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探偵は喋らない  作者: 犬犬太


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どうやら事件現場で捜査の中心になるのは、猪又と名乗る、恐らく俺の同級生の男の刑事らしい。どこかで聞いたような名前と見たことがある様な気のする容姿。しかしながら、いまいち思い出せない。俺が猪又について考え込んでいると、俺に事件について説明をもう一度詳しく話せと言われた。

「最初は、桔梗さんから依頼があったんです・・・」

まず俺は桔梗さんから受けた依頼について説明を初めた。最初はストーカーは一人だと考えていたこと、しかしストーカーが実は複数人いたということ。またそれが、恐らくは身近な人物達であったこと。そして、そのうちの誰かが、恐らく桔梗さんを殺したのだということを。

「根拠は何だ、野兎」

猪又が俺を真っ直ぐに見つめ問い掛けてくる。俺はその視線から逃れる様に顔を猪又から背け、うさぎをずいと、猪又の方へ差し出した。

「結愛はとても几帳面だったからだ」

その他にも、俺が容疑者だろうと考えた四人の人物像について話した。

まず、演劇サークル部長の材木谷 康。この男は桔梗さんの元彼で、今も彼女の事が好きである素振りを見せている事。

次に、柘植 晴臣。この男も桔梗さんの事が好きな様子だった。

ただ、桔梗さんは材木谷も、柘植も自分のことを恋愛対象として好意を抱いている事に気が付きながら、近づきすぎず、離れすぎずの関係をうまく利用していたように見えた。

次に、友人であった仁柳 和泉。彼女の中では、桔梗さんにマウンティングされている様に感じていたのではないだろうか。また、隠し撮り写真を桔梗さんに送っている。

そして最後が、演劇サークル顧問、朴木 駿介。一見、部活などでも深く関わりを持っているようには見えなかった二人だが、その実、恋人関係にあった事は既に調べ済みだ。

あと、あり得るとすれば、盗聴器にゴミ漁り、付け回しのストーカーだろう。

「几帳面・・・。それが一体、何の証拠になるんだ」

半ば怒鳴る様な声で猪又が俺に向かって喋り掛ける。俺はそんな猪又を無視して、あくまでもうさぎを動かし腹話術で会話を続けていく。

「その、"几帳面"という性格と、今のこの部屋の惨状はあまりにもかけ離れ過ぎているからだ」

うさぎで違和感を感じる大まかな部分を指し示していく。流し台、リビングの椅子とテーブル、大きな書架、そして、死体のあった辺り。俺が見てきた桔梗さんの性格では、今の状態の部屋とは結び付かなかった。

まず流し台。タライに水が溜まったままになっている。桔梗さんは洗い物が終わるといつもタライは空にして水を切る様にして流し台に立て掛けていた。

次にリビングの椅子とテーブル。片方の、部屋の奥にある椅子、はきちんとテーブルの下に収まっている。しかし、部屋の手前、入口側の椅子は乱雑にテーブルの下に入れられているという感じだ。以前俺がこの部屋を訪ねた時もその席に座ったが、桔梗さんは俺が椅子から立った後、すぐに直していた。

次は大きな書架。彼女は本をかなり大切にしていた様だった。なのに書架から取り出された本は自殺するための足場にするには少し多すぎる気がする。

それは死体のあった辺りでも分かることだ。足場にしたであろう本が大量に散らばっている。それを見れば分かるが足場にするには少し多い。全てを一つに積めば高すぎるし、いくつかの山に分けて積めば高さはいいが逆に安定し過ぎてなかなか倒せず、自殺するには扱いにくい状態だ。それに無造作に落ちているこの部屋の鍵。

「それと気になるのが、壁に出来ている傷、と言うか凹み。ここにあるどの本とも合わない」

気になる点をもう一度自分に言い聞かせる様に、そしてついでに警察にも話して聞かせる。

凹み。これが何かの鍵なのではないだろうか。いや、この部屋の今のすべての状態が、何か、意味を持っているはず。

ーすべての事柄には何らかの意味があるー

昔、何かのマンガで読んだ気がする。マンガとは時に人生にとって、とても大切なことを教えてくれる。

もしかしたら、この事件も今まで読んできたマンガが何かヒントをくれるかもしれない。思い出せ、以前、何かのマンガで読んだ知識をフル活用するんだ。

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