第3話 逃げた先での出会いと、またまた問題発生!?
『キキッ!!』
「どこに行ってたの?」
『キキィ!!』
「……こっちに行くの? 分かった!」
話は後とばかりに、私についてこいと言ってくるルーファスに、私は力を振り絞り歩き始める。そうして数分も早歩きすれば、大人の腰ほどの花木が集まって生えている場所へ出たんだ。
「ここ?」
『キキッ!』
ルーファスがその花木のところへ走り、ある場所を何か所か示してくる。それは花木と花木の間にできた、子どもなら入ることができる隙間だった。
『キキィ!!』
「どの隙間からでも良いから入れってこと?」
『キキッ!!』
「分かった!!」
私はすぐに、1番の入りやすそうな隙間を選び、匍匐前進で進んでいく。そんな私の後ろを、ルーファスは花木の葉っぱを置きながらついてくる。たぶん私たちの痕跡を、少しでも消すためだろう。
距離はだいたい2メーロルくらいだったかな。花木は奥に行くにつれて、だんだんと背が高くなり、大人の腰よりも、ぜんぜん高くなって。そしてそこまで進むと、私が座っても余裕のある隙間に出たから、私たちはそこで止まったんだ。
『キキッ!!』
「ここに隠れるのね! 分かった! ……て、え?」
頷き息を整えながら、周りを確認しようと思った私。でも、隣を見た瞬間だった。
私の50センチくらい向こう、花木の隙間から、小さな子犬が『ふう』とため息を吐きながら出てきて、そのままあぐら座りをしたんだ。まさかの出来事に、思わず顔を見合わせる私とルーファス。
と、その私たちの動きに何かを感じたのか、子犬もこちらを見てきて、私たちの存在を知ると、ビクッと震えたよ。
でも、驚いたのも一瞬で、それよりも、なんでここに子犬が? という私たちの思いと同じで、子犬も、どうして私たちがここにいるんだって思いの方が強かったんだろうね。なんともいえない表情で、私たちを見てきたんだ。
ただ、見つめ合うこと数秒。なんか感じるものがあったっていうか、密猟者たちが探しているのは、この子犬だと確信した私。それとなくルーファスに言ってみると、ルーファスもそう思っていたみたいで頷いたよ。
それから子犬の方も、私たちの格好を上から下まで見たあと、ルーファスに何かを聞いてきて。ルーファスがそれに頷くと、ふーんという顔をして、それから私の隣に来て座ったんだ。そして次の瞬間、私たち3人の体が淡く光ったの。
驚き動きそうになる私。でもルーファスに止められて、子犬にも動くなとジェスチャーで言われて、なんとか動くのを我慢する。と、光が消えてすぐだった。
子犬に気を取られていて気づくのが遅れた。すぐ後ろまで密猟者たちが来ていて。密猟者たちは花木を、ガシガシとむしり始めたんだ。
私は微動だにせず、ルーファスと子犬も、何も言わずに私にくっついている。
「おい、いたか!!」
「こっちにはいねぇ!!」
「そっちはどうだ!?」
「こっちもダメだ!!」
「じゃあ、そっちは!?」
「今確かめる!!」
花木を掻き分け、男が近づいてくる。そして数秒後、私たちの頭の上から、男がこちらを覗いてきた。
見つかった!! とルーファスと子犬に添えている手に力が入る。でも……。
「こっちにもいない!!」
え? 私は目を開けて男の方を見る。すると、男と完璧に目が合いドキッとしたよ。だけど……。
「周りにもいないか!?」
「ああ!!」
「よし、それじゃあ、向こうを探すぞ!!」
男は私たちが見えていないかのように、私たちに何の反応も示さず、周りを確認したあと、サッサと仲間たちの元へ戻ってしまったんだ。そして少しずつ離れていく男たち。ドキドキが止まらず、動くことができない。
