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第1話 転生、最弱魔法、小さな家族との出会い、そして始まる逃亡生活?

「おい、ささっとやって帰ろうぜ。こんな危険な場所、ちんたらしてたらこっちが襲われっちまう」


「お前が言われたんだから、お前がやれよな」


「分かってるよ。チッ、ようやく仕事を任されたと思ったら……。いいか、一瞬で殺してやるから、そこを動くなよ」


 5人いる騎士のうちの1人が、私たちの方へゆっくりと近づいてくる。今、私がいるのは、じめっとした薄暗い森の中。そして今まさに、私と私の家族魔獣は、この騎士たちに殺されそうになっている。


 何でこんな状況に陥っているのか。それは1ヶ月ほど前に遡る。


 私の、この世界での名前はフィオナ・ドレイファス。ドレイファス伯爵家の娘として生まれ、今は5歳だよ。でもその前は、地球の日本で、高橋凛として生きていたんだ。


 凛だった頃の私は、小さい頃に両親を亡くし、親戚の家をたらい回しにされ、最終的には施設に入れられることに。

 そして施設でのいじめになんとか耐え抜き、ようやく就職できたと思ったら、その会社は最悪なブラック会社で。それでも、すぐに辞めることができなかった私は、その会社で働くしかなかったんだ。


 でも、そんなある日、何日目か分からない連日の残業で、ふらふらになりながら家に帰っていた私は、近づいてくるトラックに気づかず、そのまま……。


 そう、私はその時に死んだの。いや、死んだはずだった。気づいたら私は、お婆さんの腕に抱かれていたんだよ。


 最初は何が起こったのか分からなかった。だって、目の入るものは知らないものばかり。それどころか、漫画やライトノベル、映画に出てくるような魔法を、みんなが使っていて、これには本当に驚いたよ。


 ただ、時が経つにつれ、最初に私を抱いてくれていたお婆さん、私の乳母のレイラが、私にいろいろと話を聞かせてくれて、この世界のことを知ったんだ。

 

 私は、武力に定評があり、本人たちも力こそすべてと考えているドレイファス家の娘として生まれたこと。

 そしてこの世界が、それこそさっき言った、漫画やライトノベル、映画のような、魔法や剣を使い、動物の代わりに魔獣という生き物が闊歩する、異世界のような世界だということをね。


 何で、そんなことが起きたのかは分からない。でも、こうして生まれ変わることができたんだから、この世界では幸せに暮らす! なんて、初めの頃はそう思っていた私。だけど、そう上手くはいかなかった……。


 まぁ、なんてことでしょう。両親は確かにそこら辺の貴族たちよりも、戦闘能力に長け、かなりの力を誇っていたけれど。性格は最低最悪で、住民からは嫌われまくり、貴族の間でも煙たがられるほどの嫌われっぷり。


 それから、子供の私には目もくれず、気にするのは、私が5歳になった時に授かる力のことばかりで、私のことを本当の家族のように育ててくれたのはレイラでね。だから私は、なるべく両親には近づかず、ずっとレイラといたんだ。


 でも、その時はやってきた……。


 この世界では5歳になると、生活魔法以外の特別な魔法を授かることができるんだけど、その力を確かめるために、鑑定の儀というものを受けるんだ。そして5歳になった私も、当然それを受けたの。


 まぁ、この時ばかりは、力こそ全ての父様も母様も私にへばりつき、目を輝かせながら結果を待っていたよね。


 そうして、鑑定の儀の結果は……。うん、私にとっては嬉しいもの。でも父様たちにとっては最悪なものだった。


 私が授かった能力は【召喚】と【魔獣育成】で。召喚は自分と相性バッチリの魔獣を召喚することができ、相手の魔獣が自分を認めてくれたら、契約して家族や相棒になれるんだ。


 と、これだけ聞くと、力が全ての父様たちは喜びそうなものでしょう? でも、レベルが問題だった。


 魔法には1~5までレベルがあって、訓練することで、レベルが上がっていくんだ。だから、鑑定で能力を見ると、【召喚】レベル1/5とか、【火魔法】レベル1/5とか表示されるんだけど。

 人によって最大レベルが違っていて、1/2とか、1/4とかもあって。つまり、どれだけ強くなれるかには、最大レベルも関わってくるんだ。


 ただ、他にもあるレベルがあってね……。私にはこの数字がなかったの。


 これは、レベル1から上がりようがないって時に、数字の表示がされないんだけど。私は【召喚】と【魔獣育成】どっちも数字がなかったんだ。


 それを知った時の父様たちといったら、まぁ。考えうる最悪な言葉を私に向かって言いまくり、殴られまくってね。家に帰ってからレイラがすぐに回復魔法をかけてくれたから助かったけど。


