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ポンコツAI『マンジュウ』と遊ぶVRMMORPG  作者: マッチョ増田
第0章 デスゲームに巻き込まれ……なかった

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「こんにちは。ここはクリスチャンの駆け込み寺で間違いないでしょうか?」


「えっと~……そうですけど?」



 栗栖は突然の事に少し慌てながら返事をした。だが、入店してきた人物がNPCだと気付き、すぐに平静を取り戻した。店舗の出入り口側から入店してきたのは、白い神官服を身に着けた少年だった。装飾のない質素なローブに、フードを被っている。



「良かったです! ここに、聖別された料理が売られているとお告げがあったので、供物として購入できないかと思いまして……」


「お告げ? なんや胡散臭いな……」


「そ、そんなことはありません! 女神は聖タンクローゼスに祈りを捧げることを祝福してくださいます」



 とんでもないことだ、というように栗栖の言葉を否定する少年によると、ゲーム内では信仰はとても大事にされており、神官や巫女は時々女神の神託を授かることがあるのだとか。今回の聖タンクローゼス召喚の儀式では供物が足りていないので、こうして街に売られているものに供物になるものがあれば、お告げを得て神官や巫女が買いに来るという。



「つまり、俺が作った桃ジュースが供物になる?」


「はい、ぜひそちらの【キラキラ桃ジュース・ランダム】を供物として購入させてください」


「……ほな、ここでまた聖別されたモンを売りに出したら、買いに来てくれる?」


「もちろんです! 渡り鳥の方には、ぜひ多くの聖別された供物を用意していただきたいです!」



 少年神官から色々話を聞いたところによると、冒険者ギルドに依頼した聖なる供物は集まりはじめているが、商業ギルドに依頼した品は全くといっていいほど集まっていないらしい。主に冒険者ギルドには魔物素材などを依頼し、商業ギルドには製作された品物を依頼しているということだった。



「商業ギルドに依頼した品々も、ここで購入できれば良かったんですけど……」


「さすがにそれは無理ちゃうかなぁ……」



 何せ栗栖はゲームを始めたばかりの初心者だ。冒険者ギルドと同じような依頼の受注方法なら、上級者用の依頼は受けることもできなければ、作ることも難しいだろう。それに、ディナンの話が正しければ、製作するための設備がある施設自体がバグで使用できないようになっているので、作ることがそもそも難しい。

 そんな話を少年神官に伝えると、残念そうな顔をしながら【キラキラ桃ジュース・ランダム】を買って帰っていった。もちろん、トナカイの角を付けて製作したものだけをピンポイントで選んで。



「おうクリス、ラスティル小麦とトンガリモロコシ、持ってきてやったぜ」


「あ、オジサン」



 少年神官と入れ替わりで、小麦オジサンが店へと入って来た。その肩には、米俵より大きな袋を3つ担いでいる。ゲームでは住人NPCも力は強いようだ。



「ラスティル小麦二袋、トンガリモロコシ一袋、合計で10万トルだ」


「はい、ほな十万ね。思ったより袋大きいなぁ」


「そうか? 卸売りの規格はこの袋だぜ?」



 栗栖はスーパーで売っている小麦粉の袋を想像していたので、思った以上の量がある小麦粉の袋を受け取りながらそう言った。だが、桃一個でコップ3杯分の桃ジュースができるのと逆で、小麦粉一袋でクッキーが三枚しかできない可能性もあると考え、あまり気にしないようにした。そのあたりはゲームバランスの調整などがされているのだろう。

 小麦オジサンは栗栖からお金を受け取ると、また雀卓で会おう、と言って帰っていった。



「さーメリケン粉も手に入ったし、色々作ってみよかな~」



 そう思い、店舗を出て工房へと入ったところで、ピロロロロロ、と通信音が鳴った。フレンドからのコールだった。



「なんや急に忙しないな~……はいはい、もしもし?」


『クリスさん、こんばんは。今少しお話できますか?』



 もちろん栗栖にはフレンドが一人しかいないので、相手はディナンだった。ディナンは穏やかな声で、栗栖の都合を聞いてくれる。出来た人間である。



「映画は観てなかったから大丈夫」


『良かったです。それで、先ほどメールを頂いた件なんですが』



 栗栖はメールで伝えた、飴の武器を道具としてクラフトをすると聖なる供物として納品できる可能性について改めてNPCに聞いたことを話した。それと合わせて、たった今品物を神官が買っていき、供物になることも言っておく。



『すこしそのまま待って下さい。今神殿前にいるので、クリスさんの石碑の状態を確認してみます……ああ、本当ですね。製作職の貢献度、クリスさんだけ星が光っています』



 有志の探索により、どうやら石碑の星の輝きは戦闘ジョブでの貢献と製作ジョブでの貢献で場所が違い、また星の種類も違うということが分かっているのだとか。栗栖が教えた剣と杖の呪文を攻略プレイヤーに教え、今は急激に戦闘ジョブの貢献は増えてきている状態だが、製作ジョブは貢献がほぼゼロなのだという。



『杖や剣はキーワードを百人以上に教えてもまだ現れますから、最終日までになんとか既定値の貢献度が稼げるとは思います。ですが製作職の貢献度は、設備がバグで使えないので、難しいかもしれません』



 栗栖の情報とディナンから聞いた情報を総合すると、制作職は聖なる供物を作るレシピを手に入れると貢献度がその分あがるが、その通りに作って納品することが前提なので、その製作の部分が詰まっている、ということになる。




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