第9話 素晴らしい家が完成しました!!
『さぁ、お披露目よ!!』
目を瞑って、今まで私たちが寝起きしていた場所まで、セイリーの背中に乗せて来てもらった私たち。
『いいかしら。それじゃあ、目を開けて!』
そう言われ、ドキドキしながら目を開ける。と、それを見た瞬間、私もルーファスも歓喜の声を上げたんだ。
「ふわぁぁぁぁぁぁ!!」
『きゅきぃぃぃぃぃぃ!!』
『どうかしら、フィオナ、ルーファス。あのバカが掘ったただの穴よりも、しっかりとした家を建てられたと思うけど?』
「ミナージュさん! 凄い! 可愛い! 綺麗!!」
『キキ、キキ、キキキィィィッ!!』
思わずミナージュさんに抱きつく私たち。
『良かったわ、喜んでもらえて。でも、中を見ていないのに、そんなに喜んで良いの? 中に入った途端、思っていたのと違っていたってこともあるのよ』
「絶対そんなことない!! 中も素敵に決まってる!!」
『キキッ、キキキーッ!!』
『そう? フフフ』
私たちは今、何をしているのか。ううん、何を見てそんなに喜んでいるのか。それは……。
ついに私たちの家が建ったんだよ。そう、私たちの家が。
ハーヴィーが穴を掘った日。あまりのことに愕然としていた私たちの代わりに、すぐにセイリーさんが動いてくれて。あの蛮行がレジナルドや、ハーヴィーが暮らしている村の人たちに伝わることに。
そうして、村の人たちが急いで駆けつけてくれると、大説教大会が行われたんだ。だって、私たちの言葉を聞かずに、私たちに土を引っ掛けるわ、地面に大穴を開けるわ、ボロボロにしてくれたんだから、それくらいされてもしょうがないよね。
そして、その大説教大会が終わると、ハーヴィーにしっかり地面を直させたの。完璧、元通りにだよ。
ただ、ここで話は終わらなかったの。
私とルーファスの話を聞いた、ハーヴィーが暮らしている村の人たちが、お詫びとして私たちに家を建てると約束してくれて。私たちは家を探さなくてよくなっただけじゃなく、しっかりとした家を建ててもらえることになったんだ。そして2週間後……。
そう、2週間しか経っていないのに、今日、素敵な家が完成したの!!
今、私たちの前に建っているのは、木の温かみを感じる小さなコテージ風の家で。大きな屋根が全体を覆っていて、屋根の一部には小さな三角形の窓がついているよ。
それから2階部分にも、明かりを取り込むための可愛い窓がついているんだ。あとは1階の壁には、他よりも大きな窓がついているかな。
そして、正面の真ん中に玄関と、屋根のついた小さなポーチが付いていて。手すりと階段も数段ついているよ。
飾りは少ないけれど、木そのものの色が箱庭によく馴染んでいる、温かく落ち着いた雰囲気の、とっても素敵な家。
そんな素敵な家が私たちの家だなんて、感激しないはずがないでしょう!!
「凄い!! 可愛い!! 素敵!!」
『キキキ!! キキッキー!!』
『これがいえ?』
『そうですよ。これが人や獣人たちが暮らす家です』
『ふーん? 面白そう!!』
『さぁ、外見だけじゃなく、中も見てみて』
「うん!!」
『キキッ!!』
ミナージュさんについて歩き始める私たち。ミナージュさんは、家を建てる職人たちをまとめる親方で、村の家造りを一手に引き受けているの。そして、ハーヴィーのお姉さんなんだ。とってもしっかりしていて、ハーヴィーとは大違いだって、レジナルドが言ってたよ。
ちなみに、ミナージュさん、とっても美人でスタイル抜群。地球だったら、スーパーモデルになれるんじゃないかってくらい。
……将来、私もミナージュさんみたいに綺麗な女性になりたいんだけど。あの、素晴らしいスタイルと、素晴らしい胸になるには、何か秘訣があるんだろうか?
『1階は炊事場と、ご飯を食べる部屋、それから荷物部屋の他に、あと2部屋作ったわ。2階も同じ5部屋よ。そうそう、部屋を見て回ったら、寝室を決めちゃいましょう』
「わぁぁぁ!!」
『キキキィー!!』
家の中も外見同様、とっても素敵だった。炊事場もリビングも完璧だし、家から拝借して来た家具や小物も、半分くらいミナージュさんたちが運び入れてくれていて、これ以上ないくらい、素敵な部屋だったよ。
そして、すべての部屋を見て回って、私たちが寝室に選んだのは、三角窓が付いている部屋。朝は、そこから少しずつ太陽の光が差し込んでくるから、急に朝って感じにはならないし。夜は寝転がると、その窓から星空を見ることができるって聞いてね。
だから、この部屋を寝室に決めたんだ。自然のプラネタリウム。こんな素敵な部屋があると思う?
