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「いったい何やったんや……なんちゃらオンラインのゲーム時間がなんとか……」
蹲っていた身体を起こせば、そこは大きな広場が石の壁に囲まれているような場所だった。石の壁の向こうには席のようなものがあり、サッカーや野球のスタジアムに近い形状なのが分かる。栗栖はこれを知っていた。
「コロッセオ……?」
地面は土の感触がある。下を見れば、栗栖は黒色の薄い布の靴を履いていた。手の甲や足の甲は色白で、立ち上がった時の視界は、いつもより少しだけ低い。あのピンク色の豹のアバターが自分になっていたのだ。
「なんか凄い綺麗やなぁ」
「おめでとうございます! あなたは666人目の参加者です!」
「んん?」
「あなたが最後の参加者です。つきましては説明をおこないますので、今一歩前へお進みください」
「なんのこっちゃ」
栗栖はそう言いながらも、コロッセオの中央に向かって歩いた。さきほど周りを見た時に、そこに人だかりがあったからだ。
声が言うには、栗栖を含めた666人の参加者とやらが集まっているのだろう。なんとも縁起の悪い数字である。
コロッセオの中央には変わった服装の男女が集まっていた。所謂ゲーム的な服装、ファンタジックな服装だ。顔の良い男が乗馬服のように長いブーツにズボンを入れていたり、猫耳の女の子がメイド服を着たりしていた。栗栖は変な格好だなと思ったが、自分の服装を見てその考えを改めた。青緑色のチャンパオ姿だったからだ。栗栖のアバターはピンク毛の豹獣人、もちろん髪もピンクだ。そして某青色猫型ロボットのような三本ヒゲが頬に生えており、顔つきは不細工とはいえないが、イケメンとは程遠い。糸目でいかにも胡散臭そうな風体だ。こんな男がチャンパオを着ていて、誰かに変な格好だと言う資格は……あまり無い、と思った。
栗栖はどこかで、チャンパオを着れば誰でも格好良くなると思っていたので、少しガッカリした。ネットプリックスで観たカンフー映画『ニップマン』の影響だ。
「きっと、これのせいに違いないな。あとで抜いとこ」
栗栖は少しだけ考え、人間の顔に付いている謎の三本ヒゲのせいにすることにした。
『―――ようこそ、ディシディア・ネリス・オンライ…へ。私――は、ゲームマ…ター……P&D――……トッ―ト…チャン……だ』
丁度人の群れの一番後ろに栗栖が来たとき、そのアナウンスは頭上から聞こえてきた。周りの人たちが上を見るので、栗栖も同じようにそうした。すると、コロッセオの上空に大きな光の玉が浮いている。それはずっと見ていても目が痛くはならない、バーチャルな光源だった。そんな光の玉の周りには、崩れたポリゴンのようなものも浮いている。
「なんだバグか」
「運営仕事しろよマジで」
ざわめきの中にそんな言葉が交じるが、栗栖は途切れ途切れの自己紹介が、トットちゃんと聞こえたことに意識を持っていかれた。頭の中に強烈なキャラクター性を持った白柳鉄子の顔が浮かんだからだ。
『この特別…サーバーに選ばれた、666人に、私からの心からのプレゼント…―――と思う』
そしてなんとなく、じゃあこのコロッセオは鉄子の部屋か、とどうでもいいことを考えた。だが、それは隣の隣の隣にいる小さな女の子のアバターの発言で否定される。
「ログインしていきなり監獄にブチ込まれたと思ったらさぁ、いきなり何なの? アタシ別に不正アクセスとかPKなんてしてないんだけど」
「アンタはハラスメントでしょ」
「し、失礼ね! するわけないでしょ!」
栗栖はぴーけーというものが何かは分からなかったが、とりあえずここが鉄子の部屋ではなく、監獄だということは理解した。少なくとも、そういう設定だということは。
『これ―…り……一週間だ…の――…デスゲームを―――…楽しんでくれたまえ』
「……は?」
「なに? 急に何なの……?」
『なお、一…でもデス…す…と――、残念な―…らリタ…アとなる。……現実―――――…時……―――も。なお、開始エ…アは、王都ネ…スティア―――……』
「おい、ログアウトできねぇぞ!!」
「え? 何でよ?!」
「知らねぇよ! ログアウトボタンの場所、文字化けしててリンク切れてる!」
「嘘でしょ?!?!」
周囲のざわめきは次第に大きくなり、すぐに悲鳴に変わった。叫びながら目の前に指をかざして何かを突くような仕草をしている人や、地面に座り込んだ人、ぎょろぎょろと周りを見渡して青ざめた顔をしている人……は半分くらいだった。
「ノーデスクリア? 俺カンストしてるからいける気がする」
「俺も。てかネリスティアスタートなら初心者エリアじゃん」
「待ってよ、クリアがどこのエリアまでを指してるのか……」
半分くらいは落ち着いているし、そういう人たちはだいたいすごい鎧を着ていたり、派手な剣を持ったりしている。
『ゲームフィールドに移動します』




