第12話 魔獣王のやらかしで大惨事?
『一体何を考えているんですか!! あれほど私たちは、誰かが必ず一緒にいる時に、魔法を教えてくださいと行っていたのに。あなたなの耳は飾りですか!? それとも、私たちの話など、聞くに値しないとでも!?』
『い、いや、そんな事はないぞ。お前たちの話は、いつも的を得ているものばかりだからな。我はとても助かってい……』
『それなら何故、あなたは今、フィオナに魔法を教えていたのです!! ハーヴィー!! ミナージュ!!』
「は、はい!!」
セイリーさんの声に 慌てて返事をしながら、ビシッ! とその場に立つハーヴィー。
「セイリー、何!?」
ハーヴィーと違って、しっかりと応えるミナージュさん。
『フィオナたちはどう? 大きな怪我は!?』
「みんな擦り傷だけだから。すぐに魔法で治すわ!!」
『気づいていない怪我があるかもしれないから、一応鑑定をしてもらって!! 私はこっちでバカの相手をしないといけないから!!』
「分かったわ!! ハーヴィー、セイリーにびびっていないで、鑑定ができる魔獣を連れてきて!!」
「……」
「ハーヴィー!!」
バシィィィッ!!
「いたぁぁぁ!? って、は、はい!!」
セイリーさんに気迫に気を取られ、お姉さんに話しかけれていることに気づかなかったハーヴィーが、ミナージュさんにお尻を蹴られて、ようやく我に返る。
「話を聞いていたの!? 私が今、何て言っていたか分かる?」
「あ、か、鑑定ができる魔獣を連れて来いって」
「聞いていたのなら、早く行きなさい!!」
「は、はい!!」
何だ、聞いてたのかよと思いながら、走っていくハーヴィーを見送ったあと、私はミナージュさんに話しかけたよ。
「ミナージュさん、私、大丈夫。ルーファスとラウルをもっと診てあげて。2人とも私よりも体が小さいから心配」
「フィオナ、大丈夫よ。3人一緒に鑑定することができる魔獣が、何頭かいるから。みんな一緒に診てもらいましょう」
へぇ、そんな凄いことができる魔獣が何頭もいるんだ。
病気や怪我とかの鑑定って基本、1人ずつしかできないはずだけど。やっぱり、この森に住んでいる魔獣は強い魔獣ばかりだから、そういう難しいこともできるのかな? それともここに住んでいる魔獣だからこそできるのか。と、それはさておき……。
私は、今度はセイリーさんの方を見る。正確には、怒れるセイリーさんと、しょぼくれ項垂れている、ゴールデンレトリバーのレジナルドをね。
『まったく、あと何回、同じ間違いをすれば、あなたは理解できるのか。しかも今回は、前回やらかしてから、少ししかたっていないっていうのに。挙句、前よりも酷いことになっているではありませんか!!』
『い、いや、ちょっと待ってくれ。今回は、問題ないと思ったのだ』
『その言い訳も、毎回聞いています!! 問題ないはずだった、途中までは問題なかったのだ、問題ない方法をやったのに。毎回こうやって、問題ないと思ったと言ってきますが、毎回問題だらけではありませんか!!』
『いや、本当、今回我は、ほとんど何もしていな……』
『言い訳はよしなさい!!』
バシィィィッ!!
