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探偵は喋らない  作者: 犬犬太


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翔が結愛から離れると決めてからの行動は、素早く、そして、極端だった。登下校やバイト先への送り迎えの時は、翔だけが結愛を目視できる様にし、結愛やその周りの人間には尾行が気付かれない距離と様子を保ち、それは、大学構内でも行われた。まあ、さすがにバイト先では狭すぎて無理だったが。他にも、毎日ウィッグを変えたりメガネ等で変装を取り替えてみたりもした。

しかし、一度手を引いたストーカーはなかなか姿を表してはくれない。このままでは、依頼の日数がただただ延びるだけで結愛の不安を消すことは出来ない。

その事に翔は少し焦りを感じているらしく、結愛から離れている間にひたすら撮り溜めをした周辺人物と結愛の写真を現像をしては、手の空いた講義の時間を使って一枚一枚丁寧に確認をしていく。何か一つでもいいから、ストーカーに繋がる手掛かりがないかと。

翔は、まず初めは写っている人物ごとに写真を分類していく。結愛と部長、結愛と気障野郎、結愛と地味な姉ちゃん、結愛と部員達、結愛とその他の友人、結愛とバイト先の人物たち。言葉にするだけでもかなりの分類が出来る。翔はそれらのグループを順に一枚ずつ丁寧に眺めていく。気になる事が少しでもあれば写真の裏にメモ書きをしたり、その部分に印を付けていく。

そこで翔は、部長、気障野郎、地味な姉ちゃんの他にもう一人、結愛と深く関わりがあるのではないかと思われる人物を見つけ出した。

それは、顧問の朴木。白衣で眼鏡のやつだ。演劇サークルの顧問で、結愛の受講している講議の受け持ちもいくつかしている。にも関わらず、結愛と眼鏡の顧問は違和感を覚えるほどに関わりを絶っている。顧問と部員であれば挨拶や少しの会話ぐらい行うはず。実際に他の部員達と顧問は、舞台に上がる、上がらないに関わらずそれなりに指導や会話をしている。しかし、それが結愛には無いのである。しかも、周りの人間たちはそれを違和感に感じておらず、ストーカーの様に結愛を観察して、写真を撮って、視線や仕草を事細かに気にして初めて分かる程度だ。流石は演劇サークルのヒロインと顧問と言ったところか。

だが、それが翔には気になるようで、気になり始めてからは結愛と顧問のことばかり観察している。

結愛と顧問を観察し始めてから少しして、初めて、顧問と結愛が直接接触を持った。それもほんの一瞬の出来事だった。少人数制の講議の最中、顧問と結愛の様子をしっかり確認するためにいつもより遠いが、二人を常に目視できるポイントで望遠カメラを構える翔。

「ちっ・・・」

翔の口からなんとも悔しそうな舌打ちが自然に漏れる。どうやらここから二人を見ると、視線を交わし合う姿がはっきりと見えたようだ。前までの場所は近づく人間を確認するためで、近くから見ることは出来ても、結愛しか見えなかったからな。顧問は教室内を歩き回りながら何やら話し、そして、結愛の机の上にさり気なく手を置く。その様子を翔は見逃さず、確実に写真に収めていく。そしてもちろん、顧問が結愛の机に残した小さく畳まれた紙も見逃さなかった。

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