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「もともと王都ネリスティアを舞台にしたイベントクエストなので、難易度はそう高くありません。盾が無くても、本職のタンクたちは回復があればなんとか耐えられる程度のダメージなんです」
「ほうほう、やっぱりベテランさんは違うんやね」
「攻撃や回復は、クリスさんが教えてくださった杖と剣でなんとかなっているんです。ですが……」
ディナンの説明によると、イベント戦闘のフェーズが移行し、カーネルおじさんの無敵フェーズが来たらしい。逐一攻略法をコメントしてくれる教会の神官や巫女たちの台詞からして、上空に浮いている星型の足場の上に立たないと攻撃が通らないのではないかということだった。
「上空って、あの木の上のほうでくるくる回ってる……あの、カーピィの乗り物みたいな星?」
「そうです。ですが、レビテーションやフライの空を飛ぶ魔法を使っても、あの足場に立つことができないんです。神官の台詞では、聖なる角を持つ乗り物が勇気ある者たちを運ぶ、ということで……」
「……聖なる角」
「ハイ……」
栗栖はアイテムボックスに仕舞っていたトナカイの角のカチューシャを装備した。それは紛れもなく、パーティグッズの可愛い角だった。
「聖なる角」
栗栖はディナンの前でドヤ顔をしてみたが、ディナンは苦笑いをするだけだった。
「おっ」
栗栖が角を頭に装備したあと、急に視界が明るくなった。そしてポン、という軽快な音とともにポップアップ画面が出てくる。
『聖なる運搬! 一度に運べる人数は八人です。選択してください』
そんな表示とともに、指差し選択をするアイコンが現れた。
「どうやら運べるみたい。いっかいに八人まで」
栗栖がそう言うと、ディナンは嬉しそうに笑い、礼を言った。
それから栗栖は、立派にトナカイをやってのけた。選抜されたタンク六人、ヒーラー二人をまず、運搬に選択した。トナカイとなった栗栖が空を飛ぶのは、メノウに掛けられたレビテーションの魔法と同じ要領だったので、もちろん栗栖は泳いで空を飛んだ。八人のプレイヤーたちは、その後ろを引っ張られるように飛んでいく。
「ひとつの星に乗れるのは、十六人までやね」
「ならアタッカーが必要」
ヒーラーの先鋒として運搬されていたメノウがそう言うので、栗栖はまた地上に降り、チロルを含めたアタッカーチームを運んだ。その他、武装した顔見知りの製作ジョブプレイヤーやディナン、歯が白い金髪も運んだ。
歯が白い金髪で栗栖が覚えていたキラキラ鎧男であるアフォガードは、しきりに栗栖に謝っていた。どうも彼としては、戦闘に慣れていない栗栖をデスゲームのバトルに連れ出したくない、という一心だったようだが、それを大仰な身振り手振りで説明され、やはり一歩引いてしまった。
「お礼は必ずします、家主さん!」
「いやもう、ようさんもろたからええよ……」
栗栖が何度往復したのか分からなくなった頃、カーネルおじさんのエフェクトがさらに変化した。背中から赤黒いような、黄土色のようなグロテスクな骨と薄い肉がむき出しの、コウモリ羽のようなものを出したのだ。
「骨だけチキンや……さすがにカーネルおじさんもクリスマスはチキン売れすぎて骨だけになってまうか」
「ブフッ」
運搬をしながら栗栖がそう呟くと、後ろの見知らぬプレイヤーが吹き出す。その反応に栗栖は満足し、空中を悠々と泳いだ。
どうやら最終フェーズに入り、キャンディソードやキャンディケインでの攻撃でも、ダメージが通りづらくなっているようだ。けれど人数も多いレイドバトルであり、適正レベルが低いこともあり、このままでも倒しきれる、というのがプレイヤーたちの見立てだった。
そうして間もなく、カーネルおじさんこと聖タンクローゼスは穢れを浄化された。最後の一撃は、空中へ飛び出したディナンの足技だった。キーワードアイテムである奇蹟者のブーツは、どうやらカーネルおじさん討滅戦で攻撃の倍率を上げるアイテムだったようだ。




