26話:村に到着、ルークとプロトン
前回の簡単なあらすじ:女性陣はカオス。
投稿遅れて申し訳ありません。
後から後から改稿すると、どうしても時間が…
~プロトン視点~
さて、プトレティウスに乗って三時間、途中の村にいくつか立ち寄って、ついに魔獣が大量発生した場所からいちばん近い村に到着した。直接現地に向かっても良かったが、「道中の村に立ち寄りながら先に村に行って、これからシルフィ様達が来られることを伝えよう」というルークの提案にのって、村に寄りながら来たわけだ。確かにそのまま王女サマ達が来たら、混乱するわな。
プトレティウスは通常の馬と違い、ヒトの言葉がよく分かるのか、とにかく賢い馬だった。オレの指示したことはしっかり聞くし、どうしてほしいかを汲み取ってくれて、すくすくと育ってくれた。今では筋肉が通常の個体よりも発達し、黒い毛並みは艶がある、オレの自慢の相棒だ。現にコイツじゃなかったら、ここに着くまでに2倍の時間がかかっただろう。
その村に着くと、村から数人の男が駆け寄ってきた。
「失礼。プロトン・ノークレッド様でお間違いないでしょうか。」
その中の一人から、そう尋ねられた。
「ああ、違いない。」
「現在村の周辺にて、魔獣が大量発生しています。このような危険な村へ、本日はいったいどのようなご用件で…」
そう言ってその男がオレの同乗者、つまりルークの方を向くと、その男は目を見張った。
「ルーク!?」
「お久しぶりです皆さん。魔獣の件で、ジョン殿に加勢しに来ました。その報告をしたいのですが。」
「わ、わかった! じゃない、えっと、わかりました?」
「別に良いですよ、いつも通りで。プロトンはあまり気にしない男なので。」
「わ、わかった。…中に入ってください。」
そう言って男は、目線をオレに移して、先を促してくれた。
「ルーク、お前ここに来たことがあるのか?」
「何度かね。ここはグリメイル家の傘下で、レオン様とのつながりで懇意にさせてもらっているんだ。」
「ああ、そういやお前、レオン様のお気に入りだもんなぁ。」
レオン様は、ここエアリス王国の五大公爵家のひとつ、グリメイル家の現当主で、五大公爵家の現当主様の中で二番目にお若く、30前半で、ご子息・ご息女もまだ幼い。
この国では、伯爵以上の家が領地を治めており、子爵以下の家は、その広大な領地を分割するかたちで治めている。ルークの実家であるゼネル家は、形式上はシルエイティ家の管轄となっているが、『器用貧乏な何でも屋』の側面もあり、国内のさまざまな場所で仕事をしている。レオン様とのつながりも、そこからだろう。
そこでふと、気になっていたことを聞いてみる。
「そういやお前、関わりのない貴族っているのか?」
「とりあえず、伯爵以上の家とは、あんまり関わりはないかなあ。子爵以下なら、全員と関わりはあったし、家族構成も覚えてるよ?」
「……どうりでお前の友好範囲、めちゃくちゃ広いわけだ。」
それを知ったのはコイツと同じクラスになってからだが、コイツは学生時代、子爵以下の家や平民の出身のヤツから慕われていた節があった。現にコイツは、よく勉強会に呼ばれてはいろいろ教えていたり、自主トレに呼ばれては相手をしたり、それはもう忙しなく動いていた。だからまあ知り合いは多いとは思っていたが、これほどとは…
もうひとつ、気になっていたことがある。
この国の貴族は、当然ながら子爵・男爵の割合が多い。彼ら全員と関わりがあるだけでも大きなアドバンテージだというのに、その多くからの覚えも良い。子爵・男爵の中にも有力貴族はいる。ここまでしなくても、コイツの評判は高い。伯爵以上の家に反論させない、コイツの実力を見せるためというのは分かる。しかし、ーーなぜルークにここまでさせる?別に『翠の風』を舐めてるわけではないが、騎士団の討伐部隊を組んで、そこに同行すれば良いだけではないのか。なにかこの任務、他の意図でもあるんじゃーー
