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「安心してほしい。必ず僕たちがこのデスゲームを終わらせてみせる!」
ゲームをある程度やっている人の場合、この金髪男のような、いわゆるロールプレイ型のプレイヤーを少しは理解できただろう。そういうふうにゲームを楽しんでいる層は一定数いるものだ。だが栗栖にはゲームの知識はあまりなかった。なかったので、この金髪男を(イタイ系の人やわ……)と思い、二歩後退った。そしてUターンをして、大通りへと戻っていった。金髪がイタイ系なら、その周囲の人もだいたいイタイ系だろう。
「関わらんとこ」
そもそも放っておいても、現実時間の三時間、ゲーム内時間で一週間を過ぎればサーバーからは出られるし、実際はデスゲームでもない安全なゲームなのだ。何かのバグだろうが、それで身体に危険が及ぶようなこともないならば好きにすれば良いだろう。
それよりも栗栖には気になっていたことがあった。現実時間で三時間が、ゲームの中では一週間ということは、この仮想世界では時間が加速しているということになる。マンジュウは思考の加速がなんだとか言っていた気がするが、技術的なことは栗栖にとってはどうでもいい。要は、このゲームの中ならば現実時間三時間で、一週間分の映画やドラマやアニメが見れるということだ。睡眠が必要なのかは分からないが、それはなかなか魅力的なことだと思った。何せ時間に追われて動画を倍速視聴する必要がない。
「ということでマンジュウ」
『はい、スナメリ クリス様。本日はどうされましたか?』
「このゲームの中で、ネトプリは見られへんの?」
『ゲーム内でのネットプリックスの視聴ですね。ではディシディア・ネリス・オンラインの攻略サイトを検索します。 ……検索完了。はい、ディシディア・ネリス・オンラインはネットプリックスに対応しています。特定の場所での平面視聴が可能です』
「おおっ! じゃあ、その方法教えて」
『ではスナメリ クリス様の現在の状態から最適な手順をご案内します。まずは基礎レベル、メインジョブ、メインジョブレベル、サブジョブ、サブジョブレベルを教えて下さい』
「ええっと、基礎レベル1、メインジョブ? たぶん道士、サブジョブは奇術師、どっちもレベル1」
その他、所持スキルや魔法、所持品や所持金も聞かれたので答えた。所持金は、なんと五万もあった。しかし円ではなく、トルという謎の通貨だったが。
「あのー、すいません」
「ん?」
『ではご案内します。まずはマップを開いてください。マップはメニューボタンを開き、右上にある羊皮紙のマークを視覚選択、もしくは指でタッチして開けます』
「え、え?」
マンジュウと話している途中で声を掛けられ、栗栖は振り向いた。そこには、光に透けるような薄い水色の髪をした、穏やかそうな顔立ちの男が立っていた。
「よければ少しお話を伺いたいんですが。さっき、広場でアフォガードさんに何か言いかけてましたよね? それで……」
『マップの現在地を確認いただき、そのデータを私に共有してください。必要なルートをナビゲーションさせていただきます』
「あー……っと」
『現在地から真っ直ぐ通りを進んでいただき、酒場横丁を右に進んで下さい。そのあと、【麦が違う酒場】という店の前を通り、店内から外を見ている男性NPCと目を合わせながら通り過ぎて下さい』
栗栖は聖徳太子の半分の半分の半分しか話を聞く能力が無いので、マンジュウの話を聞きながら知らない男の話も聞く、ということはできなかった。なのでさっさと諦めることにした。
「ごめん、あとでもええ?」
もちろん男に向かってそう言った。栗栖にとって知らない男と話すより、何縛られることなくネットプリックスで一週間映画を好きに観られることのほうが大事だったからだ。
水色の髪の男は、少しだけ驚いたような顔をしたが、その後は困ったように笑った。
「今ちょっと、取り込み中やねん」
「ええっと……では、終わるまで待ちます。私はディナンといいます」
「あ、ご丁寧にどうも。僕はクリスていいます」
水色の髪の男、ディナンは物腰柔らかく頭を下げてきたので、栗栖も丁寧に返事をした。なんとなく年上のような気がした。そのあと、用事が終わるまで付いて行っていいか聞かれたので、良いと答えた。はじめは待ち合わせと言われたが、待ち合わせをしても栗栖には辿り着ける自信が無かったので、断ったのだ。
「えーっと、【麦が違う酒場】やったっけ」
知らない男を後ろにつけながら、栗栖は大通りを進んだ。マンジュウのナビゲーションのとおり、酒場横丁を右に進み、【麦が違う酒場】という店の前を通り過ぎながら、ドアを覗き込んでこっちを見ている老人と目を合わせながら通り過ぎた。その後は商業広場にあるという、商業ギルドへと向かう。
商業ギルドと呼ばれる場所は、広場のなかの一番大きな建物で、門番のようなNPCまで立っている厳重な場所だった。中は広くカウンターが設置されていて、人の出入りが多い。空いたカウンターのひとつへととりあえず向かった。栗色のショートヘアをした、兎の耳が付いた制服の女性が座っている場所だ。




