第十一話
里美が項垂れている。
どうやら結末が出てしまったようだ。
タロちゃんは、震えている里美の肩に手を回そうとして、ためらっている。
夜景スポットじゃないけど、京都の夜も明るかった。
人影はないけど、高校生の男女がいても注意されない。
里美、いい場所をえらんだね。大切な思い出の場所になるんだものね。
「こらっ、のぞき見は、ダメだろ」
声を掛けられるまで、前田が隣にいたことに気づかなかった。
「まあ、心配だよね色々」
「私、久しぶりにタロちゃんに怒りを覚えたかも。もうちょっと、里美に優しくしてあげても‥‥‥」
「何か、声を掛けてるかもしれないぜ。それに、女の子を優しく抱きしめる高校生なんているか? それ、アイドルがやってるドラマの中だけだよ。いないよ。あんたの好きな『タロちゃん』は、そんな自意識過剰な奴だったか?」
妙に納得してしまった。
タロちゃんは、自分が抱きしめたら相手が喜ぶなんて、絶対思わないよね。
「それで、何で前田がいるの?」
「何でかね。別に有田にそそのかされて来たわけじゃないよ。私も、何か分かっちゃったから」
「‥‥‥」
「新幹線の座席、隣に誘ったときすぐにOKしてくれたでしょ。あんたらちょっとギクシャクしてるのかなって。まあ、私にとって都合がいいから誘っただけだけどね」
タロちゃんが、里美に触れることなく離れていく。
「でも、ここまで来たのは、やはり有田にそそのかされたからかな。有田に言わせれば、私が適役なんだってさ」
「‥‥‥」
タロちゃんが諦めたみたいに、里美から一歩下がる。
気になったが、前田の顔を見ることが出来ない。
タロちゃんと里美から、たとえ一瞬でも目をそらせなかったからだ。
「あんたじゃ、だめなんだって。里美が本音をぶつけられないし、泣けないから」
「‥‥‥」
「しかも有田より、私が適任なんだって言われたら、ちょっと、気分いいよな。あの有田に勝ったみたいで」
「有田は?」
「部屋にいる。ハナコを巻き込んで、大富豪大会をしているよ。有田とハナコまで消えたら、街中捜索が始まるからね。自分たちで、みんなを引き付けておく算段じゃないのかな」
「‥‥‥」
「有田は有田で自分の仕事をしてるんだよ。里美が一人になったみたいだ。じゃあ、私も仕事をしてくるよ。悪口でも、なんでもただ聞いてればいいんだろ。私は、何も言わないからさ。あとで、なんか奢れよ。私、それに有田、ふたりにな」
前田が里美の元へ向かう。
「あっ、それとこの後、里美が元気になったら、あいつ色々こき使うからな。それくらい、いいだろ? 私と、その、野球部の。お前も手伝うんだからな。いいな。わかったな」
里美の元へ向かう前田の後姿を見ながら思った。
前田は知っていたんだ。
新幹線で隣の席になったのはこういう意味だったの?
それとも、有田が全てわかっていたの?
でも、私じゃ慰められないのは事実だよね。
いまの里美にかける言葉が見つからない。
いつか落ち着いて、私の所へ失恋の報告に来たら、いっぱい甘やかしてあげるからね。
アイスでも、パフェでもなんでも奢ってあげる。
前田と有田も呼ぼう。ついでにハナコも誘おうかな。




