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ポンコツAI『マンジュウ』と遊ぶVRMMORPG  作者: マッチョ増田
第0章 デスゲームに巻き込まれ……なかった

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 光の玉とは別のアナウンスが聞こえたかと思うと、すぐに視界が暗転し、別の場所へと変わった。先ほどいた土のコロッセオとは全く違う、石畳の広場だ。中央に小さな噴水があり、日光が強く栗栖には少し眩しく感じた。周りに集まっている人はそのまま皆移動してきているようだ。



「これは……アレやな。昔のアニメのアレ」



 栗栖は知っていた。昔こういうアニメをネットプリックスで観たことがある。主人公はゲームの中に囚われて、ゲーム内で死ぬと現実でも死んでしまう、デスゲームというものに参加させられ、ゲームを攻略していく話だった。



「しかしよくできてんなー、体験型アニメっちゅうん? 技術進歩って凄いんやなぁ」



 周りの建物は石造りで重厚な雰囲気があり、実写セットのようでいて、どこかアニメのようなポップさやファンタジックな雰囲気もある。ゲームの世界だと言われても納得するだろう。栗栖は感心するようにひとつ頷き、広場から大通りへ向かって歩き出した。周りにいたひとたちが、いくつかのグループに別れてそれぞれどこかへ向かって歩き出したからだ。これは解散の流れだろうと理解した。



「でもおかしいな~、まだVRでネットプリックスの起動してなかったはずやけど」



 いつの間に体験型視聴をしていたのか、と栗栖は疑問に思った。疑問に思いながら、街をブラブラと散策していた。大通りは人が多く、馬車の往来もある。店も並んでいるが、よくわからない文字と知らないマークの看板ばかりなので、入るのは躊躇われた。日本語を話しているのに文字が読めないのは、とりあえず気にしないことにした。

 そうしてぶらぶらと歩いていると、視界の左下が点滅しているのに気付く。円形の青く光るアイコンだった。それをじっと見ていると、目の前にアイコンから自動で画面が飛び出してきた。



「うおッ、なんやぁ?」



クリス・スナメリ:LV.1


メインジョブ:道士Lv.1

サブジョブ :奇術師LV.1


スキル:

酔拳


魔法:

仙術



「……」



 栗栖はここで少し考えた。いくらなんでも、VRヘッドギアを起動しただけで急に体験型アニメが始まるわけないのではないか。しかしそれならば、VRヘッドギアを起動しただけでゲームらしきものが始まるのもおかしいのではないか? そもそもゲームだとして、道士や奇術師なんていうジョブが存在するのか? クリスのゲーム知識では、剣士、魔法使い、僧侶くらいしかジョブは思いつかない。それにスキルや魔法の欄に書いてある酔拳や仙術もよく分からなかった。



「うーむ、わからん……しかも名前、本名やしな。街の人間が日本語喋ってんのに、欧米式やし。日本語圏やったらスナメリ・クリスでええやろ」



 そう言った瞬間ウィンドウの前に手のひら大の箱が現れた。緑の包装紙に赤いリボンが結ばれている立方体で、見るからにプレゼント用の箱だ。その箱に触れると、ポンっという音を立ててメッセージカードが出てくる。



『おめでとうございます! 攻略キーワード発声を確認しましたので、報酬をプレゼントします!』



 メッセージカードとプレゼントの箱が消え手元に残ったのは、鹿の角……の付いたカチューシャだった。年末近くになると、謎の雑貨屋などで売られ始めるような、いわゆる季節モノのパーティグッズだ。



「いやいやいや、何? ナニナニ? ……わからん!」



 栗栖はデスゲームでは混乱しなかったが、謎のプレゼントでは混乱した。タダより高いものは無いと思っているからだ。

 だがしかし混乱した栗栖は、とりあえず考えるのを止めた。あまり深く考えるのが得意な男ではなかった。手に持っている鹿の角カチューシャは邪魔なので、頭に付けた。三本ヒゲのピンクの豹男だ、今さら角が生えていても変わらないだろうと思ったのだ。そして街を見て歩くのを再開した。

 大通りから伸びている道に入ると、屋台や露天がたくさんある広場を見つけたので、そちらへ進んだ。野菜を売っている荷車の店や、肉を売っている屋台、それに、よくわからない雑貨を売っている、絨毯を敷いた露天。どれも見て回るだけで楽しかった。串焼き肉や酒らしきものを売っている店では、匂いまで感じることができるので何度も立ち止まった。

 いくつかの食べ物を売っている店を見ていたが、その中で栗栖の興味を殊更引いたのが、一軒のお菓子の屋台だった。真っ白な丸い形状だが、漂ってくるハチミツの香りから、甘いものだと分かる。質素な格好の女の人が売っているが、接客をしている話からすると、どうやらハチミツパンだということだった。



「ハチミツパンっちゅうか、見た目は饅頭やな」



 どう見てもパンには見えない。真っ白だが質感がパンではない。そしておはぎよりも小さく団子よりは大きいので、そう呟いていた。

 その瞬間、ピコン、と小さな機械音が鳴った。



『スナメリ クリス様、こんにちは。本日はどうされましたか?』



 設定のときに聞いた声だった。




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