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探偵は喋らない  作者: 犬犬太


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「うさぎさん、何見てるんですか?」

警察署の猪又のデスクに勝手に座り、翔は自分が写した優愛の写真を広げたて、何かを考えながら見直していると、取り調べに同席していた馬原が声をかけてきた。その後ろからは鹿川が、コーヒー飲めますか?とのんびり声をかけてくる。二人の手にはそれぞれ二つのカップが持たれている。

「うさぎさん、砂糖とミルクはどうしますか?」

馬原は片方のコーヒーを翔の左手の前に置くとオレを見ながら尋ねてくる。

「野兎さんはミルクと砂糖どうしますか?」

鹿川は片方のコーヒーを翔の右手の前に置いて翔を見ながら尋ねる。

こいつら、もしかして、オレと翔を別人として扱ってるのか?若干混乱した翔が首を縦に振り、オレも同時に頷く様な動きをさせて、

「どっちも多めでお願いします…」

と答えた。

コーヒーが苦手な翔は砂糖とミルクがたっぷり入ったカップを右手に持ち、ふーふーと息を掛け冷ましながらそっと一口コーヒーを飲む。口から鼻に広がるコーヒーの薫りと苦味、そして酸味に微妙な表情をする。オレはといえば、目の前に上がるカップからの湯気をのんびりと眺めている。

この、馬原と鹿川という二人の刑事はなんと言うか、オレのことをバカにする様子もなく、翔のことも信頼してくれているように見える。なんとものんびりした雰囲気の二人組である。そういや、猪又も高校時代にオレのことをバカにすることはなかったな。あの上司にして、この部下あり、というところだろうか。

微妙な表情をしながらコーヒーを飲む翔に、鹿川が、コーヒーは苦手でしたか?と尋ねている。少しだけ、と素直に答える翔。人見知りの激しい翔にしては珍しくオレを使わずに会話をしている。口は相変わらず開いていないが。翔もこの二人を信頼しているのか、はたまた気を許し始めているのか、何にせよ良いことだな。

「次はお茶の方が良いですかね?」

馬原がオレと翔を見ながら気遣ってくれる。なかなかに良い奴らだな。翔も、お願いします、なんて言って頭を下げたりしている。

「で、何見てるんですか?」

鹿川が猪又のデスクを覗き込む。釣られるように馬原もデスクを覗き込んだ。

「被害者と被疑者の四人の写真…ですか?」

「なにか、引っ掛かって…?」

翔は馬原の質問に答えながら一枚写真を取り上げる。じっと見ながら首を傾げ、文字通り物事を正面だけでなく斜めや横から見るように写真を電灯にかざしたり、目を細めて斜めから見たりといろいろな方向から見ている。

「…。」

何かを思ったのか、翔の動きがピタリと止まる。すると、翔は結愛に送られてきた仁柳の撮った写真を猪又のデスクの上に置いてある封筒から取り出し、そのまま広げた。

「ちょっ…、野兎さん、混ざってるっ!」

馬原と鹿川が慌てて分類しようとするが、翔は気にすることなく写真を漁る。幾枚もの写真の中から、数枚の写真を取り出し、写真を見つめる翔がなんとも言えない表情をする。

「野兎、指紋が出たぞ」

その時、猪又がペットボトルの指紋の結果を持ってやって来た。

「この人の指紋だろ…?」

翔は、デスクに広がる写真に視線を落としながら猪又に一枚の写真を突き出した。

「あぁ、何で分かった?」

訊きながら、猪又は手付かずで置いてあったオレの前のコーヒーを手に取り口を付けると、相変わらず変な味覚だな、と言いながら眉を顰めた。

「この人だけは…、桔梗さんを"桔梗 結愛"を"桔梗 優愛"の望む姿を愛してる気がするから…」

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