『じゃあ、ベッドフレームを入れてしまいましょう』
部屋が決まって、獣人さんが運んできてくれたのはベッドフレーム。持って来ていたマットに合わせて作ってくれたの。
それからベッドフレーム以外にも、クローゼットやちょっとした荷物入れとか、いろいろプレゼントしてくれてね。
獣人の暮らしは、ほぼ人と変わらないから、家に必要な物を分かっていて、用意してくれたんだ。
「よいしょ」
『キキキ』
『せぇのっと』
みんなでマットをベッドフレームに運び、シーツを敷いて毛布と枕を置き整えれば、完璧なベッドの出来上がり。
「ベッド!! もう地面で寝なくて良い!!」
『キッキキー!!』
「ミナージュさん、ありがとございます!!」
「キキキ!!」
『どういたしまして。それじゃあ、次は炊事場かしらね』
すぐに炊事場に移動した私たち。この世界の炊事場は、地球とそんなに変わらないかな。ただ、魔法を使うのが前提だから、それ用に作られているって感じ。
地球でいうところのコンロは、ガスは使わず燃料になる石に火魔法で火をつけて使うし。流しだってちゃんとあるよ。
ただ、もちろん自動で水は出てこない。魔法で出すか、水を汲んでくるか。魔法が上手く使えない人や、まだ魔法を使えない子供たちは、川や井戸から水を汲むんだ。
それから使った水は、街だと下水道がちゃんとあるけれど、小さな村や、もちろん箱庭には下水なんて物はないからね。
使った水は、排水溝のような溝を通って外の大きな甕に溜めて。次の日の朝、水からゴミを取り除き、水はクリーン魔法で綺麗にしてから、庭に撒いたり、他の何かに使ったり。ゴミはまとめて燃やすの。
それか、この世界にはスライムがいるんだけど。そう、漫画とかゲームとかによく出てくるスライムね。
この世界にもたくさんの種類のスライムがいて。ゴミを食べてくれるスライムや、地球では、家庭の生ごみを肥料に変えることがあるけれど、それと同じようなことをしてくれるスライムがいて。そういうスライムと契約し、ゴミを処理してもらうんだ。
私は召喚が使えるから、魔法に慣れたら、スライムを召喚するといいって言われたよ。それならどこでも、処理してもらえるからって。
私は、まだ魔法について習っていないのに、なんとなくでルーファスを召喚することができたけど。魔法に慣れればレベルが低かろうが、スライムだったら呼び出せるみたい。
なんかね、レベルが高くない魔獣なら、自分が召喚したい魔獣を思いながら召喚すると、ちゃんとその魔を召喚できるらしい。
だから、今はみんなに手伝ってもらって、魔法が使えるようになったら、スライムを召喚することにしたよ。もちろん自分でも処理できるように、基本魔法をしっかりと覚えるよ。
特別な魔法は5歳の時に授かるけれど、他の基本の魔法、火、水、土、風、光魔法は、誰でも使えるから。私も魔法を使えるようになれば、火魔法で燃やせるようになる。こっちもレベルの上限があるけどね……。
まぁ、何にしろ、今は自分でできる範囲で、炊事場を使う予定。
『さぁ、炊事場の説明はこれくらいで良いかしらね』
「はい!」
『それじゃあ、あとは他の家具も置いてしまいましょう。大きな物はもう運んであるけれど、まだまだ整える物はいっぱいよ。夕方まで終わるように頑張りましょう!』
「はい!!」
『キキッ!!』
こうして私たちは今日から、素敵な家で暮らせるようになったんだ。
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『ん?』
「どうしたジュード、急に止まって」
『ちょっと待て』
「……分かった」
「父上!」
「ああ、セドリック、追いついたか」
「はい。父上、どうかなさったのですか? ここは私たちにとっても問題ないでしょうが、それでも魔の森と呼ばれる場所です。なるべくなら早く通り過ぎた方が」
『ジュードが何か感じたようだ』
「ジュードが? ヒューイ、何か感じるか?」
『……』
「ヒューイ?」
『……これは』
「ジュード、何が分かった?」
『……移動するぞ。確かめたいことがある』
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「ジュード、この魔の森に何かあるのか?」
『……やはりか。ここに王が来たようだ』
「何だと?」
「王とは魔獣王様ですか!? ヒューゴも魔獣王様の気配を?」
『ああ。少し前にここへ来たらしい』
「少し前とは?」
『半月程前って感じか? おい、おやじ、何でここに来たのか、確かめた方がよくないか?』
『そうだな』
『俺が行ってきてやるよ。セドリック、ヒューゴの方へ移動しろ』
「あ、ああ」
『よし……と。じゃあ、行ってくるな!』
「父上、まさかこのような場所に魔獣王様が……」
「ジュード、最近お会いしたことは?」
『ここ数年、王は森から出て来なかったはずだ。まぁ、私も最近は、向こうへ行くことはなかったからな。もしかしたら、何かなさっていたかもしれないが』
「一体ここに何の用だったのでしょう」
「ヒューゴが戻れば分かるだろう」
『魔獣たちが話せばな……』
――――――――――――――――――
『おい、戻ったぞ!!』
『王がここへ来た理由は分かったか!?』
『ちょっとまずいかもしれないぜ』
「何があった?」
『魔獣王の子供が、人間の密猟者に攫われてここまで連れて来られたらしい』
『何だと!?』
「何ということだ!? それでお子様は!?」
『ああ、安心しろ。子は無事、王の元へ戻ったらしい』
『そうか、良かった』
『だがな、まだ密猟者は逃げているらしくてな。王は奴らの足取りを魔獣たちに見張らせているってよ。もしかしたら、そろそろ戻って来るんじゃないかと言っていた』
「……まずいな。その密猟者たちがどこにいるか分からんが、奴らのせいで、下手をしたら街が1つなくなりかねん」
「しかし、なぜ王はすぐに、密猟者たちを罰さなかったのでしょうか」
『ああ、それに関係あるかは分からんが、王は子供と自分たちの森へ戻るとき、人間の子供と魔獣を1匹連れ帰ったようだ。まだ、かなり幼い子供だったってよ』
「人間の子供だと? それにもう1匹魔獣を?」
『そうだ。でだ、その子供は、この森の中で殺されそうになっていたらしい』
「……一体この森で何があったのか」




