両親
男の子は母親に、女の子は父親に似るという俗説がある。実際、私の母はクライドと似た顔立ちをしている。
「やっぱり自分に顔が似ていると可愛いのね」
そう口にしたのは、誰だっただろう。でも私たち一家を見た人がつい、そんなことを言ってしまうぐらい母はクライドを溺愛していた。いや、母だけじゃない。父も、祖父母も、そして私自身も。私たち一家は、クライドを中心に回っていた。
私とクライドの幼馴染みであるレオンは、そのことをよく知っている。だからなのか私の呟きを耳にすると一瞬、目を大きく見開き私が手にしている黒い手紙の方へと目を落とした。
震える指を必死に動かし、私は黒い封筒を開く。その中身にざっと目を通した私は、どくどくと心臓が早鐘のように動くのを感じていた。
「……一度、家に帰ってこいって」
手紙の内容を一言でまとめた私は、溜め息をぐっと飲み込む。
「パーティーのことについて、何か書いてあるのか?」
おそるおそる、私の顔色を窺いながら遠慮がちに尋ねるレオン。私はその問いに、沈黙をもって答えた。
実兄であるクライドを追放したのだから、両親から連絡が来ることは予測できたはずだ。だけど私の頭はそんな都合の悪い事実を、すこんと忘れていたらしい。胸の奥がぎゅっと縮み、手足から急に熱が奪われていくような感覚の中。レオンは静かに「どうする?」と問いかける。
「『方舟に曳かれて』のリーダーは俺だ。だから、パーティーの活動が忙しいからイヴを帰らせることはできない、って連絡しようか?」
レオンの提案に、私はしばらく考えるとゆっくり頭を振る。
「いい。遅かれ早かれ、いつかは話さなきゃいけないことだから。顔見せのつもりでちょっと、行ってくる」
そう口にした私は、上手く笑えていただろうか。わかっている、レオンを心配させないようにと取り繕ってみてもどうせレオンは私のことなんてお見通しだろう。だけど、それでも私はなんとか虚勢を張ろうとした。見せかけだけの張りぼてでも、せめてそうできるぐらいの余裕があるということをレオンに示したかった。
レオンはほんの少し私を哀れむような表情をしたが、すぐに顔を引き締め短く頷く。たった二人だけとはいえ、彼はパーティーのリーダーなのだ。その責務を全うしようとする意思の強さを目に宿し、柔らかな口調で私へと話しかける。
「ギルドにはしばらく休業申請を出しておく。だからこっちのことは心配しなくていいから」
レオンの言葉に私は「ありがとう」と、ぎこちなく微笑んでみせたのだった。




