第11話 神獣ルーファスと初めての教えてもらう魔法の使い方
シルフェリオ……。古くからシルフェリオは、風と共に生き、自然に愛される特別な存在として知られている。風を司る、非常に希少な神獣。風の神獣として高い魔力を持つ。
世界には無数の神獣が存在しているが、その中でもシルフェリオの数は非常に少なく、実際にシルフェリオを見たことがある者はほとんどいない。
風を自在に操ることができ、強力な風魔法をいくつも使うことができる。だが、風以外の魔法も扱え、風の魔法とまではいかないが、そちらもかなり強い力を使うことができる。
そのため、昔はたくさんの種族が、シルフェリオの力を自分のものにしようと、彼らを無理やり手に入れようとした。
しかし、その行為が神獣たちの怒りを買い、国が滅びそうになると、各国の代表が話し合い。その結果、自然に契約する場合を除き、シルフェリオへの干渉を禁じる法律が定められた。
姿は個体によって異なるが、小さな魔獣の姿をしていることが多いと言われている。そのため、普通の魔獣だと思い、通り過ぎてしまっている可能性もあり、数が少ないとされているが、気づいていないだけで実はたくさんいるのでは? とも言われている。
「……」
ルーファスの空間魔法から図鑑を出してもらって、そこに書かれていたシルフェリオについて読み上げた私。
『ふむ。大体はあっているか? だが、最後。シルフェリオンは数が少ないのは確かだぞ。そして、人間はほぼ、いや、完璧に気づかずに通り過ぎる』
「……ルーファスは本当に神獣?」
『ああ、間違いない。人間でいうところの数ヶ月前に生まれたばかりだ。ルーファス、お前は今まで誰と暮らしていた? フィオナと契約する前だ』
『キキ、キキキ、キッキキー!!』
『うむ、それで?』
『キッキキ、キキキ、キキッキキ!! キィキィ』
いろいろと話しているだろうルーファス。さすがに、今のルーファスが、何て話しているかは分からないから、話が終わるのを静かに待つ。そして……。
『そうか……。もしかして、ルーファスと共にいたのはあやつか?』
「レジナルド、ルーファスは何て?」
『目が覚めたら、炎の魔獣が側にいたと。空を飛ぶ炎の魔獣だそうだ。そしてその魔獣に、自分はコジョだと言われたらしい。いや、正確にいうと、いつか自分が何者か分かる日が来るまで、コジョとして生きるように言われたようだ』
「炎の魔獣?」
『ルーファスは、変なことを言うなと思っていたようだ。毛色が違うだけで、自分はどう見てもコジョなのに、何でそんなことを言うんだろうとな』
まぁ、確かに姿は完璧コジョだもんね。
『それから、フィオナに召喚されるまでは、炎の魔獣と、周りに住んでいたコジョと暮らしていたらしい。そして召喚された時は、皆が喜んで送り出してくれたと』
「そうなんだ……。レジナルドは、炎の魔獣を知ってる?」
『まぁ、話から大体は予想できているが、あっているかは分からんからな。ここから数日のところにいる奴かもしれん。今度、確かめてこよう』
「お願いします。もし本当にその魔獣が、ルーファスの側にいてくれた魔獣なら、側にいてくれてありがとうってお礼を言いたいし。ルーファスもきっと、その炎の魔獣やコジョたちに会いたいと思うんだ」
『分かった』
私はルーファスの方を見る。
「ルーファス、ルーファスは凄い神獣だったんだね」
『キキィー』
私の膝に片手をついて、もう片方の手は後ろ頭に持っていき、いやー、それほどでもぉ、とポーズをとるルーファス。
「あ、ルーファスは真っ白くて、私も他の人たちも、コジョの変異種だと思っていたけど、神獣だから真っ白とか?」
『だろうな』
「そっか。コジョの変異種って、あんまり珍しくないでしょう? だから父様たちも、興味がなかったんだけど。珍しくない変異種と勘違いしてくれて良かったね。もし神獣だって分かったら、きっと大変なことになってたよ」
『キキィー』
嫌な顔をするルーファス。
「でも……、鑑定の時はコジョってなってたんだよね。それも私の魔法と同じで、本当の情報が見られなくなっていたから?」
『いや、それは炎の魔獣がやったんだろう。もしもルーファスが、面倒な人間に捕まり鑑定された時、神獣と分かれば面倒なことになると考えてな』
「そんなことできるの?」
『我くらい力があれば、できないことはない』
炎の魔獣、ルーファスの正体がバレないようにしてくれたのはありがたいけど、レジナルドくらい力があればって……。一体どれだけ凄い魔獣が、ルーファスの面倒を見てくれていたのかな?