と、ここでまた男たちが動いた。というか、遠くから、
『グガァァァァァァッ!!』
という、今度こそ魔獣の大きな鳴き声が聞こえてきて、それに男たちが反応したって感じかな。
「チッ、追いつかれたか!! くそっ、奴が子を見つけられなければ、まだ俺たちにチャンスはあるが……ダメだろうな。おい!! 一旦逃げるぞ!!」
「おい、早くしろ!!」
「あれだけ遠くにいたはずなのに!?」
「急げ!!」
「俺たちの存在を、奴はしっかり認識しているだろう。早くここから逃げないと。すぐにやられるぞ!!」
なんてことを話しながら、バタバタと私たちから離れていく密猟者たち。そうして数十秒もすれば、もう誰の声も聞こえなくなったんだ。
ルーファスがもう大丈夫と、私にジェスチャーでいってくる。それに、一気に力が抜ける私。でも……。
「どうしたの!?」
私が子犬から手を離した途端、子犬がパタリと倒れてしまったんだ。
「た、大変!! ルーファス、光の石を出して!」
ルーファスが空間から光の石を取り出す。光の石は、衝撃を与えると光を放つ石で、大きさによって光の強さも、光る長さも変わるんだ。ルーファスが出してくれたのは、そんなに明るく光らない、小さな光の石で、今、目立つわけにはいかないからちょうど良かった。
「どうしたの、しっかりして!」
光の石に別の石をぶつけて衝撃を与える。そして光った石で子犬を見てみれば、子犬は大きな怪我はしていないものの、擦り傷だらけで、荒い息をしながら倒れていたんだ。
「わわわ!? 大変!! ルーファス、ポーション出してポーション!!」
慌てる私に、ルーファスも慌てて、すぐにポーションが出せず、空間からいろいろな物を出してしまったから、私たちの周りは物だらけに。でも、なんとか回復のポーションを出してくれて、私はそれを急いで子犬の体全体にかける。
ポーションは、いろいろな種類のポーションを、初級のものから高級のものまで、たくさん拝借して来たからね。今ので治らなければ、すぐに次のポーションを使えるよ。
「ど、どう?」
『キ、キキィ?』
私もルーファスも、次のポーションを手に、子犬の様子を見る。と、子犬の擦り傷が、どんどん治り始めて、数分後には完璧に傷は癒えて、呼吸も普通に戻ったんだ。そして……。
『……ん? あれ? 苦しくない?』
子犬は目を覚ますと立ち上がり、水を飛ばす時のようにブルブルと体を揺らしてから、私たちの方を見て来たよ。
『……それ、元気になる水?』
「う、うん」
確かに、元気になる水ではあるからね。
『僕を治してくれたの?』
『キキッ!』
『そか、ありがと。……あいつらどっか行った?』
「うん!」
『なら良かった。見つかったかもと思ったけど、僕の魔法、ちゃんと効いた』
「魔法?」
『ぐうぅぅぅぅぅぅ』
魔法について聞こうとした私。でもその瞬間、子犬のお腹が大きく鳴った。
『あーあ、お腹すいたなぁ』
「あ、えと、ご飯ある。一緒に食べる?」
『本当!? 食べる!!』
こうして私たちは、先にご飯を食べることになったんだ。
そして、ご飯を食べ始めて20分ぐらい経った頃だった。
『グガアァァァァァァ!! お前たちか!? 我が息子を攫ったのは!! 全員八つ裂きにしてくれるわ!! 簡単に死ねると思わぬ、こ、と……は?』
「は?」
『キ?』
『もぐもぐもぐもぐっ!!』
顔に食べカスを付けながら、パンを口に含んだままの私とルーファス。それからご飯を食べ続ける子犬。そんな私たちの前に、象の3倍はあるんじゃないかと思われる、犬のような生き物が現れて、は? というような表情で私たちを見てきたんだ。
はぁ、今度は一体何? もう、いいかげん落ち着かせて欲しいんだけど。




