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ポンコツAI『マンジュウ』と遊ぶVRMMORPG  作者: マッチョ増田
第0章 デスゲームに巻き込まれ……なかった

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「この角……角のカチューシャは、街を歩いてたら急に出てきてん」


「そうなんですか……ではランダムドロップ……? ちなみにそれは寄付できるものですか?」


「いや、譲渡不可になってる。あ! でもアイテムボックスに入れることはできるな。なおしとこ」



 栗栖はトナカイの角カチューシャを外し、ささっとアイテムボックスへ仕舞った。このカチューシャを手に入れたときは、アイテムボックスなる便利なものの存在を知らなかったが、今はそうではない。変人要素は少なければ少ないほどいいだろう。



「いきなりプレゼントの箱みたいなんが出てきて、たしかメッセージカードに、攻略キーワード発声を確認しましたので、報酬をプレゼントします、って書いてたな」


「ああ、キーワード発声タイプなんですね」



 VRゲームの中では、主に謎解き系と呼ばれる類のゲームに、キーワードの発声でゲーム展開が進んでいくものが多いのだとか。



「でも、別に攻略キーワードなんか言うた覚えないけどな。……バグかな?」


「そうかもしれません。そもそもクリスマスイベントの開始場所や概要の案内も無かったですし……」



 色々とまだ開発途中だったようだ。まあそれは仕方ないだろう。何せ今は6月で、クリスマスには遅すぎるし早すぎる時期だ。仕方なくないのは、そんな開発中のゲームサーバーをプレイヤーに適用してしまったことだけだ。きっと現実世界では、今頃対応で大変なことになっているだろう。



「今回の、聖タンクローゼス? に祈りを捧げるイベントがここで発生しているということの告知がそもそも無いですからね」



 そう話したところで、ディナンの目の前に青色をしたプレゼントボックスが現れた。黄色のリボンで丁寧に梱包されているそれは、ディナンの手に触れるとポンっと音が鳴り、小さなメッセージカードが表示される。



「えっ」


「……えーっと、やはり攻略キーワードのようですね。 ……多分、聖タンクローゼス、かな?」



 ディナンが困ったように微笑みながらそう言った。プレゼントは黒革の編み上げブーツだった。裏地に白い毛皮が使われ、折り返しになっている。



「これは……サンタさんのブーツやろか」


「そうですかね」


「そのうち付けヒゲも出そうやな」


「ふふっ」



 聖石碑のディナンの名前の下に虹色の星が付いたので、やはりキーワードで貰えるアイテムを手に入れると、虹色の星が付くようだ。

 このイベントの内容も他のプレイヤーに教えていいかと聞かれて、栗栖は頷いておいた。バグがあるというか、そもそも開発が間に合っていないイベントだが、それでもゲームをしているプレイヤーにとっては楽しいのだろう。ディナンは栗栖の隣で、クリスマスイベントに関する考察をいくつか語ってみせた。栗栖はそれを穏やかな心で聞いた。そして、自分も早くこのゲームで楽しみたいと思った。そのためにも、ネットプリックス視聴環境を絶対に手に入れなくては。栗栖は決意を新たに教会を出た。



「マンジュウ、次は~?」


『はい。次は、【麦が違う酒場】へ向かってください』


「お、ガン付けイベントの」



 特にガン付けイベントではないが、栗栖はなんとなくそう思っていた。麦が違う酒場を通り過ぎるとき、なぜかこちらを見ている老人と目を合わせ続けたからだ。栗栖の認識では、それはあまり褒められた所作ではないが、ここはゲームなので、そういうイベントもあるのだろう。

 ディナンにはここで離脱するかと聞いたが、付いてくるそうだ。



「いやもう、ここまで来ると最後まで知りたいですし、それ以上に、クリスさんといると面白いので……」



 面白いといわれて、栗栖は少しだけ嬉しくなった。特に面白いことをしたとは思っていないが、面白いというのはそれだけで良いことだからだ。

 そうしてディナンと二人、麦が違う酒場へと到着した。マンジュウに、次の行動を聞いてみる。



『店主にアカコマドリの尾羽根を二つ売ります』


「そこは老人やないんやな」



 樽で抑えられ、開け放たれている酒場のドアを潜って中に入れば、そこはカウンターと小さな丸テーブルが二つあるだけの、バーのような内装だった。

 店内には、入口に一番近いカウンターで飲んでいる老人が一人。ドアの外を睨んでいた人物だろう。だが栗栖とディナンが入店すると、ふいっと視線を外してしまった。



「いらっしゃい」


「こんにちは、買い取りやってない?」


「うちは酒場だよ」


「せやんな~、ちょっと押し売りしに来てんけど。アカコマドリの尾羽根を二つ買うてくれへん?」


「……ほう。そりゃどこで獲ったもんだい」


「南のほうの、小川のとこ」


「なるほどな。それじゃ、そいつぁ500トルで買い取ってもいいぜ」



 そんな会話で、アカコマドリの尾羽根はあっさりと売却が済んだ。酒を飲んでいけと言われて一杯頼んだら、それが1000トルだったので売却益は綺麗に消えた。

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