第1章⑥ 花を売る少女とフレーデグラフ
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[前回までのあらすじ]
港へ怪しい荷物の確認に赴いたフレーデグラフ。
しかしながらすでに消えており情報は何も得られなかった。
主に怒られるなと考えながらの帰路の途中、出店が立ち並ぶ一角で、籠をもつ少女の出会う。
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自分の半分に満たない年齢だろう。
痩せ細り肌も髪も艶がなく健康的とは言えず、身に纏う服も随分と色褪せていた。
手にした籠にはどこで摘んできたのか、色とりどりの野花が詰められている。
花売りにしてはあまりにも素朴すぎるのか、フレーデグラフ以外に足を止める者はいなかった。
稼いで来いと親にでも言われたのだろうが視線は地面に落ち、売り子の声は全くない。
数えきれない日をこうやって無為に過ごして来たと一目で理解した。
「お花をもらえるかな?」
しゃがんで視線を合わせたフレーデグラフが籠を指さす。
どうしても見過ごせなかったのだ。
いったいいつ振りの客なのだろうか、驚いた少女が礼さえ言えずに立ちすくんでいる。
「黄色の花と……その濃い紫の花もくれるかな?」
少女が2本の花を抜き出し手渡そうとしたので、もっとたくさん買って欲しいんじゃない?、と問う。
そんな事を言われたのは初めてで、困りながら何本もの花を汚い紙に包む少女。
その指先は荒れて瘡蓋だらけだ。
自分の指先を見ると毎日の水仕事で同じようにあかぎれ、むず痒さを思い出した。
働いている証だと思いながらも、恥ずかしくて指を握りこんで隠してしまう。
籠が少し軽くなるくらいの量を受けとったフレーデグラフが、少女に銅貨を4枚手渡す。
「これで足りるかな?」
相場より多い代金に少女が戸惑いながらも頷いた。
「辛いだろうけど頑張って。
この国は稼ぐ力さえあれば生まれ変われるから」
一言思いを残し、ばいばいと手を振って立ち去る。
余計なお世話で、余計な自己満足だったかと少し後悔しながら数歩進んだ時、少女の声がフレーデグラフの後ろから聞こえた。
それは消え入りそうに小さかったけれど、意思が通っていた。
「お花どうですか?」
通りを歩く人に何度も何度も諦めずに声をかけ続ける。
振り向いて抱きしめたい気持ちを抑えて、フレーデグラフが前へ進む。
名家のお屋敷に生まれ、飢えることも凍えることも知らぬ自分ではあるが、自身の足で立って進むことの困難は知っている。
大きなお世話だとわかっていても声をかけずにはいられなかった。
どちらにしても主への手土産は欲しかったし。
言い訳を胸中で繰り返す。
しかしながら、どう考えても銅貨2枚で十分だったよなと少し自分の甘さに反省もした。
せめてあのお金が今晩のパンになり、少女のお腹を満たすことを願う。
頭の中を切り替え、季節の変わり目の過ごしやすい気候の中を歩く。
心地よい風とそれに乗る花束の香り。
このままお気に入りの喫茶店で好きな茶葉の紅茶を楽しみたい。
なぜ今が休日ではなくお使いの途中なのかと、不幸を少し恨みつつ坂道を上って屋敷に到着すると、裏手の勝手口から中に入る。
そこはメイドたちの休憩場所でもある水場なのだが、似つかわしくない人物が椅子に座って菓子を食べていた。
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