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誘われた卓に座り、オジサン二人と、店員NPCを含めた四人でゲームを開始する。
「そういやクリスよ、お前さんは渡り鳥なんだろう? こんなところでのんびり遊んでていいのかよ」
「そうそう、渡り鳥といや、あっちこっちで冒険だのと忙しい連中ばっかりじゃねえか」
「そうなん? 俺は別に忙しないけど……ちゅうても、ここにもそんなにおるわけやないやん」
クリスがゲランシャトー(仮)に来るのは空腹値のアラームが鳴る、一日のうち二回だけなので、そんなに遊んではいない。他の時間はずっとクリスチャンの駆け込み寺でネットプリックスを視聴している。
それに、ディナンはミニゲーム好きのプレイヤーもいると言っていたので、自分をそう遊び人だとは思っていなかった。
「腹が減るたびに来る奴なんかいねーよ。はいリーチ」
「無一文やからなぁ……俺もおっかけリーチや」
「それがそもそもおかしいだろ、コインはあるってのに……ソイっ」
「「ロン」」
「だあぁぁぁっ! ダブロンかよ!」
一局目が終わったところでちょうど、ロビーラウンジで頼んだ飲み物が来た。栗栖は金鐘ランクがまだ最下位なので、もちろん薄いエールだ。サイドテーブルに用意されたそのエールを飲み、次の配牌を待つ。マギ麻雀の雀卓は魔道具なので、牌は自動的に配られるし、理牌も自動、非常に便利かつ手軽だった。
「そうは言ってもよぉ、もうすぐ教会じゃ聖タンクローゼスの祈り日だろ? ありゃ渡り鳥の協力がねえと悲惨なことになるからなぁ」
「え、そうなん?」
「そうだぜ、なんでも恐ろしい呪いが降り掛かるらしいぜ」
オジサンたちが言うには、聖タンクローゼスはもともと渡り鳥を愛し、渡り鳥を祝福する聖者だったのだとか。そのため教会は渡り鳥の協力を必要としている。
「商業ギルドや冒険者ギルドでも、教会に協力して渡り鳥に特別クエストを出してるらしいじゃねぇか」
「そうなんや、知らんかったわ」
「おいおいクリス、冒険者ギルドに登録してねぇのか?」
「してへんなぁ」
ネットプリックスを視聴するのに必要なかったので、もちろん栗栖は冒険者ギルドへ登録していない。というか、冒険者ギルドがある、ということも今聞いたばかりだった。
「特別クエストは街に住んでる俺等にゃどうしようもねぇもんだし、頑張ってほしいもんだぜ」
「そうだなあ、聖別された杖か剣がいるって話だしな」
「へー、俺、そんなんもってへんけどな」
「ありゃ聖タンクローゼスから渡り鳥だけが授かるらしいぜ。剣がキャンディソードで、杖がキャンディケインっていうんだと。俺等が祈って唱えてもなんもねぇけどな」
「キャンディケインは分かるけど、キャンディソードて……危ない飴やなぁ」
栗栖がそう言った瞬間、雀卓の上にプレゼントボックスが現れた。黄色の包装紙に青のリボンのものと、赤の包装紙に青いリボンのものの二つだ。
「お、どうしたどうした」
「派手な色の箱だなオイ」
「あ、アカン……やってもうた……」
『おめでとうございます! 攻略キーワード発声を確認しましたので、報酬をプレゼントします!』
箱の中身はもちろんステッキだった。クリスマスツリーに吊ってありそうな、持ち手が丸く曲がっているもので、赤と白のしましま模様のものと、緑と白のしましま模様で、いかにも飴のような見た目をしている。栗栖は、ベタベタしそうで持ちたくない、と思ったが、雀卓の上にずっと浮いていて迷惑だったので仕方なく受け取った。そしてすぐにアイテムボックスへと収納しておく。当然のように二本のステッキも譲渡不可になっていた。
「クリスお前さん、聖別された杖と剣、授かっちまったなぁ」
「困りますゥ~~~」
そもそも栗栖はディシディア・ネリス・オンラインでいうところの、初心者プレイヤーにすら該当しない。ゲームの仕様やルールなどもよく分かっていないし、チュートリアルも受けていない。やったことといえば、ネットプリックスを視聴して麻雀を打つことだけなのだ。そんな栗栖がこれ以上クリスマスイベント用のアイテムを手に入れても仕方がない。
「まあまあ、このチーズパンやるから元気出せよ」
「そうそう、無理の無い範囲で働いてくれればいいからよ」
昼間から麻雀を打っているオッサンにそう言われた栗栖は、遠慮なくチーズパンを受け取り、ついでに跳満をツモった。オッサン二人は叫んだ。
「しゃーないなぁ……とりあえずこれ終わったら帰るわ~」
向かいに座っている、ニコニコしていて無口な店員NPCにそれを伝え、チーズパンを食べた。
とりあえずディナンに相談してみれば良いだろう。ディナンはこの期間限定サーバーに残って、クリスマスイベントを攻略してみるといっていた。あれからもう三日経っていることだし、きっと栗栖よりも攻略が進んでいるだろう。相談すれば、栗栖でもできそうなイベントを教えてくれるかもしれない。
栗栖はディナンにレターを送り、雀卓へと向かう。このゲームを終わらせて腹ごしらえを済ませたら、出掛けようと考えて。