『それでだ。フィオナの魔法は、全ての魔法が繋がっていると言ったことだが。魔獣育成を一緒に授かったのは、召喚した魔獣を強くするため、彼らに力を与えるために、必要なものだからだろう。我の知っている召喚魔法を使える者たちも、半分以上がこの魔法を共に授かっていた』
魔獣育成。一応自分でも、父様たちに隠れて調べたんだよね。魔獣育成で私ができることは……。
魔力を与えることで、神獣の魔力の質を高める。神獣の成長を促進する。神獣が持つ魔法や能力の威力や精度を高める。神獣が本来持っている潜在能力を引き出す。神獣の傷や疲労の回復を早める。
と、こんな感じに、全て私の魔力を使ってやるらしいんだ。というか、始めからよく分からないけどね。魔力の質ってなんだ?
「これであってる?」
『ああ、大体それであっている』
「魔力の質ってなに?」
『魔力の質とは、魔力そのものことだ。ただただ魔力の量が多いからといって、必ずしも強い魔法を使えるとは限らない。質が高くなれば、純粋で濃く、余分なものが少ない魔力になるため、良い魔法を使うことができる。例えば……』
レジナルドが前足を差し出すと、すぐに小さな炎が上がった。
『今の炎が、普通の人間が使う火魔法だとする。次に、魔力の質が高い人間が、同じ火魔法を使ったとするぞ?』
もう1度、前足を出すレジナルド。するとさっきの炎よりも、5倍は大きな火魔法が上がったんだ。
『どうだ? 同じ魔法でも質が違うだけで、これだけの差が出る』
え? 凄っ!? そんなに違うの!?
『だから、質を上げるのは、とても大切なことなのだ。しかし、これがなかなかできなくてな。我も質を上げるのに、どれだけ苦労したことか。だが、その大変なことを、お前は魔獣育成でやってやることができる』
おお、これはちゃんとセットで授かれて良かったな。
『そしてお前の神獣育成だが。これも魔獣育成と同じものだが。我が知っている、召喚のレベルが∞の人間の中で、この力を授かっていた者は1人しかいなかった。そしてそいつも、特別な召喚魔法で、神獣を召喚できる者だった』
「特別?」
『そもそも、普通の召喚では、神獣を召喚することはできん』
「え?」
『それこそ、召喚を極めた者や、かなり能力を高めた者が、神獣を召喚したと聞いたことはあるが、それは本当に、たまたまだったのだろう。普通の召喚では、神獣の力の方が高いため、召喚できんのだ。お前の周りに、召喚が使える者はいたか? そして、その者たちの中に、神獣を召喚し、契約した者はいるか?』
そういえば……。神獣を召喚したって話は聞いたことなかったな。それこそどこかで偶然出会って、心を通わせて、ようやく契約できたって話は聞いたことがあるけど。
そして、そういう人たちは首都に住んでいて、国に仕えている人たちが多かったはず。
それに、シルフェリオじゃないけど、神獣のことでは、いろいろと法律で決まっているもんね。その辺の難しいところは、勉強する前に殺されそうになったから、ほとんど分からないけど。
『しかし、お前はどうだ? 召喚を授からずに、神獣育成だけを授かったら? 契約できるか分からんのに、それどころか出会えるかさえ分からんのに、神獣育成を授かってもしょうがないだろう』
うん、それは確かに……。
『そしてお前は、まだ魔法の使い方を知らないのに、初めての召喚で神獣のルーファスを召喚し、契約までしたのだ。この神獣育成は、お前の特別な召喚に合わせて授かったとしか思えん』
『それから、鑑定で神獣育成が隠されていたのは、他にこの能力が知られれば、それこそ誰かのために、この力を使わされていた可能性があった。そのため、お前が他人に利用されないよう、完璧に隠されていたのだろう。だから我は、お前の能力は、全て繋がっていると言ったのだ』
なるほど。私の授かった力には、いろいろとあるみたいだね。それに、分かったことと、分からないままのことが、まだまだたくさんある。
ただ、レジナルドでも分からないことがたくさんあるし、それを私が知るとなると……。魔獣王のレジナルドが分からないんだよ? 私に分かるとは思えないんだよな。
うーん、でも。力を上げていけば、判明することもあるかもしれないし。ほら、私にしか分からないことがあるかもしれないから、こればかりは少しずつやっていくしかないかな。
それでも、レジナルドのおかげで、ここまで力について知ることができたんだから、ちゃんとお礼を言わなくちゃ。
「教えてくれて、ありがとございます!!」
『キキキキキッ!!』
『うむ』
「これから頑張って、魔法を練習しないと。ルーファスの能力を上げてあげたいし。でも、魔法の練習どうしよう。私、何も分からない」
『ああ、それならば安心しろ。我が魔法の使い方を教えてやる。それから、他の者たちも教えると言っていたからな。心配することはない』
「ほんと!? ありがとございます!!」
おおおっ!! まさか魔法の使い方を教えてもらえるなんて!!
