第5話 急展開、私たちの新たな居場所確保?
って、ダメダメ、姿で判断しちゃ。ちゃんと挨拶しないと。
「魔獣王様、はじめまして、フィオナです。家族のルーファスです」
『キキキ、キキッ!』
『ハハハッ、よいよい。そんな畏まらんでも。我は堅苦しいのが嫌いなのだ。今まで通り話せばいい。それにお前たちは子供なのだからな。大人みたいに話す方が、どう考えてもおかしいだろう。気にせず、今まで通り話せ』
「は、はい!」
『キキィ!』
あー、良かった。知らなかったとはいえ、タメ口だったことを怒られなくて。まぁ、今まで怒らなかったんだから、本当に気にしていないんだろうけど。こっちはドキドキだよ、まったく。
『僕、パパの子供。だから、悪い奴が連れて行こうとした』
『我の子に手を出す愚か者がいるとは。それに、我々が暮らす森は、人間は簡単に入れない森だからな。我も、まさかこのようなことになるとは思わず油断していた』
「そんなに危ない森?」
『ああ。しかし、それでも入って来たということは、それ相応の力を持った者がいたか……。まぁ、その辺は後で何か連絡がくるだろう。この辺りに住んでいる魔獣たちにも、情報を集めるよう、先ほど声をかけておいたからな』
そうなのか? いつ声をかけたんだろう?
『もし捕まえたら、他の攻撃もする』
『そうだな。好きなだけやらせてやろう。と、さて、我々の話はこんなところだが。次はお前たちだ。お前たちのような小さき者が、なぜこのような危険な森にいるのだ』
「えっと、私たちは……」
こうして、魔獣王たちの話を聞いた後は私たちの話に。
私は、自分の身に起きたこと、それからルーファスと家族になれて嬉しかったこと、そして殺されそうになったこと、全てを魔獣王に話したんだ。
『なんと、そのような親がいるのか!? どんな魔法を使おうが子は子だろう。なぜ、大切な小さな命を奪うようなことをする。まったく、人間というものは昔からそうだ。フィオナ、ルーファス、よく生きていたな。偉いぞ』
「へへ……」
『キキキ……』
『しかし、最低レベルか。……我には、そうは見えんのだが』
「あ、今なんて言ったの? 聞こえなかった」
『いや、本当に力がないのかと言ったのだ。本当かどうか、我も相手の能力を見ることができるのだが、見ても良いか?』
「うん」
すぐに、私の頭の上に自分の顎を乗せる魔獣王。そして数秒その姿勢のままでいた後、ふむと言って顎を上げ、ルーファスにも同じことをしたんだ。それからボソボソと何かを囁いて……。
『なるほど、人間では見ることができなかったか……。しかし、このままでは危険だ。もしも人間どもが、この子供たちの力と存在に気づけば……』
どうしたんだろう? もしかして、最初の鑑定よりも悪い結果が出たとか? まさかね? 能力が消えるなんて聞いたことはないけど。でも、もしかしたらってこともあるし。
「どうかした? もしかして、もっと悪くなってた?」
『あ、ああ、いや違うのだ。こんなに素晴らしい能力なのに、なぜお前たちを消そうとしたのか。召喚など、そうそう授かれる能力ではないのだぞ? それに魔獣育成だ。完璧な相性ではないか』
「レベルが上がらないから。私はルーファスと出会えて嬉しかったけど、父様も母様も、他の人たちも、レベルが高くならないとダメなんだ」
『そうか。……我が保護した方がよさそうだな。人間などに任せられん』
「ん?」
『いや、お前の話を聞いて、やはり人間はどうしようもないと思っただけだ。が、そうだな。こうなってしまったらしょうがない。お前たちはこれからどうするつもりだ?』
「なんとかこの森から出て、どこか暮らせる場所を探そうと思ってたの。ね、ルーファス」