「どうしたのプロトン?」
「っ!!」
気づくと考え込んでしまっていた。昔からの悪い癖だな、すぐ自分の世界に入り込んじまう。
「悪い、なんでもない。」
気を取り直して挨拶だ。ここの領主がどんな御仁かーー
「ルークさま!」
ーー応接間に行くと、ルークに突然ひとりの少女が飛び付いた。その場にはこの少女と、ひとりのご老人がいるだけだ。そのご老人が男爵家の当主で、この少女は孫かなにかだr
「こら、ダメだよコニーちゃん。当主なんだから、もう少し落ち着きを覚えるんじゃなかったの?」
「えへへー、ごめんなさい♪」
「!?」
マジか、マジなのか。隣にいるご老人じゃないのか。そう思っていると、そのご老人が一歩前に進んで一礼した。
「申し遅れました。わたくし、ナブロ家先々代当主、ジョン・ナブロと申します。現在は現当主、コニー・ナブロの後見人兼当主代理をしております。」
なるほど、先々代の当主だったのか。それなら納得、って、
「ん?先々代?先代の方はどちらに?」
「三年前、妻共々亡くなりました。」
「!? 申し訳ない、不躾だった。」
「いえいえ、気になるのは仕方ないこと。」
「塞ぎ込んでたコニーちゃんを見かねたレオン様に紹介されて、遊び相手になっていたのが交流の始まりだよ。」
オレの失言に、ジョン殿とルークがフォローを入れてくれる。こういうとき、ルークは凄いなと、改めて思う。すぐにフォローしてくれて、学生時代からとても助かっている。
「さて。そろそろ本題に入りましょうか。」
ルークの声かけで、オレたちは向かい合って座る。ルークの前にコニー嬢、オレの前にジョン殿、というかたちだ。
「今回の魔獣の大量発生に伴い、陛下からの命により、私と翠の風、ルル・エメラル嬢、シルフィ王女、そしてこのプロトン殿他数名が、魔獣の討伐と、近隣の村々への激励に来ることとなりました。予定では、本日の夕方頃にシルフィ王女たちが来られるので、その報告に来ました。」
「なるほど、そうでしたか。申し訳ありません、わたくしどもが不甲斐ないばかりに、皆様にご迷惑をお掛けしてしまい。」
「ごめんなさい…」
ルークからの説明が終わると、二人がとても申し訳ないといった具合に頭を下げてきた。この二人に非はないというのに…
「よしてくれ、二人に何も非はない。今回は本当に突然であったと聞いている。それに対処するのは、我々でも難しいものだ。」
「そうですよ。それにここ周辺の村は男手も少ないんですから、むしろ変に刺激したりしないでくれて、助かっているくらいですよ。」
オレとルークの言葉に、二人ともホッと息をつく。それにしても、“突然魔獣が現れた”、か。そんなこと、今までなかったはずなんだが…
「ルーク、何か分かっていることはないのか?」
「それがさっぱり。しかもあのネネですらわからないみたいでね、困ったよ。」
そう、正直この点が一番の問題点だったりする。ネネはこの国で一番の情報収集能力を持っている。そのネネが把握しきっていないという事態は、かなり珍しいケースだ。
「まあ、それもあって、今回プロトンに仕事が回ってきたんだろうけどね。」
「そうだな。きっちりと理由解明に努めるさ。」
「頼んだよ。…二人はとりあえず、村の人に王女様たちが来ることを伝えてください。私とプロトンは、ひとまず様子を見てきます。」
「わかりました。」
「ルークさま、プロトンさま、きをつけてねっ。」
こうしてオレとルークは、魔獣が大量発生した現場に向かうことになった。
読んでくださり、ありがとうございました。
捕捉:この国の領地の治め方をざっくりイメージすると、
伯爵以上は知事、
子爵以下は市長、もしくは町長
と覚えていただけるとありがたいです。




