第2話 一難去ってまた一難
どうしてこうも問題が起きるのか。私たちは今、なるべく音を立てないように、でもある人たちからなるべく離れられるよう、早歩きで森の中を歩いている。
騎士たちから逃げることができ、そのあとは今日の寝床を探していた私とルーファス。それで、探し始めて1時間30分くらい経った頃、けっこう良い場所を見つけたんだ。
どんな場所かというと、大きな岩の上には土が積もり、そこから何本もの木が生えていて、岩の側面には、5歳の子どもなら悠々と入れる小さな穴が開いてる、という場所でね。
今日だけなんて言わず、森の外へ出る道を見つけるまでは、何度かお世話になれそうな場所で、私はかなりホッとしたよ。
でも、見つけて少しして問題が起きたんだ。最初に、異変に気づいたのはルーファスだった。
私とルーファスは、少し休憩してから寝床を整えようと思ってね。それで休憩が終わって、いざ穴の掃除をしようと、ルーファスに空間から箒を出してとお願いしようとしたんだけど。
急にルーファスが穴の外へ出て、姿勢を目一杯正し、耳をピクピク動かしながら、何かの音を聞き始めたんだ。
私はルーファスのこの行動が何なのか分かっていたから、何も聞かずルーファスのそれが終わるのを待ったよ。
ルーファスのこの行動は、私たちの近くで、何か変な音が聞こえた時、何の音か確認する行動で。
家にいた時も、父様たちが近づいてきた時や、使用人たちが近づいてきた時に、いち早くその音に気づいて。その音を確認したあとは、私に隠れろとか、向こうに行った方が良いとか、いろいろ教えてくれていたんだ。
だから、この行動をしたってことは、何か不審な音が聞こえたってことで。こういう時は、ルーファスがしっかりと音の確認ができるように、静かにしてないとダメなの。
そうして、ルーファスの確認が始まって5分。ルーファスは体をビクッとさせたあと、急いで私の肩に乗ってきて、草むらの方へ行けとジェスチャーしてきたから、私はルーファスに言われるまま、急いで草むらの方へ。
それから草むらの中でも、1番背の高い草のところまで行くと、今度はしゃがめと言われて、慌ててその場にしゃがんだよ。あとは、動かず声も出さず、周りの様子を伺うことに……。
すると数分後、まさかの人の声が聞こえてきたんだ。一瞬、騎士たちが戻ってきて、私を殺しにきたのかとドキッとしたよ。それから、怖がって逃げたなら、そのまま戻ってくるなよって思って、イラっともしたし。
ただ、その私の考えは間違っていて、聞こえてきたのは別の最悪だった。
「おい、早く探せ!!」
「まったく、お前がちゃんと見張ってないから、こんなことになるんだぞ!!」
「それはお前だろう!! お前が時間通りに行動しないから!!」
「だから、しょんべんに行ってくるって言ったじゃねぇか!!」
「馬鹿野郎!! 俺は必ず3人で見張っていろと言ったはずだぞ!!」
「ぐあっ!!」
「ぐっ!!」
「ガハッ!!」
「あれは幼体でも奴の子どもだから、それなりに力を持っていると説明したのに。それをお前たちは。いいか! もしも見つからなければ、その時は覚悟しておけ! それなりの責任をとってもらうぞ!」
「親分! こっちにはいません!!」
「よし! 向こうを探すぞ!! いいか、奴は隠れるのが得意なんだ。少しの変化も見逃すな!」
「親分、あれはそんなに珍しい魔獣なのか?」
「お前、本当何も知らないんだな」
「あれを売れば、俺たちは一生かかっても使い切れないほどの金を手に入れられる」
「そんなに!? じゃあ、もう危険を冒して、魔獣を密輸しなくても良くなるのか」
「ああ。それに他も、いろいろと色をつけてもらえるだろうさ。よし、そこを探せ!!」
と、まぁ、聞こえてきたのは、魔獣の密猟者たちの会話だったんだ。どうも密猟者たちは、捕まえた魔獣を逃してしまい、探しているようだった。それもかなりの大物のね。
そして……。
「よし!! 次は向こうを探すぞ!!」
少し経つと、私たちのいるところとはちょっとずれた方角を探していた密猟者たちが、ついに私たちのいる方へ向かってきたんだ。だから私たちは今、逃げているところなの。はぁ、せっかくいい寝床を見つけたっていうのに。
ルーファスの先導で、どんどん逃げる私。その後を追うように、探しながら進んでくる密猟者たち。あまりにもピッタリついて来るものだから、もしかして私たちに気づいて、追ってきてるのかと思うくらいだったよ。
『キキッ?』
逃げ始めてどれだけ経ったか。少し前を走っているルーファスが、私の方へ戻ってきて、私に大丈夫か聞いてくる。
「大丈夫、まだ歩ける!!」
『キキィ?』
ルーファスが心配そうな顔で私のことを見てきた。明らかに私の歩くスピードが落ちているからだ。それに早歩きで逃げているけど、5歳児と大人の足だからね。密猟者たちとの距離が、かなり縮まってきちゃったんだよ。
だから、私も大丈夫とは言ったものの、内心はドキドキしまくりだった。まったく、人が恐れて近づかない魔の森なんだから、入ってこなければいいのに。せっかく騎士たちから逃げられたのに、お前たちに見つかったら、殺されるか奴隷として売られるかもしれないなんて。
……でも、ここは、見つかった時のことを、考えておかないとダメかもしれない。私はそう思い、ルーファスに話しかけた。
「ルーファス、もしも私が奴らに見つかって捕まったら、ルーファスだけはちゃんと逃げてね」
『……』
「捕まるつもりはないけど、でも、もしかしたらそうなるかも。先に言っておくね。……その時は、最後まで一緒にいられなくてごめんね」
『……』
私の言葉に何も言わず、じっと私を見てくるルーファス。でも、沈黙の後だった。
『キキッ!!』
突然ルーファスが、私に止まれってジェスチャーしてきたんだ。
「え? 止まるの?」
『キキィッ!!』
「え、ちょっ!? ここで待つの!?」
ルーファスの言う通り止まった私。すると今度は、その場を動かないでというジェスチャーをして、自分だけどこかへ走って行っちゃったの。
突然の指示にビックリしたよ。ただ私は、ルーファスの行動は全て信用しているから、言われた通りに待つことにして、すぐ横の草むらに隠れたんだ。
ルーファスは一体どこへ行ったのか。そして、止まったことで、どんどん近づいてくる密猟者たちの声に、いくらルーファスを信用しているとはいえ、この時間は本当にドキドキだった。
そうして、密猟者たちの声がかなり近くまで近づいてきた時、
『キキッ!』
「ルーファス、こっち!」
ようやくルーファスが戻ってきたんだ。




