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二人目の容疑者、柘植 晴臣。
「柘植 晴臣さん、事件当時の行動についてお教えいただけますか?」
お決まりの台詞が猪又から告げられる。柘植は血の気の引いた青い顔をして下を向いている。付け回しというストーキング行為をしていたというのはもう警察にはバレている。単純に考えて、今のところこの男が一番怪しいと警察は考えている様だ。
「事件のあった日は、家にいました」
「それを証明できる人は?」
ぼそぼそと小さな声で喋る柘植の声と淡々と喋る猪又の声が実に対象的だ。
「独り暮らしなんで、証人は…」
今にも倒れそうな顔色だ。自分のしていたストーキング行為を今さら後悔しているようだ。
「証人はいないんですね?」
猪又の問い掛けに黙って柘植は悔しそうな、泣き出しそうな顔を見せる。
「少なくとも柘植さんは、桔梗さんが電気を消して、俺が帰るまで現場付近にはいませんでした」
ミラー越しに取り調べを見ていた翔が呟いた。すると、鹿川がそれは本当かと翔に確認を繰り返す。翔は気を悪くすること無く何度も頷いた。だが、自分が帰る前に結愛の部屋をストーキングしやすい場所を探索しただけで、自分の帰宅後は保証できないとも告げた。しかし、これは一応捜査に置いては多少進展するのでは無いだろうか。翔が帰宅してから、結愛の死亡推定時刻、容疑者達のアリバイ。これらを擦り合わせていけば、案外早く犯人は割れるかも知れない。鹿川は再び、取調室へと駆け込んでいった。俺からの情報を受けた猪又は柘植に更に質問をしていく。
「桔梗 結愛さんへのストーカー行為についてはどうですか?」
付け回しや監視をしていたようですが、と猪又が断言する様に尋ねると、柘植は叫ぶ様な声を上げ、両目は興奮しているのか充血している。
「あの女が悪いんだ!気のある素振りを見せる癖に、一方で材木谷にも色目を使って。挙げ句の果てには顧問と出来てやがった!」
ま、オレから見ても結愛は男にちやほやされ、常に自分が中心にいないと気の済まないタイプだった。柘植の言い分は完全な逆ギレとも言い難い気もするが、ストーキングの理由にはならない。
「では、朴木さんと桔梗さんがお付き合いしていた事は知っていましたか?」
昨日の態度とつい数秒前の言い振りから知らなかったと予想は出来るが、案の定、柘植の口からは
「知ってたら他の女と付き合ってたよ!俺に気のある女は他に沢山いたんだからな!」
と、自慢とも取れる答えが口から出てくる。ま、それもこの事件のおかげで終わりだろうな。ストーカー野郎ってバレたからな。
「材木谷さんの盗聴行為に気が付いたきっかけはなんですか?」
猪又の質問に翔が反応を見せる。翔も気になっていた様だ。
「たまたまだよ」
上から物を言う様に、ぶっきらぼうに柘植の口から言葉が放たれる。猪又はそれに対して、
「たまたまとは?あなたが桔梗さんを付け回している時にでも見かけましたか?」
揚げ足を取るような質問を返す。ぐっ、と息を呑む柘植に対して容赦の無い視線が向けられる。
「…っ、たまたま、材木谷が、桔梗ちゃんの鞄に何か入れる所を何回か見かけて、でも桔梗ちゃんは気が付いて無いみたいだったから、こっそり抜き取ってみたんだよ。最初は何かよく分からなかったけど、ネットで画像検索して調べてみたら盗聴器とかの通販サイトに繋がったから…」
こいつ、付け回しの他に窃盗もしてる事になるんじゃ、いや、元々は材木谷が仕掛けた盗聴器だし、まぁ、どっちにしろ元々、犯罪犯してるからどうでもいいか。そうこう考えているうちに、猪又の質問は続いていく。
「あなたが、桔梗さんと二人きりで部屋で過ごすことはありましたか?」
猪又の言葉に柘植は嫌そうに答える。
「何度かそういう状態に持ち込もうとしたけど、上手く躱されたよ。もちろん、俺の部屋にも誘ったけど、こっちも躱された」
「最後に、あなたにとって、桔梗さんはどういった存在でしたか?」
猪又の質問が柘植に伝えられる。
「美人だし、彼女にできれば周りに自慢になるかなって。まあ、性格もそこそこ良さそうだったし?」
何とも自分勝手な言い草で、猪又も取調室の刑事も、そして隣室の俺たちも呆れて物が言えなくなった。




