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探偵は喋らない  作者: 犬犬太


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20

「部屋の中で変わった場所に思い当たりはありませんか」

猪又が四人、特に朴木さんを見て問い掛ける。朴木さんは部屋の中をぐるりと見回し、少し考える。他の三人もきょろきょろと辺りの変化を探るように見回した。

「そう言えば、本棚が」

仁柳さんが、本棚の方を指差し猪又の方を見る。猪又は先を促すように頷く。

「いつもと並べ方が違う気がします」

少々自信なさげな感じであるが、俺も気になっていた点を指摘する。他には何か無いかと猪又が四人を見るも、答えは返ってこない。

「並び方が違う本棚、乱雑に差し込まれた椅子、テーブルの上のペットボトル、ソファーの背に掛けられたタオル、壁の凹み、冷凍庫の中のドライアイス」

うさぎ越しに指摘し、四人をちらりと盗み見る。特に怪しげな反応は無いものの、訝しげな表情をする。

「何か気になるのか」

猪又が俺に向かって視線を向ける。うさぎをずいっと顔面にずらして猪又の視線から逃げる。

「・・・別に」

俺の言った事に引っ掛かる人がいないという事は、本棚以外はあまり違和感のないことなのだろうか。

その時、刑事の一人が鑑識から何かを告げられる。そして、さらに猪又に告げる。

「今、鑑識から報告がありました。椅子とテーブルの上のペットボトル、それと死体の側の椅子から朴木さんの指紋が、また、死体の側の本からは仁柳さんの指紋が見つかりました」

なぜ、そこに指紋が付いているのかと言わんばかりに猪又が仁柳さんと朴木さんを見やる。二人は緊張したような顔を見せるも猪又に向かって答える。

「本は以前、結愛から借りた事があるものです」

部屋に遊びに来たこともあるので、ほかにも指紋があるかもしれない、と仁柳さんは答えた。

「私は、結愛と恋人だったんです。部屋にも普通に出入りしていたんです。どこに指紋があってもおかしくなんてありません」

と朴木さんは冷静に答えた。

指紋はいまいち犯人の特定にはなりそうもないな。

「死亡推定時刻は分かっているのか」

うさぎを前に出すと猪又はうさぎをちらりと見ると、次いで俺の顔を見る。

「大体八時間から十二時間前だ」

俺が昨夜、桔梗さんから定時連絡をもらったのが午後九時過ぎ。それから暫くアパート前を監視していたが誰も来る様子がなかった。つまり、俺が帰った後に犯人が来たということだろう。



オレとしては、最初の予想通り、殺人で、この四人の中に犯人がいると思うんだよな。根拠としては多少弱いが、テーブルの下の椅子と本棚の本だな。几帳面だった結愛が死ぬ直前だからといってそんなに普段と変わったことをするだろうか。特に本棚とかな。鍵の閉まった自分の部屋なのだ、わざわざ誰も来るはずの無い状況なのに、慌ててしまいましたと言わんばかりの乱雑な片づけ方をされているんだ。誰かが慌ててやったとした思えない。

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