『グハッ!?』
そうしてセイリーさんに蹴り飛ばされるレジナルド。……魔獣王なのにめちゃくちゃ怒られ、蹴り飛ばされるのか。まぁ、あれだけやればね。しかも、危険性が分かっていたのにやっやんだから。ほら、ルーファスもジト目でレジナルドを見ているし。ラウルは……、
『いつものパパねぇ』
って、まったく。レジナルドは何で勝手にやったかな。
一体何故、レジナルドはセイリーさんに、めちゃくちゃ怒られているのか。そして他の面々は、どうしてこんなに慌てているのか。それは、レジナルドが私に、魔法を教えたことが原因なんだ。
あの時、そう、私が魔法を放とうとした時、セイリーさんは私たちに、止めるように叫んだでしょう? その瞬間、それは起きたの。
私は、ファイヤーのような火魔法を思い浮かべていたのに、私の手から放たれたのは、火炎放射のような、勢いよく噴き出す炎でね。それが草原の草や土を焼きながら、一直線に進んでいったんだ。
そして私たちといえば、レジナルドはヤバいって顔をしながら、私を助けようとしたんだけど間に合わず。
私は、レジナルドのその表情を見ながら、魔法の風圧で後ろにコロコロ転がり。ルーファスとラウルも、離れた場所にいたけれど、やっぱり魔法の風圧で後ろに転がっちゃってね。そんな私たちを、セイリーさんとミナージュさん、ハーヴィーが助けてくれたんだ。
その時のセイリーさんの表情と言ったら。私たちには優しく、大丈夫と聞いてくれたのに、レジナルドの方を見ると、般若のような表情に変わって。その瞬間、レジナルドはゴールデンレトリバーに……。
それからは、箱庭の近くにいた、広範囲水魔法を使える魔獣たちを呼んで、草原の水を消してもらったり、私たちは治療を受けたりして。そしてレジナルドは、セイリーさんに怒られているところなんだよ。
まぁ、レジナルドは、怒られても仕方ないことをしたからね。何だったら、私だって怒りに行きたいくらいだし。セイリーさんが代わりに怒ってくれているから、そっちには行かず、治療を受けているけどさ。
レジナルドね、他の大人魔獣が誰もいない1人の時は、絶対に子供たちに魔法を教えるのは禁止って、みんなから言われていたらしいんだ。それはどうしてか。それは、さっきの私たちみたいなことが起こるから。
レジナルドもセイリーさんも、他の魔獣たちも、子魔獣たちによく魔法を教えるんだけど。レジナルド以外は、1つずつ丁寧に、その子に合わせた方法で、少しずつ鍛錬を始めるんだ。
習い始めに無理な魔法を使うと、体を壊してしまったり、魔法が暴走して、大事故につながったりと。まぁ、いろいろと大変なことが起きてしまうことがあるし。
何より、それを経験することで、子魔獣たちがショックを受け、魔法を怖いものと思ってしまい、その後の鍛錬に支障ををきたすかもしれなくて。
だから、習い始めはみんな、最新の注意を払いらしいんだ。それなのにレジナルドときたら……。
『ぐっ……。わ、我の話も聞いてくれ』
蹴り飛ばされたレジナルドが、ヨタヨタと立ち上がり、こっちに向かって歩いてくる。と、セイリーが、そんなヨタヨタのレジナルドに向かって行って、今度は張り手をくらわせた。
バシィィィィィィッ!!
