表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/17

第十一話

 里美が項垂れている。


 どうやら結末が出てしまったようだ。




 タロちゃんは、震えている里美の肩に手を回そうとして、ためらっている。


 夜景スポットじゃないけど、京都の夜も明るかった。


 人影はないけど、高校生の男女がいても注意されない。


 里美、いい場所をえらんだね。大切な思い出の場所になるんだものね。




「こらっ、のぞき見は、ダメだろ」


 声を掛けられるまで、前田が隣にいたことに気づかなかった。


「まあ、心配だよね色々」


「私、久しぶりにタロちゃんに怒りを覚えたかも。もうちょっと、里美に優しくしてあげても‥‥‥」


「何か、声を掛けてるかもしれないぜ。それに、女の子を優しく抱きしめる高校生なんているか? それ、アイドルがやってるドラマの中だけだよ。いないよ。あんたの好きな『タロちゃん』は、そんな自意識過剰な奴だったか?」


 妙に納得してしまった。


 タロちゃんは、自分が抱きしめたら相手が喜ぶなんて、絶対思わないよね。




「それで、何で前田がいるの?」


「何でかね。別に有田にそそのかされて来たわけじゃないよ。私も、何か分かっちゃったから」


「‥‥‥」


「新幹線の座席、隣に誘ったときすぐにOKしてくれたでしょ。あんたらちょっとギクシャクしてるのかなって。まあ、私にとって都合がいいから誘っただけだけどね」


 タロちゃんが、里美に触れることなく離れていく。


「でも、ここまで来たのは、やはり有田にそそのかされたからかな。有田に言わせれば、私が適役なんだってさ」


「‥‥‥」


 タロちゃんが諦めたみたいに、里美から一歩下がる。


 気になったが、前田の顔を見ることが出来ない。


 タロちゃんと里美から、たとえ一瞬でも目をそらせなかったからだ。


「あんたじゃ、だめなんだって。里美が本音をぶつけられないし、泣けないから」


「‥‥‥」


「しかも有田より、私が適任なんだって言われたら、ちょっと、気分いいよな。あの有田に勝ったみたいで」




「有田は?」


「部屋にいる。ハナコを巻き込んで、大富豪大会をしているよ。有田とハナコまで消えたら、街中捜索が始まるからね。自分たちで、みんなを引き付けておく算段じゃないのかな」


「‥‥‥」


「有田は有田で自分の仕事をしてるんだよ。里美が一人になったみたいだ。じゃあ、私も仕事をしてくるよ。悪口でも、なんでもただ聞いてればいいんだろ。私は、何も言わないからさ。あとで、なんか奢れよ。私、それに有田、ふたりにな」


 前田が里美の元へ向かう。


「あっ、それとこの後、里美が元気になったら、あいつ色々こき使うからな。それくらい、いいだろ? 私と、その、野球部の。お前も手伝うんだからな。いいな。わかったな」




 里美の元へ向かう前田の後姿を見ながら思った。


 前田は知っていたんだ。


 新幹線で隣の席になったのはこういう意味だったの?


 それとも、有田が全てわかっていたの?




 でも、私じゃ慰められないのは事実だよね。


 いまの里美にかける言葉が見つからない。




 いつか落ち着いて、私の所へ失恋の報告に来たら、いっぱい甘やかしてあげるからね。


 アイスでも、パフェでもなんでも奢ってあげる。


 前田と有田も呼ぼう。ついでにハナコも誘おうかな。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