第十話
京都に来てるのに私たちが入ったのは、結局ハンバーガーショップだった。
夕飯を食べた後なので、ポテトをシェアしてそれぞれ飲み物をたのんだ。
「結局、ここになるんだよね」
この辺りは繁華街じゃない。
高校生が泊まる旅館のそばに、歓楽街はないんだよね。
学校も分かってらっしゃる。
里美は気まずそうにコーラを飲む。
ポテトには手を付けていない。
私は、ポテトを銜えながら里美が話してくれるのを、ただ待っていた。
「ごめんね‥‥‥」
「なに? 謝るようなこと、したの?」
「これからするんだ」
「‥‥‥」
「私、ずっと応援してきたの。これからも、ずっと応援するつもりでいたんだけど‥‥‥何だか、苦しく、なっちゃって」
「タロちゃん?」
里美が頷く。
「私、振られていないことに気づいちゃったんだ」
そうだった。里美は、その前にタロちゃんをあきらめたんだ。
「そうだよね。告白してないもんね。まあ、私もしていないんだけど‥‥‥」
「それでね、私、けじめをつけようと思うんだ。振られて、その、それで、ちゃんと私、諦めようって‥‥‥」
ここまで言って、里美はコーラを飲みほした。
カップに、氷だけが残った。
里美はストローで残された氷をつついている。
そうだった。
始まる前に里美が身を引いたから、里美とタロちゃんは、まだ何も始まっていない。
タロちゃんは里美の気持ちを知らないままだ。
私も、里美がこんなに引きずっていたなんて、思わなかった。
「ごめんね」
里美が、また謝る。
溶けた氷で、少しだけ茶色になった水を里美がまた飲み干す。
私はどうしたらいい? どうしたらいいの?
里美の告白を止めさせることはできない。それは、フェアじゃないって分かってるから。
「振られたら、今までみたいに、ちゃんと‥‥‥二人の事、私、応援するから」
そんなこと言われたら‥‥‥
「ごめんね」
「もう、謝らなくていいよ。里美は悪くない。悪くないよ‥‥‥でも、私もごめん。応援できないや」
「わかってる。私より、ずっと長い間思ってたもんね。それを知ってるのに‥‥‥私が、幼馴染の恋路をじゃまする、悪い‥‥‥」
私は里美の手を握った。
これ以上言わせちゃいけない。
「言わなくていい。いいから」
「‥‥‥」
「それに、告白を止めさせたら、私が意地悪な、血のつながらないお姉さんになっちゃうじゃない。あれっ、継母だったかな」
「‥‥‥」
里美は、笑ってはくれなかった。
「それで、いつ、告白するつもりなの?」
「京都にいる間に、しようかなって」
店内の音が聞こえなくなった。
「‥‥‥分かった。応援できないけど、邪魔は絶対しないから。それだけは、安心して」
私は里美の手を、さらにきつく握り締めた。
「ありがとう」
「うん‥‥‥」
「‥‥‥」
里美がクスっと笑った。
「えっ?」
「手、べたべた」
そういえば、ポテトを何度もつまんでいた指だった。
私も笑った。