 そしてこの日から私は、庭にある荷物小屋、その隣にある小さな小屋で過ごすことになったんだ。力のない人間はいらないってね。


 でも、一応魔法を確認するってことになって、習ってもいない魔法を使うことになり。できるわけないだろうと思いながら、召喚魔法を使ったんだ。そうしたら、なんと魔法は成功。私はレイラ以外の、大切な家族を得ることができたの。


 召喚されたのは、オコジョに似ている魔獣、コジョ。毛色が真っ白で、珍しい子だよ。普通は茶色がベースだからね。でも、どこにでも生息している魔獣で、強い魔獣でもない。


 ただ、珍しいとか強くとか、そんなことは関係なく、私はこのコジョと目が合った瞬間、この子は私の家族だとはっきり認識して。コジョも私をそう思ってくれたみたいで、すぐに私と契約してくれたんだ。もうね、この時の私はとても幸せだったよ。


 でも、そうじゃないのが父様たちでね。やっぱり強力な魔獣を呼び出せなかった私を罵り、殴ったあと、2度と会いにくることはなくなったんだ。


 まぁ、別に私も会いたいとは思わなかったし、小屋でも一応は寝ることができて、レイラが引き続きお世話をしてくれたから、困ることはなかったかな。こうして私は、コジョにルーファスと名付けて、小屋でそれなりに楽しく暮らし始めたの。


 でも、ルーファスと契約してから2週間して、レイラが慌てて私にある情報を持ってきたんだ。それは、どんな情報かというと……。


 力こそ全てと考える父様たちが、私が力を使えないと外に漏れるのを危惧し。バレる前に人々が恐れ近づかない魔の森へ連れて行き、私たちを密かに始末することを決めた、というものだった。


 それを聞いた時の私の感想は、怖いというよりも、あー、まぁ、あの両親なら、そうなりますよねって感じだったかな。


 でも、レイラは今すぐに逃げましょうと、私をなんとか逃がそうとしてくれてね。ただ私は、レイラに何もしないでと止めたんだ。


 レイラが話を聞いたのはたまたまだったらしいけど、もし話を知っているとバレたら? そしてもしも逃がそうとしているのがバレたら? 父様たちは絶対にレイラを見逃さないもの。だから私は、レイラに何もしないように言ったの。


 それでも、なんとか私を逃がそうとしてくれたレイラ。でも、私が考えを変えないと、私の思いをわかってくれて、途中からは何もせずに、いつも通りの生活に戻ってくれたんだ。きっと、かなり辛かったと思う。


 ただ、私は別に、自分では何もしないとは言っていないからね。森に連れて行かれた時、なんとか逃げることができたら、その時は森から出て、ルーファスと2人でどこかで暮らそうと。その時に備えて、何か準備をしようと考えたんだ。


 そうしたら、私は言葉が分からず、声色やジェスチャーで、ルーファスの言葉を理解しているんだけど、ルーファスは私の言葉を理解しているみたいで。準備について、それとなくルーファスに話していたら、それを理解してルーファスが動いてくたの。


 なんとルーファス、空間魔法を使えてね。空間に何でもかんでも、しまうことができたんだ。


 最初にその魔法を見た時は驚いたよ。だって大きなテーブルと椅子を、簡単に空間にしまったんだから。


 ただ、それ以上に、その時のルーファスを思い出すと……。ルーファスは物をしまったあと、別の椅子の足部分に手を付くと、もう片方の手は腰に当てて。


『どう、こんなことできますけど?』


 という感じに、ニヤッと笑ったんだ。その姿の面白いこと。そして私がニヤリと笑い返すと、さらにニヤリ顔になって……。


 それからは何でもかんでも、空間魔法にしまってもらったよ。ちなみに、どれくらい入るのか聞いたら、気にせずどんどん入れろって言わてね。どうも、制限がないらしくて。だからお言葉に甘えて、どんどん入れさせてもらったんだ。


 あと、小屋に押しやられたけど、場所が荷物小屋の隣だったのも良かった。


 夜中に小屋から抜け出して荷物小屋に行き、使用人たちが使うマットや枕、毛布。それから最初にルーファスがしまって見せてくれたテーブルやイスは元に戻したから、荷物小屋に置いてあった小さなテーブルとイスを拝借。他にも生活に必要な物を片っ端から、私とルーファスの2人分入れていったんだ。


 こうして準備を進めること2週間。ついにその日が来たの。その日、なぜか私たちのところへこなかったレイラ。代わりに来たのは5人の騎士と父様たちで。心配になってレイラのことを聞いたら、この日から兄の世話をすることになったと言われたよ。


 確かめたかったけれど、そんなことが許されるわけもなく、こればかりは、話を信用するしかなかった。


 それから私たちの方は、父様たちは私に、新しい家に移動させると言っていたけれど、私を殺すために魔の森へ連れて行くんだろうと思いながら荷馬車に乗せられて。

 思った通り魔の森へ連れてこられたあとは、途中からは徒歩で、まぁまぁ、森の奥の方まで連れてこられたんだ。


 そして今、私とルーファスは、殺されそうになっているところだよ。


 結局、逃げ出す方法を思いつくことができず、道中も逃げられなかったし。今もどう騎士たちの攻撃をかわして逃げるか、全く考えつかない。私たちはこのまま殺されて終わるの? せっかくルーファスが、いろいろと準備してくれたのに?


