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探偵は喋らない  作者: 犬犬太


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「俺たち四人の中にい殺人犯がるって、そんな証拠どこにあるんだよ」

柘植さんが今までに見せた事もない様子で怒鳴り散らす。

「だいたい、自殺だったんじゃないんですか」

朴木さんが猪又に向かって問いかける。

自殺でもなく、この四人の中の誰かが犯人であるという証拠と言われても、日常の桔梗さんへの態度と、ストーカー探しの結果からの俺の勘としか言えないのだけれど。そんな事口にしたらさらに怒りそうだし、この人たちは納得しないのだろうな。

俺はあらためて、うさぎを顔の前に構えると、もう一つの勘の根拠を提示した。

「体が小学生になった探偵マンガや、お爺さんが有名な探偵の少年のマンガなんかだと、こういった場合被害者と近しい存在が意外と犯人だったりするからです」

俺がそう言い切ると、少しの間を置いて猪又が言葉を発した。

「本当に、それが理由なのか」

めんどくさいが頷いてやると、一斉に周りから怒鳴り声が響いてきた。

そんなふざけた理由で犯人だと疑うな、とか、現実をマンガと一緒にするな、だとか、まあ、そんな感じの事を色々言われた。どうせ怒られるならただの勘だとでも言っておけば良かったかもしれない。

「でも、俺はあなた達の誰かが犯人だという考えは捨てません」

二週間有るか無いかの期間だった、それでも俺は桔梗さんとその周りの人間たちの事をじっくり見てきた。これまでの経験と勘がそう言ってるんだ。誰も俺の勘を信じないならそれでも良い。

俺が必ず、桔梗さんを殺した犯人を見付けてやる。


まずは、現状から自殺ではない、殺人である証拠を探さないといけない。

とは言っても、今現在の俺が出来る証拠探しは、以前この部屋へ来た時と今との違いを探す事、そして、それがどうして現れた違いなのか検証する事位だ。

あの怒り具合から、四人の協力は難しいかも知れないが、猪又を使って何とかやるしかないよな。

とりあえず、気になる所は、警察が来る前に確認した場所。

一つ目が、桔梗さんの周りに散らばった本と倒れた椅子。

首を吊るのであれば足元の台はどちらか一方で構わないのではないだろうか。だが、わざわざ、そんな殺人を思わせる様な物を残すだろうか。俺が犯人なら、吊るした後に必要な高さの台を一つ、用意するだけだ。なのに、何故、犯人はわざわざ、本と椅子を残したんだろうか。

二つ目が、雑に押し込まれた椅子と、テーブルの上の一本のペットボトル。

押し込まれた椅子は、桔梗さんがいつも座っていたであろう側の席。自殺するつもりの人間がどういう気分だったか分からない、と言われてしまえば終わりの様な気もするが、逆に考えれば、そういう時だからこそいつも通りの癖が出るのではないかとも俺は思ってしまう。

それからテーブルの上のペットボトル。俺は280mlの小振りのペットボトルを二本、桔梗さんに差し入れとして置いていった。それが、一本は手が付いた状態でテーブルの上に、そして、もう一本がゴミ袋の中に。

三つ目が本棚。一部、異様な乱雑さが目立つ本棚は、几帳面だったであろう桔梗さんのイメージとは合わない。それこそ、誰かが慌てて要らない本をぶち込んだ様にしか見えない。

四つ目は壁や柱の凹み。以前入った時には付いていなかった新しい傷だ。事件現場に散らばる物とは形状が一致しないように見えた。俺が入ってから事件までの間、もしくは事件で付いた傷跡だ。もし、後者であれば重要な証拠になり得るかもしれない。

そして、最後、五つ目が冷凍庫のドライアイス。普通、一般的な女子大生の冷凍庫には、到底入っていない様な物だ。というか、一般家庭でもそうそう無いだろう。

とりあえず、以上の五つの点が俺の気になる所だ。

疑問点を紐解くヒントが一つでもないかと、事情聴取中の猪又や材木谷さん達の間を行ったり来たりしながら歩き回り部屋中を探索する。

「野兎、現場に居るならもう少し大人しくしろ」

猪又の声が聞こえる。その声を無視していると、刑事達が次々に質問している声が聞こえてきた。

桔梗さんに対するストーカーの存在のこと。桔梗さんが自殺を仄めかしていたのではないか。桔梗さんの部屋から何か貴重品は無くなってはいないか。桔梗さんと何か揉め事や恨みを持っていた人物はいないか。等など。

正直言えば、恨みや揉め事に含まれるかは分からないが、色恋沙汰であれば、演劇サークルの女子部員達は少なからず恨みもあったろうし、特に言えば今ここにいる四人なんかは、やっぱり一番怪しくなってくる。

俺が気付いている四人と桔梗さんの関係くらいであれば、あの四人も気が付いているだろう。俺は四人の話に耳を傾けた。

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