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探偵は喋らない  作者: 犬犬太


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ひと通りの鑑識捜査が終わった後、翔も第一発見者として、関係者が来るのを待たされる。その間、翔は何か思いついたのか、じっと黙り、時おり辺りを見回したりしながら何かを考え込んでいる。

何かを触る時は、手袋を持ってはいないからだろう、オレを使って調べている。本を開いたり、試しに積んでみたり。そこら辺にある物で壁の凹みに合う物を探してみたり。そうかと思えばゴミを漁ったり、部屋の中をうろついてみたりと、オレから見てもよく分からない動きをしている。

「・・・普通の女子大生って、ドライアイス冷凍庫に入れておくものですか」

今度は冷凍庫を漁り、ドライアイスの表面をオレでつんつんといじりながら翔は猪又達に問いかける。その問い掛けに、刑事たちは一斉に冷蔵庫の側へと集まり、翔が覗いている冷凍庫を一緒になって覗き込む。ドライアイスはA5サイズより少し大きく割られて入れてある。もしかしたら、一枚はもう少し大きいのかもしれない。刑事たち三人も、翔の疑問からドライアイスについて話し始めた。その時、ちょうど所轄の警官だろう制服を着た警察官が材木谷、柘植、仁柳、朴木の四人を事件現場である結愛の部屋へと連れてきた。刑事たち三人の自己紹介の後、四人が一頻り自己紹介をした。そして、四人の目は翔とオレに向けられる。それもそのはず、オレを持っていたのは女装した翔だったのだから。今の素の姿の方で会うのは初めてだ。その視線に気が付いたのか、翔は冷凍庫から振り返り、四人に改てよろず屋としての野兎翔の自己紹介をした。四人は翔が本当に女だと思っていた様で、本気で面食らっている様だった。特に気障野郎と地味な姉ちゃんの驚きは大きかった様子で、驚いた顔のまま固まってしまった。一方で部長や白衣の顧問は驚きつつも、流石は舞台演出家、翔に対しての興味が腹話術師から性別不明の腹話術師に格上げされた様子だ。

四人それぞれが翔の本題にも触れていないカミングアウトから、意識を戻したのは猪又の一声だった。

「野兎は被害者の桔梗結愛さんからある事について、依頼を受けていました」

それについて心当たりはないかと、一同を見回すも、誰も心当たりはない様子だ。ま、心当たりがあったところで素直には言わんわな。

四人の反応を確認した猪又は一つ頷き翔に視線をやる。依頼内容について、翔が話す様に促しているのだろう。しかし、人と話しをするのが嫌な翔はそんな猪又の視線を無視してそっぽを向いている。おい、と声を掛けられるも会話したくない翔は断固として猪又と視線を合わせたり、口を開こうとしない。猪又は幾度か野兎、おい、と声を掛けた挙句、ようやく諦めたのか

「桔梗結愛さんから受けた依頼について話をしろ、野兎」

と声を荒らげた。翔は翔で、猪又にお前が話せば良いのにと、そんな嫌そうな視線をちらりと向ける。そんな二人のやり取りに、仕事中に結愛をガードしていた姿しか知らない三人は目を見張る。それもそうだろう、翔は仕事でなければ人見知りの無口な奴で、必要に迫られて喋る時も俺を通して会話する。そんな姿を今、初めて見ているのだから驚くのも仕方がない。特に今どきの若者たち、とりわけ「パーティーピーポー」、そう、パリピと呼ばれるタイプの人々が苦手なのだ。そして、結愛を含め、容疑者の三人はそれにごく近いタイプの人間だった。舞台の練習はもちろんしていた、が、何かにつけてはサークルメンバーで集まって酒を飲み交わす。翔も何度か結愛と一緒に参加していたが目が死んでいたのは言うまでもない。

仕方なし、というふうに翔は警察の前で説明した結愛からの依頼の経緯、仕事内容を説明した。そして、最後に三人の前で一言、決定的な言葉を告げた。

「俺は、あなた達四人の中に桔梗さんを殺害した犯人が居ると考えています」

翔はこの言葉を、オレの口を借りることなく自身の口で四人に告げた。

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