 騎士が剣に手をかける。


 せめてルーファスだけでも、私が死んだらすぐに逃げて欲しい。小さいから、隠れれば見つかりにくくなるだろうし。なにより、私が召喚したせいで、本当は長く生きられるはずだったのに、私のせいで死んでほしくない。


 そう思いながら、私はぎゅっとルーファスを抱きしめた。


 騎士が剣を振り上げ、私はキッと騎士を睨みつける。そんな小さな私の睨みに、一瞬騎士が怯む。と、その瞬間だった。


 グオォォォッ!!


 いきなり木々が揺れだして、大量の葉が騎士たちに向かって飛んできたんだ。しかも、魔獣の声か、それとも強い風の音がそう聞こえるのか、魔獣の唸り声のようなものが、そこら中から聞こえてきて……。


「な、何だ!?」


「もしかして、魔獣たちが匂いを嗅ぎつけて寄ってきたんじゃねぇか!?」


「お、おい、早く殺せよ!!」


「殺したら、血の匂いで余計に寄ってくるんじゃねぇか? 剣を綺麗にしてる時間もないし。お前が代わりにやれよ!」


「何でだよ! お前の役目だろう!」


 グオォォォォォォッ!!


「ヒッ!?」


「おい、もう行くぞ!! 魔獣が来てるなら、奴らにやらせればいい!! 俺たちはその間に逃げるんだ!」


「だが、何か証拠を持って帰れと言われただろう!」


「知るか!! 殺したあと、すぐに魔獣に襲われて、丸呑みにされたとでも報告すれば良いだろう!!」 


 グガァァァァァァ!!


「ヒッ! い、行くぞ!!」


慌てて逃げていく騎士たち。そして取り残される私たち。声らしき音はまだ続いている。


「私たちも逃げよう!」


 ハッとし、そう言って立ち上がると、すぐにルーファスが肩に乗ってきて、私たちは騎士たちとは違う方向に走り始める。騎士たちの方を振り向かずに、できるだけ離れられるようにね。


 そうしてどれだけ走ったか、途中で疲れて歩いたけど、30分は経ったと思う。すると、肩に乗っていたルーファスが私の頬を叩いて、止まるように言ってきたんだ。


「どうしたの? 少しでも逃げないと」


『キキ!』


 顔を振るルーファス。それから何かを聞くような仕草をする。何? と思いながら、周りを気にしてみる。と、さっきまで聞こえていた音が聞こえなくなっていた。


「魔獣、いなくなった?」


「キキ!」


 顔を振るルーファス。それから私の肩から降りると、少し大きめの石に葉っぱを何枚か咥えて登る。そして石の上に葉っぱを置くと、その葉っぱがすぐに吹き飛んだんだ。それから私たちの周りに、少し強い風はひゅうひゅうと吹いて……。ん? この音の感じ?


「……もしかして、さっきのルーファスがやったの? ルーファスの風魔法?」


『キキッ!!』


 うんうん頷きながら胸を張り、胸に手を当てるルーファス。


「ルーファス、こんなすごい魔法も使えたんだね!! 助けてくれてありがとう!!」


『キキィ』


 私はルーファスを抱きしめたあと、たくさん頭を撫でてあげると、ルーファスは後ろ頭をかきながら照れまくる。


 こうしてルーファスのおかげで逃げることができた私たちは、無事を喜んだあと少しだけ休憩して、また動き出したんだ。


「よし! 騎士たちももういないし、これからは今日の寝床を探そう! せっかくルーファスに助けてもらったんだから、魔獣に狙われにくそうな場所を見つけないとね!」


『キキッ!!』


 私が立ち上がると、ルーファスが肩に乗ってくる。そうして森の中を歩き始める私たち。


「それにしても、小さいルーファスの魔法にあんなに怯えるなんて、ダメな騎士たちだね」


『キキィ、キィキィ』


 ルーファスがうんうん頷く。


「騎士なんだから、もっとしっかりしないとダメだよね。でも、ダメダメだったから、私たちは逃げられたんだけど。私たちは、しっかり生きていこうね! まずは、この森から無事に脱出しよう!」


『キキッ!!』


「逃げる時の騎士たちの姿、面白かったね」


『キィーキ』


「ふふふ」


『キキィ』


「へへへへへ」


『キュキュキュキュキュ』


 ん? なんか今、近くにいたリスに似ている魔獣リースに、何だこいつら、みたいな顔で見られてたような?

お読みいただきありがとうございます。

この作品に興味を持った、楽しい、続きが読みたい

そう思っていただけましたら、

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