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ポンコツAI『マンジュウ』と遊ぶVRMMORPG  作者: マッチョ増田
第0章 デスゲームに巻き込まれ……なかった

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「えっと、もし良かったら、戦い方を教えてくれませんか?」


「え? あー……はい、まあ基礎くらいなら……」



 ディナンにわざわざ二十個ものアイテムを獲ってきてもらうのは申し訳ないが、教えてもらえれば自分で獲ることができる。そのほうが迷惑度合いでいえば、多少マシだろうと思った。

 栗栖は草原の中で、ディナンから基本的な戦闘のレクチャーを受けた。

 まず、初期設定ではオフになっているアイコンの表示だ。プレイヤーは◎、モンスター、魔物などの戦闘可能エネミーは▽、それ以外のNPCなどは◯のアイコンで表示する設定があるので、それをオンにする。その他、視界の中にあると便利なのは自身のHP、MP、TPというものだ。ヒットポイント、マジックポイント、タフネスポイントというらしい。その表示もディナンの勧めでオンにした。



「クリスさんは、たしか道士でしたよね。道士は物理戦闘では、棒術や棍、あとは手甲の装備で拳術を使うことができますが、何か武器は持っていますか?」



 栗栖は武器となりうるものを何も持っていないので、首を横に振った。もしかしたら、一万トルで買わされた酒の瓶が武器になるかもしれないが、おそらくゲーム上そういうものは使えなくなっているような気がした。



「では、これを使って下さい。これならレベル制限なしで装備できるので」



 栗栖の前にトレードの画面が表示される。指で受け取るを押すと、目の前には、手のひら大の鉄に穴がいくつか開いている、シンプルなメリケンサックがあった。鈍色に光るその武器を指に嵌めると、ピコッと音が鳴り装備変更の通知が来る。



「魔法系の武器は、すいません、私は持っていないんです」


「え、いや、そんな……これ貰えるだけで十分っちゅうか、それも申し訳ないんで、あとで返します……」


「ああ、いえ、それはナックル系の初心者装備なので、私は使わないので持っていて下さい。丸腰は危険です」



 ディナンがそう言うので、栗栖はそれに甘えることにした。もし、一週間以内に何かお返しができる機会があればそうしようと考えて。



「初期スキルは何がありますか? 二連撃か、もしくは足技の強脚があると思うんですが」


「えっと、酔拳っていうやつですわ」


「……酔拳ですか。だから先ほど何か食べていたんですね。あれはお酒の成分が入った食べ物ですよね?」


「たぶん……? 商業ギルドで買うた、白酒マンっていうやつ」



 ディナンが言うには、酔拳は初期スキルでは比較的珍しい部類のものらしい。発動には酒か、酒の成分が入ったものを食べなくてはならない。また、酒精を身体に入れるとタフネスポイントと呼ばれるTPが二倍の早さで消費されるが、その分酔拳では攻撃力や回避能力は初期スキルでもかなり高いそうだ。TPが切れると先ほどのイッカクウサギと戦闘をしていた栗栖のように、動きが鈍くなり息切れする。TPは一定時間で回復するが、一度ゼロになると半分回復するまでは身体が重いままだとか。



「酔拳は使いこなせば強いのですが、初期レベル帯だとプレイヤーのTPが少ないので、どうしても使いにくい部分があります。どちらにせよ、イッカクウサギ程度なら倒せるようにはなっていますので、ちょっと試しにイッカクウサギにスキルを打ってみましょうか」


「わかりました」


「もしうまく当たらなくても、落ち着いて避ければ敵の攻撃は当たりません。当たってしまっても、私がポーションを投げるので安心してくださいね」



 栗栖は感動した。見ず知らずの栗栖に、こんなに丁寧に教えてくれる人がそうそういるだろうか。なんて親切な人なんだろう。マンジュウはディナンを見習ってほしい。

 栗栖はディナンの指導を受け、もう一度イッカクウサギと対峙した。スキルの発動は、メニュー画面からボタンを押す方法の他、姿勢発動や視認発動の他、意識サポートでの発動もできるそうだ。

 酔拳を強く意識すると、栗栖の身体がゆらゆらと揺れ始める。後ろ足を鳴らして突進してくるイッカクウサギを紙一重で避け、そのまま首元に拳を振り下ろした。そういう動きが正しいと感じた。二度目の突進でも同じようにしたとき、イッカクウサギはポリゴンになって消え、そのあとには短毛の白い毛皮が一枚落ちていた。



「いいですね。酔拳は初期スキルでは珍しい、固定動作型ではないスキルなので、使い込めば使い込むだけ動きやすくなっていきますよ」


「おお、なんかすごい動ける気になる。スキルってすごいんやなあ」


「ただし、TP切れに注意しないとすぐに動けなくなります」



 連戦には向かないスキルだとディナンは説明した。栗栖のTPは、先ほどのイッカクウサギとの戦闘で三分の一ほどまで減っている。たしかにこのまま連戦するのは厳しいだろう。

 ともあれ、ひとまず毛皮を一枚手に入れたので、この調子でイッカクウサギと戦えばマンジュウが言っていた毛皮十枚、モモ肉十個は手に入れられるだろう。

 栗栖はそこからイッカクウサギと沢山戦った。街の城壁に近い草原を行ったり来たりしながらイッカクウサギの毛皮とモモ肉を狩った。白酒マンの酒精の効果は三十分ほどで切れたので、二個目を食べてさらに戦った。そのうちに、酔拳の使いかたにも慣れてきた。カウンターのダメージが一番大きいが、自分から仕掛けることもできるし、イッカクウサギの突進をいなす動きも慣れればできるようになった。その戦闘のひとつひとつを、ディナンは根気強く見守りながら助けてくれた。




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