『そうだな。これからちょっとやってみるか。魔法とはどういうものかだけ、教えてやろう。そして、簡単に魔法を放ってみると良い』
「えっ!? でも、私、本当に魔法分からない」
『大丈夫だ。全て私がやってやる。お前は魔法を放つ時、そのことだけ思い浮かべれば良いだけだ』
「本当?」
『ああ。では、早速やってみるぞ』
そうレジナルドに言われて、ちょっと不安ではあったものの、魔法をやってみることになった私。一応ルーファスとラウルには、私たちの後ろに下がってもらって、見ていてもらうことにしたよ。
『いいか。今からお前の中に魔力を溜める。そうすると、体の中が暖かくなるが、それがお前の魔力だ。それを、差し出した手の方へ我が動かし、その後外へと出すから、お前はその時に、魔法を思い浮かべる。どうだ? お前がやることは1つだ』
「うん!! これならだいじょぶそう!! でも、どんな魔法を思い浮かべるの?」
『そうだな。これはどうだ?』
レジナルドが向こうを向くと顔の前に、薪を燃やしている時に出るような火がボッと出て、すぐに消えたよ。ファイヤーって感じかな。
『どうだ? 言い忘れていたが、火だろうが水だろうが、どの属性の魔法を使おうが、使いたい魔法を思い浮かべるのは、とても大事なことだ。今見せた火魔法を、今日はしっかりと思い浮かべてみろ』
「分かった!!」
この世界では、魔法を使う時に詠唱しないんだ。だからレジナルドの言った通り、魔法を思い浮かべるのは、とても大切なんだと思う。
『よし、それでは始めるぞ』
両手を前に出す私。その後レジナルドが、私の肩に軽く手を置く。これで準備は終わり。すぐに私も胸あたりが、ポカポカと温かくなったよ。
『どうだ? 体の中が温かくなっただろう?』
「うん。これが私の魔力?」
『そうだ。慣れてしまえば、魔力のことなど意識せずに、魔法を使うことができるが、魔法を覚え始めのことは、こうして魔力を意識して、魔法を使うことが大切なのだ。これからの鍛錬は、この状態にすることを目標とするといい。やり方は後で教えてやる』
「はい!!」
『では、魔力を動かすぞ』
胸にあった温かいものが、どんどん手の方へ移動する。そして、全ての温かいものが移動すると。
『よし、今だ! 魔法を思い浮かべろ!!』
「フンッ!!」
私は、魔法のファイヤーのことを思い浮かべながら、手からそれが放たれことも思い浮かべる。それと共に、温かいものが手から出る感じがして……。と、その瞬間。
『何をやっているのですか!? 今すぐにやめなさい!!』
突然、セイリーの叫び声が聞こえて、びっくりして声のした方を振り向いた私。と、それと共に……。
ブワァァァァァァッ!!
「は? ふわぁぁぁぁぁぁ!?」
『キキキィィィー!?』
『のおぉぉぉぉぉ!?』




