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第四話

「おはよう」


「おはよう。有田さん」


 タロちゃんが自然に挨拶を返す。


 この笑顔で挨拶を交わす有田は、とんだ伏兵だった。




 新学期に行われた『第一回、かわいい女の子クラス一決定戦』で、有田は上位にも入っていない。


 第一印象はまあ可愛いけど、特に目を引く子ではなかった。


 でも、その控えめな外見以外、有田はとんでもないモンスターだった。


 異世界物で言えば、スキルカンストの聖女だ。


 一度会って話してみれば、すぐにこの子の良さが分かってしまう。


 まず、声が高く、めちゃくちゃかわいい。女の子だ。


 これは相貌失認のタロちゃんにとっては一番の武器だ。




「おはよう」


「有田、おはよう」


 しまった。また名前を呼んでしまった。


 いい加減、名前を呼ぶ癖をなおさないと、変な奴で確定されてしまう。


 もう、タロちゃんは有田の事覚えているのに。


 有田は私にも挨拶してくれる。


 私とタロちゃんまとめてじゃなく、丁寧に個別だ。


 本当にいい子だ。


 挨拶の声と笑顔で心地いい空間ができる。




 タロちゃんがまだ有田を見ている。


 有田は、喋り方も仕草も女の子してるんだよな。


 つい可愛いと思ってしまう。


 胸だってギャルといい勝負だ。


 普通にかわいい有田の外見に付加価値が積み重ねられて、とてつもなく底上げされる。


 何処にも売ってない特大の厚底を履いてるみたいだ。


 教室に入るとき、頭ぶつけるぞ。


 


 それだけの女の子なら、普通あざといと思われるところだが、性格がまた異次元レベルでいいのだ。


 両親の育て方が良かったのかな。


 これが家庭環境なのか、何なのか私にはわからない。


 まあ、うちの親はその辺適当だけど、でも嫌いじゃない。




 人当たりもソフトで、その性格の良さから、多分女子からの一番人気は有田だ。


 第二回の可愛いなんちゃらがあれば、有田は有力候補だろう。


 おっと、ランキング否定派の私が、ランク付けをしてしまった。反省反省。




 というわけで、有田の周りには自然と人が集まってくる。


 彼女持ちの男子生徒も自然とその輪に入る。


 有田も、異性としてもてていると思ってないから、まったく気にしない。


 女子たちも彼氏が別に有田といても気にしない。


 取れかけたワイシャツの袖口のボタンを縫ってあげてても、誰も文句を言わない。


 むしろ、付き合っている彼女から「気になってたけど。私、裁縫苦手なんだよね。女子力ないからさ。ありがとう」と感謝されていた。


 『聖女・有田』は最高の立ち位置にいる。


 強いて弱点を挙げれば、有田は運動がちょっと苦手だ。


 でも、足が速くてモテるのは小学生の男子だけだ。


 どんくさい有田を可愛いと思うかもしれない。


 そういえば、タロちゃんは昔から足が遅かったな。


 運動音痴じゃないけど、スポーツは私の方が得意だった。


 まあ、あの頃は私の方が背が高かったからね。




 でも、一つだけ間違ってることがあると思う。


 それなりに可愛くて女の子している有田を、意識しない男がいるだろうか?


 ギャルとは真逆の存在だが、有田はとんでもなく男を引き付ける。


 ある意味、無自覚な魔性の女だ。


 女子たちも、有田なら彼氏を取られることはないと本当に思っているのだろうか?


 有田はギャルの前田と違って、人の彼氏を取ろうとは思っていないし、そういうそぶりも見せない。


 でも、私が男だったら、彼女にしたいのは有田だよな。


 誰からも好かれるあの性格は、ある意味完璧だし。


 声も仕草もとてつもなく可愛い。


 グラビアじゃないんだ。


 静止画ならギャルの前田に分があるかもしれないけど、有田は動き出した途端無双する。


 前田の香水やあざとテクニックを苦手とする男子もいる。


 でも、自然な女の子のしぐさを苦手にする奴はいるだろうか。


 『フェロモンの前田』VS『癒し系の有田』




 例えばどうだろう。川でおぼれていて、浮き輪が一つしかなかったら、きっとみんな有田に投げるんじゃないかな。


 ギャルの前田がチューしてあげると言えば、迷う男子も出てくるだろうけど。


 あっ、でも私と有田だったらどうだろう?


 タロちゃんはどっちに浮き輪をなげてくれる?


 私に投げてくれるよね?


 不謹慎かもしれないけど、私を選んでほしい。


 でも、そうか。タロちゃんだったら、浮き輪はきっと有田に投げるよね。 


 そしてタロちゃんは、私を助けるために川に飛び込んでくれる。


 疑ってごめんね。タロちゃんはそういう人だった。


 タロちゃんは絶対に私を見捨てたりしない。




 でも、タロちゃんは泳ぎがあまり得意じゃないんだよね。


 幼馴染の私は知っている。金づちに近いレベルだ。


 タロちゃんが川に飛び込んでおぼれてしまわないように、私はもっと泳ぎをマスターしなければならない。


 自衛隊の人は、服を着たまま泳げたよね。


 あっ、そうだ。古式泳法で服のままどころか鎧を着たまま泳げるすごいのが確かあったはず。


 今度調べてみようっと。



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