『キキッ!!』
『そうか。お前たちはどんな状況でも、心持ちを強く持って動くことができるのだな。……提案があるのだが、我が息子の体力と怪我を回復してもらい、貴重なお前たちのご飯まで分けてもらっただろう。それのお礼として、我らが住んでいる森へ来ないか?』
「え? 魔獣王の住んでいる森?」
『ああ。我らが住む森は、確かに危険な森だが、それでも我が直接治めている森だからな。お前たちの住処を、我らの近くに用意し、お前たちがお前たちだけで暮らせるようになるまで、我が保護してやろう』
「えええ!?」
まさかの提案だった。確かに魔獣王の近くにいれば、こんなに安全なことはないだろう。でも、本当に良いのかな? お礼って言われても、最初に私たちを助けてくれたのは子犬だし、私たちは持ってきたポーションとご飯を出しただけ。
私はそのことを魔獣王に伝えた。
『だけというが、捨てられたお前たちにとって、それは大切な物だろう。使ったり食べれば減るのだから。それを他獣のために躊躇せず使い助ける。そんなこと、簡単にできることではない。だからお礼をさせてくれ』
『人間とルー、僕たちのところ来る? うん、じゃあ、一緒に帰ろう』
え、いや、まだ決まったわけじゃ。
『お前たちは子供なのだ。ここは、大人の言うことを聞いておけ。ここにいれば、もう少し生き延びられるかもしれんが、いずれは命を落とすことになるぞ。分かっているだろう?』
……確かに。寝床を探しながら、なんとか森を抜けてと考えていたけれど、現実問題、魔獣王の言う通りだろう。私たちは小さすぎるし、力もないから、このままじゃ確実に死ぬことになる。
うん、大切なルーファスを死なせるなんて嫌だし。ここは、魔獣王の提案をありがたく受け入れるべきかな。
「……」
『どうする? 無理強いはせんが』
「えと、よろしくお願いします!!」
『キキィ!!』
私が頭を下げると、ルーファスも頭を下げる。
『よし、決まりだな! では、このまま移動してしまおう。先ほどのように、我の背に乗っての移動だ。少々時間がかかるが、我が支えるから安心するといい』
魔獣王はそう言うと、さっきみたいに私たちを咥えて、ポイポイと自分の背中に乗せたあと、結界を解いて近くに生えていた木の天辺まで一気に駆け上がる。そして、木の天辺をつたいながら、どんどん進み始めた。
「わぁぁぁぁぁぁ!」
『キキィィィー!』
『僕、寝る』
猛スピードで進む魔獣王。そのスピードと吹き付ける風に感動している中、お腹を出して寝始める子犬。って、よくこの状況で、その格好で寝られるな!? 落ちないの? 大丈夫?
と、まぁ、私の心配は一切いらなかったんだけどね。私たちは時々落ちそうになって、魔獣王に支えてもらったんだけど、子犬はいくら寝返りを打とうが、1回も落ちそうになることさえなく、5日の旅を終えたんだ。
そうして着いたのは、たぶん魔の森の5倍ほどもある広大な森で、その中心へと降りていった魔獣王。降りるとたくさんの魔獣たちが寄ってきて、子犬が無事だったことを喜んでいたよ。
それから、私たちのことを魔獣王が説明すると、魔獣たちに囲まれてね。その瞬間は、もしかして来ちゃダメだった? とちょっと不安になったよ。
でも、その後すぐに、私たちに子魔獣のことでお礼を言ってくれたり、私たちの境遇に泣いてくれる魔獣たちまでいて、すぐに受け入れてもらえたんだ。
そして……。
『今日からここが、お前たちが暮らす場所だ』
「ふわぁぁぁぁぁぁ!!」
『キキキィィィ!!』
すぐに魔獣王は、私たちが暮らす場所を用意してくれたんだけど。その場所が、あり得ないくらい素晴らしく、特別な場所だったんだ。




