第1章③ 軍事国家の嫌がらせに悩むお嬢様
【毎日更新】フォローして更新をお待ちください
[前回までのあらすじ]
コルネリアは社員と来賓室で話をするが、どうやら大きな問題が起こっているとのことだ。
-------------------------------------------------
「それでは本題に入りましょうか」
コルネリアの催促に、今まで沈黙を守っていた格下の男性が口を開く。
報告などの面倒なことは人任せかと上役を少し見下した。
「実は異質な荷物がここのところ増えております」
差し出された紙を受け取り一瞥する。
彼らが担当している商船には遠くの国よりたくさんの荷物が届く。
それらに毎回いくつかの異常な重量の物が紛れ込んでいるらしい。
とりわけ丈夫な木材で作成された大型の木箱であり、人力での対応ができず毎回馬を使用している。
それにより本来より時間がかかってしまい、運航に支障が出始めているらしい。
全てを察したコルネリアが眉間を抑えた。
「どうみても嫌がらせね」
「間違いないかと」
荷主はマルクトに隣接する軍事国家ラートだ。
長年友好国だったのだが、近年問題が発生してその関係も危うくなっている。
海を持たない国故に荷の出入りをハンデル=ブルーム家に頼っているのだが、どうも最近はこういう子供じみた問題が頻発している。
「書類には軍用の機密荷物と記載されているのですが」
「中身は石でも詰めてるのでしょうね」
蓋を開けて悪事を暴いてやりたいところではあるが、会社の信用問題としてそうもいかずに現場は困り果てていた。
このレベルの問題になるとマルクト政府とラート軍部の和解以外に解決方法が考えつかない。
「昨日は約1,000kgの箱が30ほど」
「……まったく我が社の社員になんてことを」
コルネリアは薄っすらと怒りの雰囲気を漂わせた。
「手間をかけるわ。
荷積み部門に人を補充するように伝えます。
体の負担が大きいでしょうから、休みの時間を延ばして怪我だけは絶対に防いで」
それだけ言うとコルネリアが深く頭を下げた。
雲の上を通り越した、まさに住む世界の違う令嬢の謝罪に二人の男が息を飲む。
「貴方たち社員はハンデル=ブルーム家の宝です。
迷惑をかけますがどうか宜しくお願いします」
床を見つめたままそれだけ伝えるとゆっくりと元に戻り、申し訳なさそうな儚い微笑みを浮かべた。
社員二人から小さな感嘆の声がもれる。
それからいくつかの打ち合わせと、軽い雑談を行った後に解散となった。
「フレーデグラフ、お二人を下までお見送りして」
「承知しました」
主人に一礼をして客人を室外へ促す。
廊下を歩きながら、メイドではるが家柄が違いすぎる少女に、どう話しかければいいのかと男たちが悩む。
「本日は主が遅れてしまい失礼しました」
それを察したフレーデグラフから声をかけた。
ともすれば自分の子供よりも幼いのだが、その立ち振る舞いには隙が無い。
言葉を選びながら慎重に返答をする。
「とんでもありません。
御高名は常々聞いていましたが、本当に素晴らしい方で」
ええそうでしょうと、フレーデグラフが自慢げに目を細めた。
それを見られるのが嫌で、一歩だけ二人より前を歩くことにする。
玄関まで案内すると別のメイドが立っており、大きな紙袋をフレーデグラフに手渡してきた。
「本日はお忙しいところありがとうございました。
こちらは東方の国から仕入れた菓子です。
コルネリア様がぜひ皆様でお召し上がりくださいと」
お荷物になり申し訳ありませんが、そう一言付け加えて贈る。
再度感嘆の声を上げた男ふたりは、すっかり上機嫌で屋敷を後にした。
その背中が見えなくなるまで直立不動で見送ってから、フレーデグラフが来賓室へと戻ると、いつも通り声をかけてから扉を開けた。
【毎日更新】フォローして更新をお待ちください




