてるのだろう。


 本当に、いい子だ。




 私にとっても、転校生が美人かどうかは、あまり気にならない。


 そこじゃない。


 問題は『肌が白くて金髪』だということだ。


 タロちゃんが一発で認識してしまう。


 金髪は転校生。


 この学校に金髪は一人しかいない。


 後ろ姿でも、クラス全員が一列に並んでも、すぐに分かってしまう。




 タロちゃんもハーフの金髪を珍しそうに見ている。


 強敵だ。




 タロちゃんがまだハーフの転校生を見ている。


 いつもなら、すぐに顔を覚えるためにじっと見つめているからと思うけど。


 本当にそれだけなんだろうか?


 不安になる。


 あっ、タロちゃんがちょっと頷いた。


 えっ、何が分かったの?


 もしかしたら、タロちゃんは転校生が美人だと分かっちゃった?


 ねえ、美人だと認識したの。早いよ。




 転校生は金髪ハーフでスタイルもいい。


 細部の描写はしないけど、まるでラノベのヒロインじゃないか。


 クラスのヒロインは彼女でかまわないけど、タロちゃんにとってのヒロインは私だよね。


 一発で認識できる私の艶のある黒髪が、ハーフの転校生の天然の金髪によって脅かされてしまう。




「初めまして。木村ハナコです」


 黒板に『木村ハナコ』と書く。


 綺麗な文字だ。発音も片言じゃなくしっかりしている。


「外見で分かると思いますけど、父親がスウェーデン人です。名前がカタカナなのは、当時、父にとって漢字を書くのが難しかったかららしいです。しゃあない‥‥‥」


 転校生が気まずそうに、口を押える。


「私は、仕方ないなと思っています。よろしくお願いします」


 ハナコは深々とお辞儀をする。


 関西弁?


 今、関西弁で言いかけたよね。


 緊張していた教室の空気が、一気に和んだ。


 頭を下げたままのハナコは、諦めたように顔を上げた。


 でもずっと、うつむいたままだ。


 本人は痛恨のミスだと思ってるかもしれないけど、それは違うよ。


 関西弁はチャームポイントだから。




 でも、このハーフ、金髪なうえに関西弁まで使いこなすのか。


 ハーフだからバイリンガルかと思ったけど、違った。


 第二日本語の関西弁も駆使する。これじゃもう、トリリンガルじゃないか。


 このクラスに金髪もいなければ、関西弁を話す子もいない。


 全てがタロちゃんに刺さる。


 後頭部を見ただけでも、金髪はひとりだけだ。


 姿が見えなくても、関西弁で話すのは転校生だ。


 何だこの爆弾は?


 文科省が送り込んできた刺客か?




 それにしても、ハナコ、前田、有田と、どうして、みんな胸があるんだろう。


 私だって、平均は越えているはずなのに。


 


 担任の先生がいなくなると、転校生ハナコの周りに人が集まっていく。


 みんな興味津々だ。


 真っ先に声をかけたのは、やはり有田だった。

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