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「え……誰?」
『私はハードウェアナビゲーションAIのマンジュウと申します。初期設定後72時間、あなたのVRライフをサポートさせていただきます。ナビゲーションAIは72時間で自動的に停止となりますが、再開はシステムパネルより設定していただけます。本日は、何をお知りになりたいですか?』
栗栖はマンジュウという名前の音声ナビが質問に答えてくれることを、二度目の自己紹介で理解した。
「じゃあ色々聞きたいんやけど、今俺はデスゲーム? っちゅう状態なんか?」
『スナメリ クリス様の現在の状態は、フルダイブ型VRMMORPG、ディシディア・ネリス・オンラインにログインしています』
「あ、やっぱりこれ、アニメとか映画じゃなくてゲームなんや。でも俺、ゲームなんか開始した覚えないねんけどな」
『スナメリ クリス様の現在の状態は、フルダイブ型VRMMORPG、ディシディア・ネリス・オンラインにログインしています。操作ログをお調べになりますか?』
「あ、いいです……」
栗栖は少しだけ思った。マンジュウこわい、と。
だがマンジュウに色々と質問をするうちに、だいたいの状態は把握できた。
栗栖は今、ハードに初期で内蔵されていた無料体験版のディシディア・ネリス・オンラインというゲームにログインしていて、決してネットプリックスで体験型アニメを視聴しているわけではなく、また、そんなものは今までに一度も配信されていない。
「じゃあその、ゲームがログアウトできへんっていうのは?」
『お調べしたところ、現在のサーバーはクリスマス特別サーバーのようですが、ログアウトは可能なようです。メニュー画面の右下にある、電源マークがログアウトボタンになります』
「く、クリスマスぅ?」
今は6月だ。クリスマスには早すぎるし遅すぎる季節だった。そしてマンジュウの指示の通りにメニュー画面を開いて操作しようとするも、うまくいかない。
「なんか、電源のマーク押したら文字化けしてて進まれへんねんけど」
『バグかもしれませんね。他の方法でログアウトできるかウェブ検索をしますので、しばらくお待ち下さい』
「やっぱり、この角はトナカイの角やったんか~」
クリスマスのパーティグッズだと思ったのは正解だったようだ。だがそれにしても、この安っぽい質感まで丁寧に再現されているところは凄い。
『スナメリ クリス様、お待たせしました。ログアウトのリンクをお伝えします。まずはメニューボタンの左下、設定を押して下さい』
「はいはい」
『次に一番下のその他、その後は一番上のバージョン確認、そしてその一番下に法的表示、その233行目にあるリンクを押していただきますと、約款が出てきますので約款の8項目目にある、ログアウトを押して下さい』
「お! ログアウトしますか? はい いいえ が出てきた! いや~やっぱりデスゲームなんて実際には無いもんやなあ」
『ですがよろしいのですか? フジマルテクニカに提出されている資料によりますと、クリスマス期間限定サーバー、【クリスマスです!ゲーム三昧!】内からは、一度ログアウトすると同じサーバーに復帰ができません。イベント失敗ということになります』
マンジュウがいうには、このバグがあるクリスマスサーバーはゲーム内で一週間、現実時間では三時間の期間限定のものであり、ログアウト、もしくはゲーム内でのデスなどでサーバーから弾かれ、リタイアとなる仕様になっているそうだ。
ふとそのときに栗栖は思った。他の参加者は、このことを知っているのだろうか。あの監獄という場所にいた人たちは、これがオンラインゲームであるなら、NPCではなくプレイヤーだろうと思われる。意欲的に攻略しようとする人もいれば、怯えて蹲っている人もいた。そういう人たちに、ログアウトの方法があることをひと声掛けてあげたほうがいいかもしれないと思った。
「じゃ、もうちょっとゲームやってからログアウトするわ。マンジュウ、また呼んでもええ?」
『では私が必要な時はマンジュウとお声がけください』
栗栖はマンジュウとの会話を終えると、噴水のある広場まで戻った。怯えていた人たちならば、まだあそこにいるだろうと思ったからだ。一人か二人に話せば、あとはゲーム的な繋がりで広がっていくだろう。栗栖はあまりゲームに詳しくないので、ゲーム的な繋がりが具体的にどういうものかは、分からなかったが。
「ヒーラーとタンクはペアでパーティを組んでほしい! アタッカーは組み合わせによるが、物理一人、魔法一人は必ず入れておいたほうがいいだろう! 初心者エリアとはいえ何があるか分からない!」
栗栖が広場に戻ってきたときには、そんな演説をする男が噴水の前に立っていた。輝くような真っ白な鎧と、それ以上に輝いている歯が印象的な金髪の男だ。そんな男の周りには様々な格好をした男女が集まっていて、なにやら男の話を聞いたり、近くの人と話したりしている。
栗栖はちょうどいいと思ったので、演説をしている金髪の男へと近付いていった。
「あの~、すんません」
「アイテム類の補充は大通りのテルンの店が一番品揃えが良い! それと、バッファーとデバッファーについてだが……ん? 君も参加するのかい?」
「え? あの……いや……」
「ジョブは何かな? プレイヤー相性もあるかもしれないが、まずはジョブのシナジーを優先したほうがいいと思うんだがどうだい?」
「ぇえっと、ジョブは道士? やけど、そうやのうて……」
「道士? それは一次ジョブではないかい? 悪いけれど、ここはカンストメンバーでパーティを組んでいるんだ。二次ジョブ以上が望ましい。何せデスゲームだからね。君は安全な街の中にいたほうが良いよ」
「はぁ……」
栗栖は大阪人だが、不意打ちの押しにはあまり強くなかった。




