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第4話 子犬のパパはまさかの魔獣王!?

『そうか、それはすまなかったな。あのように怒鳴りながら近づき、怖かっただろう』


「ううん、大丈夫。ちょっとビックリしたけど、怖くはなかった」


『キキッ!!』


「ね。怖くなかったよね。それより、私たち助けてもらったの知らなくて、お礼を言ってなかった。私たちを悪い奴らから消してくれてありがとう」


『キキィッ!!』


 私とルーファスは、子犬に向かってお礼を言いながら頭を下げる。


『別にいい。僕、魔法得意。だからあれくらい簡単』


「でも、魔法使いすぎちゃったから、倒れたんでしょう?」


『違う。あれはちょっと寝ちゃっただけ。カッコいい魔法使って、倒れたりしない』


 子犬がプイッと横を向いて、パンをもぐもぐ食べる。


「そうなんだ。分かった!」


 あれかな。格好付けたいのかな。別にそんな見栄を張らなくても、十分かっこいいのに。


『しかし、そうだな。奴らを追いたいところだが、今はお前たちの方が大事だ。奴らの匂いは覚えたし気配も追えているから、いつでも追いつこうと思えば追いつけ、やることはできる。とりあえず今は場所を移動して、詳しい話を聞かせてくれ』


「うん」


『皆、背中に乗せてやろう』


 そう言うと、犬系の魔獣は私たちを咥えると、ポイポイっと飛ばし、自分の背中に乗せてくれて、そのままサッサと歩き始めた。


 さっき、大きな声で怒鳴ってきて、あれだけ大きかった犬系の魔獣は、今は馬くらいの大きさになっているんだ。そして、この犬系の魔獣は、子犬のお父さんだったんだよ。


 まだ、詳しい話は聞いていないけれど、やっぱり子犬は密猟者に誘拐されていて、お父さんはずっと追いかけて来ていたらしいんだ。


 それで、いざ追いついて気配を探ってみれば、探していた犯人たちの気配とは違ったけれど、知らない気配が子犬と一緒にいたから、私たちのことも犯人だと思ったみたいで。だから怒鳴りながら現れ、すぐに攻撃しようとしたの。


 でも、実際に私たちを見たら、私とルーファスは口の周りに食べかすを付けながらご飯を食べているし。子犬は子犬で、お父さんが来たのに、『パパやっときた』とだけ言って、お父さんの方を1度も見ずにご飯を食べ続けるしで、かなり戸惑ったみたいだよ。


 うん、まぁ、それはね。子犬以外、私たちとお父さんは少しの間状況がわからずに固まっていたしね。


 ということで、あの後現実に戻った私たちは、食べている途中の子犬をなんとか止め、私たちのことと、今の状況について簡単に話をして。私たちは敵じゃないって、分かってもらえたんだ。


 それと、その話の時に知ったんだけど。私たちが密猟者からバリバリに見えていたのに、見つからなかったのは、子犬のおかげだったの。


 ルーファスと子犬が何か話したでしょう? あれは、子犬はルーファスに、密猟者から逃げているの? って聞いてきたらしくて。それに、そうだと答えたルーファス。


 それで子犬は、私たちの様子から私たちが敵じゃないと判断。姿が見えなくなる魔法をかけてくれて、密猟者から私たちを隠してくれたんだ。1度、体が光ったのは、魔法を使ったからだって。


 ただ、魔法を使ったことで、魔力の使いすぎと今までの疲れから倒れてしまったんだ。と、お父さんが言っていたんだけどね。本人は格好つけたいみたいだから、子犬が言った、寝ちゃっただけってことにしておくよ。


『さて、この辺で良いだろう。結界を張るから待っていろ。他の奴らに邪魔されたら面倒だからな』


 どれくらい移動したか、少し開けている場所に着くとお父さんが止まり、私たちを降ろしてからひと吠えする。すると、私たちの周りを、薄いベールのような膜が包んだよ。


『うむ、これで良いだろう。よし、それではここからは、お互いに何があったか話をしようではないか。お前たちが話しやすいように、まずは我々の方から話をしよう』


 こうして始まった、お互い何があったのか、これまでの経緯の話。


 子犬は、ここからもっと離れた森から誘拐されて来たらしい。どうしてこんなに強そうなお父さんがいるのに、誘拐されてしまったのかというと。


 子犬が誘拐された時、お父さんは仲間の魔獣に問題が起きて、そっちの対応をしていたんだって。ただ、子犬の側にはお父さんの代わりに、他の魔獣についていてもらったみたい。


 でも突然、密猟者たちが子魔獣たちを襲ってきて。子犬の側にいた魔獣が子魔獣たちを助けるため、ちょっと子犬から離れることに。その時に、子犬は攫われちゃったらしいんだ。たぶん計画的だったんじゃないかって。


 それで、問題を解決して戻って来たお父さんは、子犬が誘拐されたことを知り、気配と匂いをたどり、ここまで追ってきたんだ。


 そして、子犬の方だけど。子犬は子犬で、絶対にお父さんが来てくれるのは分かっていたけれど、ずっと捕まえられっぱなしは嫌だと、この森で密猟者たちを攻撃し逃げたらしい。


 攻撃は熱攻撃をしたって。熱攻撃? と思って聞いてみたら、まだ強い魔法は使えないから、手や足に火魔法を集中させて、密猟者たちの顔や腕や足に、その火魔法を集中させた手足をくっつける攻撃をしたって。


 実際に木の幹にやってもらったら、焼印みたいに子犬の手形と足形がついたよ。手形と足形……。


 とはいえ、可愛い攻撃に見えるけれど、実際にはかなりの熱らしく、密猟者たちが熱と痛さに苦しんでいるうちに子犬は逃げ出し、隠れたところで私たちと会ったという流れらしい。


『完璧な攻撃だった。また来たら、別の攻撃もするつもりだった。残念』


「そか……」


 どんな攻撃をするつもりだったんだろう? と、まぁ、攻撃のことは今はおいておいて。


「でも密猟者は、なんであなただけ誘拐したんだろうね。他の小さな魔獣たちも襲ったのに、その子たちは連れて行かなかったんでしょう?」


『それはパパが魔獣王だから』


『それは我が王だからだな』


 お父さんと子犬の声が重なる。って、今なんて言った? 魔獣王だって言わなかったか?


「王? 王様?」


『ああ、我はディバインフェンリル。全ての魔獣の頂点に立ち、治め、率いる存在、魔獣王だ』


「ふおぉぉぉ!! 魔獣王!? 魔獣……王?」


『キキィー!! キキ……?』


 私は思わずじっと魔獣王を見つめてしまった。ルーファスも、たぶん私と同じことを思っているんじゃないかな。


 いろいろな本に登場する魔獣王。でも、伝説とまではいかないけれど、とても神秘的な存在で、出会うことはほぼ不可能とされている存在。


 そんな魔獣王が今、私たちの目の前にいる、と感動と驚きで、思わず大きな声を出した私。でもそのあと思わず、本当に魔獣王? って思っちゃったんだよ。だって今の魔獣王の姿は、さらに小さくなって、ゴールデンレトリバーみたいになっていたから。


 確かに大きな姿の時は、毛は純白で、こう、神聖な光が体から溢れているって感じで。あの時に魔獣王だと言われていれば、魔獣王!! って感動したんだろうけど。今はどこからどう見てもゴールデンレトリバー……。


 本当に魔獣王?

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