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ポンコツAI『マンジュウ』と遊ぶVRMMORPG  作者: マッチョ増田
第0章 デスゲームに巻き込まれ……なかった

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 まったりとした時間のなかで、栗栖は最後に観る映画をネットプリックスで探した。クリスマスイベントの終わりには、ここで映画を観て過ごそうと、デッキを作ってもらったときに決めていた。教会のほうでは、民家よりも高いクリスマスツリーのてっぺんに、強く輝く星のオーナメントが飾られ、そのオーナメントから、まるで雪のように淡い青を纏った白い光が降り注いでいる。



「お、あれが召喚の儀式か。賑やかそうやなぁ」



 ツリーの上空に大きな魔法陣が浮かんでいた。それがくるくると回り、強い光りを発している。栗栖がネットプリックスの画面を片手でスワイプしながら見ていると、その魔法陣から、ツリーの上空に巨大な老人が現れた。

 巨大な老人は真っ白のスーツのような服装をしていて、サンタの衣装とは言い難い格好だが、白い輝きと相まってなかなか神々しかった。



「でもサンタっちゅうよりはカーネル・ヨンダースやな」



 栗栖は外国人の顔の見分けがあまり得意ではなかった。そんな神々しいカーネルが召喚されたかと思うと、なぜか黒い、禍々しい霧に包まれ始めた。



「え、なんか闇落ちしてる」



 闇落ちという言葉は、栗栖にはしっくりきた。淡い光りに包まれた、周辺の建物よりもはるかに大きいカーネルおじさんが、急に黒い闇を纏い、禍々しい形相になっている。獣のような咆哮が響き、その後、おそらく地上からであろう、何かの魔法がカーネルおじさんに向かって次々に飛んでいく。



「あ、イベント戦闘っちゅうやつかな。みんな武装してたしな」



 まさか聖人と戦うために武装していたとは、栗栖は夢にも思わなかった。ディシディア・ネリス・オンライン、読めないゲームである。



「ほな、最後はのんびり劇場版ちいこわでも観て締めよかな」



 ちいこわは幼児向けの可愛いアニメだが、劇場版のストーリーはなかなかこわい。絵がポップなので子供は楽しくみれるが、ストーリーは深読みすればこわくなる。それがちいこわだ。

 遠くで怒号や叫び声が聞こえる中、栗栖はちいこわの再生ボタンを押した。だが、ちいこわを楽しめたのは、最初の四十分ほどだった。



「いた、いたわよ!」



 そんな声が人通りのない歓楽街から聞こえてくる。



「ねえちょっと、そこの……男の女豹!!」


「誰が女豹や!」



 栗栖は思わず立ち上がって突っ込みを入れていた。クリスチャンの駆け込み寺の前には見知った赤髪の少女、チロルが立っていた。



「ん、あれ? イベント戦闘は?」


「アンタの力が必要なの! お願い、協力して!」




◇◇◇




 ―――聖タンクローゼスの召喚は成功したものの、長い信仰の歴史に埋もれた真実と虚像により、聖者は穢されていた。清き心を持つ渡り鳥たちよ、どうか怨嗟の呪縛から聖タンクローゼスを解放してほしい―――。



 教会の偉い人たちの台詞をつなぎ合わせると、そういったイベントになるようだ。

 栗栖はチロルと教会に向かって走りながら、そんなおおよそのストーリーを聞いた。夜になると街で呪いを振りまくテクスチャのお化けがいるのも、この召喚戦闘の伏線なのではないか、という考察がされているらしい。



「それで、なんで僕? 別にレベルも低いままやし、戦闘なんてできへんで?」



 メインクエストを進めるために必要な関係上、製作ジョブを主にしているプレイヤーたちも、戦闘ジョブのレベルがそれなりにある。それは当然今日始めたばかりの栗栖のレベルよりも高いし、技術もそうだ。そんな製作所ジョブプレイヤーも参加しているイベント戦闘なら、栗栖の出番などないはずだ。



「このイベント戦闘には、キーワードアイテムを使って攻撃をしないとダメージを与えられないの。あと、戦闘のフェーズが移行してから、ダメージが通らなくなっちゃって。それでギミック上、どうしてもアンタが必要だって、ディナンが言うから!」


「そ、そうなん? なんもできひん気ぃするけどなぁ」



 栗栖はキャンディケインとキャンディソードを両方持ってはいるが、剣と魔法の杖で戦えと言われると正直、困ってしまう。最悪、スキル無しで剣で斬りつけることはできるかもしれないが、魔法を覚えていない。杖を持っても、杖で殴るくらいしかできそうにない。



「いいからとにかく、合流して!」



 チロルにそう言われたので、なにはともあれ、おとなしく教会前へ向かった。

 教会前の広場では、大勢のプレイヤーが戦闘中だった。イベント戦闘エリアは広場の中だけだが、その光のエフェクトは激しく、街中のどこでも見えるのではないかというほどだった。そのなかで巨大なカーネルおじさんの足から繰り出される攻撃を、鎧を着たキャラクターたちが肉壁として受けている。そう、盾を使っていないのだ。



「クリスさん!」


「あ、ディナンさん。また来ちゃった」


「来てくださってありがとうございます。呼び立ててしまってすみません」


「いや、全然いいよ。もうあらかた映画も観終わってたから。ちいこわ流しながらこのカーネルおじさん眺めてたくらい」



 どうして盾を使わないのかは、ディナンが説明してくれた。どうやら見つかっていないキーワードアイテムのなかに、盾があったようなのだ。そのイベントアイテムでなければカーネルおじさんの攻撃を防ぐことができないようだ。




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― 新着の感想 ―
主人公のまあ知らんけど的などことなく第三者的な距離感が結構好きです。 イベントのことをよく分かってないけれど、結構イベントの中心にいますよね?結構なキーパーソンなのに自覚が…でもド素人だから仕方ない……
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