第十二話
巨大なパフェがテーブルの中央に鎮座している。
これ、何人前なんだ。
別腹が三つくらい必要だ。
三段腹か。それ、違うでしょ。
「美味しそう」
有田が、遠慮なしにスプーンですくって、一口食べる。
そうだよね。誰かが、先に手を付けないと、みんな食べづらいよね。
「あっ、まだ食べるな」
前田が、スマホ片手にアングルを調節する。
有田がすくった跡を隠して、手つかずに見えるようにする。
すごい連射だ、スマホの設定どうなってるんだ?
「食べて、いいよ」
仕切るなよ。
まあ、今回は前田が立役者だから、素直に従ってやるか。
「食べよ」
里美を促しながら、私も一口食べる。
甘すぎないクリームが美味しい。
そうだよね。見栄えだけだと、リピーターが来てくれない。
この味なら、また来ようと思ってしまう。
巨大パフェ攻略のために勇者を召喚して、仲間を引き連れて入店させる。異世界あるあるだな。
ハナコも遠慮がちに食べる。
「美味しいです」
世界のハナコが褒めたぞ。私の舌も間違っていないということだ。
「里美も、食べな。今日は私のおごりだから。こんな大判振る舞い、今年のお年玉が残ってるうちだよ」
「ありがとう」
里美も食べ始める。
ハナコが気を使って会話を始める。
「皆さん、志望校とか、もう決めたんですか」
食べ始めた勢いで、里美が口火を切る。
「私は専門学校」
よかった。少しは元気になったんだね。
「専門学校? どこの?」
有田が会話を広げる。
そう、いいぞ。もっと里美に喋らせろ。
「美容系のとこ。メイクアップか美容師になりたいの。私、みんなを綺麗にしてあげたいんだ」
「いいと思うよ」
ちょっと、食い気味にかぶせてしまった。
私の方が、少し緊張してるのかな。
里美は隠れおしゃれだ。
ギャルじゃないから制服を着崩したりはしてないけど、私服は意外と派手だ。
卒業したら、すぐに大人の女性に変身するだろう。
いい女になるんだよ。
「私はどこでもいいかな。短大にでも潜り込んで、そして専業主婦になるんだ」
嘘だろう。有田が専業主婦? あんた、大臣にだってなれるぞ。
優秀な女が専業主婦になんてなるから、残りかすが政治家になってしまうんだ。有田、お前が女性の代表になれ。
「前田は?」
「文系の大学。多分、関東のどっか」
「どっか?」
「推薦、決まってないの?」
「へっ?」
有田がさらっと続ける。
「坊主君と同じ大学、行くんでしょ? 早く、野球の推薦決まるといいね」
あの前田がアイスティーに口をつけることで、ごまかそうとしている。
全て、お見通しか。やっぱ、お前大臣になれよ。
ハナコが、こっちを見てくる。
「私? 私もまだ、決めてないかな。大学行くつもりだけど。絞り切れてないんだ。親とか、色々相談しないと」
「色々ね」
前田のやつ、こっちに火の粉を向けて逃げ切るつもりだな。
「言い出しっぺの、ハナコは。どこ行くの」
「私ですか? 多分、スウェーデンに帰るかと。おばあさまの、体調がよくないので」
「もしかして、王宮に?」
「何ですか。違いますよ。おばあさまは、普通に会社を経営しているだけですよ」
会社経営は普通じゃないって。
「スウェーデンで会社って、どんな?」
有田がかぶせて質問する。
有田は何にでも興味を示す。そして全部吸収して蓄積するから、こんなモンスターになったのか。
「何でしょう。たしか、不動産とかだったような‥‥‥」
とか?
「不動産以外も経営しているんだ? 会社、いくつあるの?」
先読みした有田が、質問し誘導する。
だめだ。私には出来ない。
「数えたことがないので、沢山としか」
本物の令嬢だ。しかも、数は気にならないのか?
「いいなぁ。ひとつ、くれよ」
前田、楽して人生を手に入れようとするな。
「タローさんは、決まってないんですか?」
突然ここにいないタロちゃんの、話題になった。
やめろ、心臓に悪い。
「聞いてないんだよね。まだ、先の話だし。タロちゃん、のんびりしてるから」
「あいつこそ、どこの大学でも受かるだろ」
有田さんは、よくご存じで。
「タローさんって、すごいんですね。オックスフォードやマサチューセッツ工科大学とか選び放題なんですね」
だから、一人だけスケールが違うって。
でも、タロちゃんならいけるかもしれない。
そうなったら、どうしよう?
外国か‥‥‥考えたこともなかったな。
「ついていくの大変だから、国内にしてあげてよ。ねっ!」
有田~っ。
「すいませーん。アイスティー、おかわりください」
前田、助かったよ。お前も大物だ。
このメンツ、やはり侮れないな。