『はぶっ!!』
変な声をだし、面白い顔になりながら、また飛ばされたレジナルド。それに笑うルーファスとラウル。レジナルドは今度は立ち上がらずに、その場で話し始めたよ。
『わ、我もこんなことになるとは思わなかったのだ』
『はぁ、やっぱりいつもの言い訳と変わらないではないですか!!』
『きょ、今日は、本当に思わなかったのだ。いつもとはそこが違う!!』
ビシッと、真面目な顔をして言い放つレジナルド。それをジト目で見る私たち。いや、思わなかったって、同じじゃん!! と、思わず心の中でツッコミを入れちゃったよ。
『我はきちんと、フィオナの魔力を抑えて魔法を使わせたのだ。これだ』
レジナルドはそう言うと、私が魔法を使う前に、どんな魔法を思い浮かべればいいか、実際に見せてくれた、あの薪を燃やしている時に出るような火がボッと出したよ。
『どうだ? 我はこの威力しか出せん魔力をフィオナから引き出し、魔法を使わせたのだ。どうだ、いつもとは違うだろう? 今日は、本当にきちんと、そこは調整したのだ。それなのに、あのような魔法に……』
『今日は?』
『い、いや、いつももきちんとやっているが、今日は特別きちんとやったということで……!』
……なんつう言い草だ。これは、いつもは適当にやっていて、問題を起こしているって言ってるようなもんだろう。
『はぁ、 あなたがきちんとやろうが、適当にやろうが、今はそんな言い訳はどうでも良いのです!! 私たちは何と言いましたか? 私たちは、フィオナの力は特別なようだから、いつも以上に注意して、何人かで見守りながら鍛錬をしていきましょう。そう言ったはずです!! それをあなたは何です!! どうしてそう、決めたことを守れないのですか!!』
『うっ……』
さらに、怒りの度合が上がるセイリーさんに、どんどん王としての威厳と迫力がなくなっていくレジナルド。
と、その時、ハーヴィーが1頭のロバのような魔獣を連れて戻ってきたよ。
「戻ったぞ!!」
「この子たちを見てもらえるかしら! 私が見た感じ、問題はないと思うのだけれど」
『はぁ、また王がやらかしたって? よし、診てみよう……。うむ、問題はないな。このまま遊びに行って大丈夫だぞ』
「そう! はぁ、良かったわ。かなり転がったから、本当心配していたのよ」
『ラウルもフィオナもルーファスも、大きな怪我をしなくて良かったな』
「診てくれて、ありがとございます!!」
『キキッ!!』
『コロコロ、面白かった』
『ハハハッ、そうか。でも今、王がやったことは、いけないことだからな? で、原因を作った王はどうしてるんだ?』
「セイリーに怒られてるわ」
『そうか。さて、今日は何回吹っ飛ばされることか』
私はレジナルドとセイリーさんの方へ目線を戻す。
『はぁ、ラウル様も、フィオナにルーファスも大丈夫だったようね』
『ふぅ、良かった良かった。じゃあもう……』
『もう? もう、何です?』
『い、いや、あのだな』
『はぁ、これ以上子供たちの前で、あなたに注意する姿を見せるのは、教育に悪いですからね。他の子魔獣たちも、興味津々に様子を見にきてしまっているし。今は一旦、ここで終わりにしますが、ここを元通りにしたら場所を変えて続きをしましょう。逃げないように、良いですね?』
『別にそこまで悪いことは……ブツブツ』
『良いですね!?』
『は、はい!!』
一旦、セイリーのお説教は終わりみたい。まぁ、燃えた場所の片付けをしないといけないからね。
『あれ? 終わり?』
『もう、吹っ飛ばされるの終わっちゃった?』
『なんだぁ、つまんない』
『ラウル、もう終わり?』
『今は終わり。でも、また後で見られるかも。みんな、あとでパパたちについていく』
『まだ、終わりじゃないんだ』
『なら行かなくちゃ!!』
『吹っ飛ばされるの面白いもんね!』
『みんなついて行こう!!』
『『『おおー!!』』』
騒ぎを聞きつけて、次々と集まってきていた子魔獣たちの、この会話よ。確かにこれは、教育に悪そうだ。セイリーさんは本気で怒っているのに、楽しんじゃってるもん。
『それじゃあ、まずはすべての火を消してしまいましょう。皆が消してくれているけれど、本来なら全てあなた1頭でやるべきことなのですからね!! 分かっていますか!?』
『分かってる分かってる』
『分かってる?』
『い、いや、~』
慌てて返事をすると、他の魔獣に見張られながら、火を消し始めるレジナルド。……これが魔獣王だとは。
『さて、火が消えたら、草を植えるか、種を蒔かないといけないわね。種は確か……』
セイリーさんがそう言いながら、私たちの方に戻ってくる。そんなセイリーさんに、急いで声をかける私。
「セイリーさん! これからここを元に戻すでしょう? あのね、そのことで相談があります!!』
『相談?』




